小峰元/アルキメデスは手を汚さない(1973/2006)

 

 

 

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豊能高校二年、柴本美雪が死んだ。

中絶手術の最中に起きた 予期せぬ不幸が原因であった。

彼女は意識が朦朧とする中

 

「アルキメデス」

 

最期にそう ぽつりと呟いた。

 

・・・

 

 

美雪の父である柴本は釈然としなかった。怒っていた。

品行方正な娘がどこの馬の骨とも分からぬ男の子を妊娠し、

相手は誰だと詰問したところで

美雪はとうとう名前を吐かぬまま逝ってしまった。

 

うら若い愛娘を孕ませ、あげく死を招く結果になったというのに

相手の男は名乗りもせずのうのうと生きている

 

 

ただ美雪が最後まで男の名前を吐かなかった事から

一方的に犯されたわけではなく、

相手を庇い立てしているのだろうと考えた。

同じ高校に通う生徒を洗えばきっと・・

 

 

・・・

 

 

柴本は工務店を経営していたが、決して清廉とは言えず

なかなか強引に業績を伸ばしてきた。

先日のマンション建設の際には、近隣住民の反対運動をやくざなやり口で押しきり

多くの恨みを買っていた。

 

その関係者の中に、美雪のクラスメートの「内藤」という男子生徒がいた。

マンション建設のせいで日が遮られ精神を病んだ彼の祖母は死んだという。

おまけに内藤は美雪に好意を抱いていたというらしい

動機は十分だ。

相手は「ヤツ」なのだと、柴本は思った。

 

 

・・・

 

 

証拠をみつけてヤツを謝らせてやる。 美雪の仇を・・

そう躍起になる柴本であったが

美雪の在籍していた豊能高校を舞台に

次々と事件が巻き起こっていく。

 

 

毒入り弁当に、行方不明事件・・

誰が、なぜ、起こしたのか。美雪の妊娠との関連性は?

そして彼女が最後に遺した「アルキメデス」とは

一体何を指しているのだろうか――

 

 

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自意識が剥きだしで "正義"にこだわりそれを軸に同調する。

 

時代は違えど「高校生」って、こうなのかな。と、

わたしもこうだったっけ?

もっと適当だったような気もするけど。。

 

 

 

大人でもなく子供でもなく

どちらにも属さないほんの数年。特別な時代。

そういう認識はあったかもしれません。

 

この性質が引き金となって今回いろいろな事件が起こり

繋がって行く訳ですけれども

 

 

中盤までは物語が散り散りになって

ナゾを坦々と拾っていくばかりです。

 

(たぶん、この人がホシだろう)

 

 

と思いつつ

でもなぜ? いつ? という疑問が途切れないので

最後まで飽きずに読み進められます。

 

 

肝心の「アルキメデス」についてなのですが、

最後の方にちょろっと出てくるだけでした。

しかしアルキメデスに始まり、アルキメデスに終わる物語

 

アルキメデスが出てこなければ

美雪が妊娠することも、誰かが死ぬことも

なかったのですから。

 

この中に出てくる多くの登場人物がアルキメデスであり

また わたし達も時にアルキメデスである。

 

 

"アルキメデス"連呼に 何言ってんだこいつ?

と思われても仕方ないですが

読めばきっと分かってもらえる!

 

はずです。。

 

 

 

 

「君たちの手に余る、だって? 冗談じゃないよ、もっと自信を持てよ。

いいかい、今の日本で、知能指数の一番高いのは

われわれ高校二年生なんだぜ。(略)

君達に不足しているのは、経験に基づく生活の悪知恵と、世間的な信用だけだ」

講談社文庫 小峰元/アルキメデスは手を汚さない(2011) p.366-367より一部抜粋

 

 

 

 

 

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