運命じゃない人(2005)

 

 

監督:内田けんじ

 

出演:

中村靖日

霧島れいか

山中聡

 

・・・

 

おもしろい、おもしろい 映画でした。

 

 

主な登場人物:

 

いい人過ぎるサラリーマン宮田

失恋し自暴自棄になっている真紀

探偵事務所を営む親友の神田

突如姿を消した 宮田の元恋人あゆみ

やくざの組長 浅井

 

ある一晩の物語を、宮田、神田、浅井

それぞれの視点から描いた作品です。

 

 

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暗い面持ちでレストランに座っている桑田真紀。

婚約者に裏切られ、ひとりで生きていかなければならない現実に打ちひしがれている

周りの人たちはみな楽しそうに語らい、食事をとっていた。

 

自分の幸せを他人に託すから こうなったんだ

もう誰も頼らない 誰も信じない―

 

 

ふいに、見知らぬ男がこちらをふりかえり言った。

「一人? よかったら一緒にごはん食べない?」

 

 

「いいんですか?!」

桑田真紀は、即答した。

 

 

・・・・・

 

 

宮田武は、親友の神田に「あゆみのことで話しがある」と呼び出され 

レストランでひとり彼を待っていた。

 

 

誘っておいて遅れてやってきた神田に謝罪の色はない。

宮田は少しイラつきながら、話は何かと訊ねると

 

「あゆみちゃん結婚するらしい」と、神田はそっけなく口にする。

いまだにあゆみのことを引きずっている宮田は

過去を断ち切れるよう、彼に女の子をあてがわれても

ことごとく後ろ向きで不意にしてきた

 

 

「よし、ナンパ行こう」

神田の突然の誘いに、大学生じゃあるまいしと嫌がる宮田。

 

「オマエは人生に期待している」

「30をすぎたらもう運命の出会いとか自然な出会いとか、一切ないから」

「危機感を持ちなさいよ」

 

辛辣な言葉浴びせられながらも

ナンパなんて恥ずかしい、才能も技術もない・・と煮え切らない様子。

 

 

神田は、人と出会うのに技術なんているかよ と吐き捨てると

「一人? よかったら一緒にごはん食べない?」

ちょうどレストランに居合わせたひとり客の桑田真紀に声をかけ、

3人でテーブルを囲むことに。

 

しかし自己紹介を済ませ、 神田は早々にトイレへと席をはずしてしまう。

 

 

残された2人。

気まずい空気の中、何 食べましょう とメニューを見ていると

突如泣き出す真紀。

 

 

困った宮田は、なかなかもどって来ない神田を呼びにトイレへ行くが

彼の姿はそこになかった。

電話をかけるとどうやら仕事にもどったらしい。

 

 

「仕事に行ったみたいです」

 

「ごめんなさいね

あいつがあなたに声をかけたのは、僕のためだったんです

最近、いや最近って言っても半年くらい前なんですけど、失恋しまして

でまあ、多少きついなってことで、落ち込んでたもんで

女の子と話でもすればちょっとは元気出るんじゃないかって・・」

 

 

微妙な雰囲気のまま二人は店をでる。

 

家はどちらですかと訊ねる宮田に、家はありませんと答える真紀

「メンソールの吸殻見つけたんです 口紅がついてるやつ 

彼の車の灰皿じゃなくて、助手席のドアとイス間のところに落ちてて」

 

婚約者が浮気しているのを知り、

一人行く当てもなく飛び出してきた桑田真紀だった。

 

 

"いい人過ぎる"宮田は、そんな真紀を心配し

甘いものでも食べようと再びレストランへ誘い

自宅に空いている部屋があるからと

会って間もない彼女を家に招待するのだが、

そこに"元恋人"のあゆみが現れて。。

 

 

 

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邦画のヒューマンドラマや恋愛映画って

なんとなくもっさりしていて(いい意味で)叙情的な描写が主であり

物語は静かにのんびり観られる作品が多いように、

個人的にはそう思うのですが

(単に観た作品がそうだっただけなのかもしれないけど)

 

 

本作は淡々と話が進んでいくのに、前のめりになって観てしまう。

まず宮田視点で物語がある一定のところまで進み、

そこの裏で繰り広げられていた話や思惑が「神田篇」「浅井篇」で明らかになり

あのときのあのシーンは、こういうことだったのか!と

パズルが埋まっていくようにエンディングを迎えるのです。

 

約1時間半ある上映時間はあっという間で

まるでショートムービーを観ているかのような軽快さ。

途中緊張がほとばしるシーンもあるのですが、音楽の使い方も絶妙で

思わずふふっと笑ってしまいます。

 

 

またそれぞれのキャラクターが本当に魅力的で、おもしろい

生臭いところもあるんだけれど、それがチャーミング。

 

 

とくに作中では飄々として軽薄な印象だった"親友の神田"ですが、

煩悩まみれなような、悟りを開いているような不思議な人物で

レストランでの、宮田へのお説教は 胸に刺さりました。

 

「タイミングなんてないよ お前が作るんだよタイミングを」

 

 

・・・

はたして宮田は"タイミング"をつくることができるのか

真紀とのロマンスはハッピーエンドかバッドエンドか

そのどちらでもないのか。。

スタッフロールの最後まで観てほしい。

「運命じゃない人」というタイトルも素晴らしいです。

 

 

 

きゅんとして、ドキドキして、笑える

おすすめの一本です。

 

 

 

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