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「海と彼」
うみとかれ


母の生家の目の前が海なので海には必然的に行っていた


海に向かって

「バカヤロー」

と叫ぶと必ず波が大きくなって返ってきた


海が

「バカにするな」

と怒っている証拠だ

そんな悪戯をしながら幼い私は壮大な海がこわかった

昔つきあってた彼と日本海にキャンプに行った時

陸からだいぶ離れた所でボートがひっくり返っていて男女3人が溺れていた


彼は軍関係で体を鍛えていたので、何事もなかったかの様にボートとその3人を助けた


お礼を言う言葉を背に受けて彼はちょっと照れながら右手をあげた


その瞬間だけ海が好きになった


海と彼が一つになった




帰り道、彼が右足を引きずっていたので見てみると


足の裏に貝殻とウニのとげがいっぱい刺さっていて血だらけになっていた


助けに行く途中にふんだらしい



めちゃくちゃ痛いはずなのに究極にストイックな彼はいつもどおり無言のまま帰路についた



その彼とはもう何年も会っていない

今でも海で真っ黒に焼けてるかな



会いたくなったら海に行こう