王様ランキングというアニメを知っているだろうか。

 

今時珍しい絵本のような絵柄の超王道ファンタジー漫画である。特にアニメのクオリティがとんでもないためぜひ見てほしい。

OPEDが良いのはもちろん、原作の雰囲気を壊さないリッチな背景、戦闘描写、音楽、どれもレベルが高い。

 

内容も最高だ。人よりも圧倒的に劣っている主人公が王を目指すという、よくある逆転ストーリなのだが、一人ひとりのキャラクターがあまりにも人間臭くて、序盤から号泣しっぱなしだった。特に、この作品は人間の強くて素晴らしいところと、弱くてどうしようもないところを両方描くのが非常にうまい。

 

ボッチという一人のキャラクターを取っても、なんとしても王になりたいという力強い信念があるにもかかわらず、誰かに自分の話を聞いてほしい。友達のような存在がほしい、と思っている当たり前の弱さが、見ている人にとっては共感を生むし応援したくなる。人前では堂々としていて、まるで裸の王様のような愚かさを感じるくらいだが、家では馬鹿にされたのが悔しくて泣いているとか……その弱さにどこか見覚えがあって、見ていると胸に来る。

 

二話のカゲのエピソードなんて、シンプルなのに本当に人間の描き方の奥深さを感じた。人間という種族の愚かさ、母親を失っても何とか生き抜こうとするカゲの強さ、相手が盗賊でもそこに愛情のような何かを感じてしまう弱さ……。でも、生きているとその弱さが分かる時があるからこそ、泣けるのだろう。登場人物がただ理想を掲げて頑張るだけでなく、きちんとした弱さを持っているからこそ、子供はもちろん大人でも心に響くストーリーになっているのだ。

 

一見簡単そうに見えるが、これを描くのは本当に難しい。ストーリーとはほとんどがご都合主義で成り立っているし、読者もそれを望んでいる(完璧なリアリティを求めるのならノンフィクションを読めば良い)が、少しのリアリティを注ぐことで、より素晴らしいストーリーが生まれると自分は思っている。

 

王様ランキングはまさにそんな、スパイスとも言える少しのリアリティが、作品の説得力を確固たるものにしていると思う。

作者にはこれからもストーリーに携わる仕事をし続けてほしい。