牛田智大
ピアノリサイタル




聴いて参りました。


シューベルト
シューマン
ブラームスソナタを取り上げた
ドイツの作品によるプログラムは
曲目を見ただけでも
結構な重厚感


こういったプログラムを
地方のコンサートでは
なかなか聴くことが出来ないため、
楽しみにしていました。



ショパンコンクールの時も
牛くんのピアノ好き!
という方がたくさんいらした
大人気ピアニスト
興味深いプログラム。



それを
600席という小さなホールで
聴くことが出来るという
とっても贅沢なリサイタル。


もちろんほぼ満席。



楽しみでしか
ありませんよね。





今でも
お若いですが、
更にさらにお若いというか、
デビューして数年の頃
まだお子様の頃の演奏を
1度聞いたことがあります。



YouTubeでの
ショパンコンクールの配信。
私も夜な夜な聴いておりました。

牛田さんの
正統派な音楽
私もとても好印象を持っていました。


この日も
どこまでも音楽に誠実な演奏。




シューベルト
アレグレットハ短調から
始まるプログラム。

当初、こちらは
プログラムに入れていなかったそうです。

ソナタから始まるプログラムですと、
遅れて到着した方が
まるまる1曲聴けなくなるからとの配慮
と、
どなたかのSNSの投稿で知り、
なるほどと思いました。

クラシックのコンサートは、
曲の間しか出入りできません。

出来ないというか、
それがマナーです。


1曲目に
長い曲を持ってきては、
5分遅れた方も
開始から30分位
聴けなくなってしまうこともあります。

優しい気遣いですね。




アレグレット以外の
ソナタ3曲は、
作曲家の若い時代の作品
並べたプログラムなのに、
アレグレットだけは晩年の作品。

そこからスタートするなんて、
面白いプログラムですね。




3曲のソナタは
シューベルト 13番 イ長調
シューマン   1番  嬰ヘ短調
ブラームス   3番  ヘ短調


このシューベルトの13番
可愛らしくて穏やかで
心地よい曲という演奏もが
多いように思います。

私もこの曲を弾いた時は
川沿いをお散歩していて、
緑がキレイとか、
川の流れや鳥の声が
聞こえてきそうな
穏やかで平和な場面を
イメージしていました。


牛田さんの演奏は、
極々小さな音から演奏がスタート。

曲全体に渡って
それは続きました。

極々小さな音を出すには
本当に繊細なタッチ
集中力が必要です。


この日の
シューベルト、シューマンは
ここまでやるのかというくらい、
コントロールされた
小さな響きに包まれていました。


まるで、
心のひだをめくってめくって。
めくってめくって、、
やっと見つけた小さな喜びを
感じているような
音に聴こえました。


温かな柔らかい音であっても
開放的な感情ではなく、
どこか制限のある中で
味わうとか噛み締めるという表現。

私にはそう感じました。


まるで
震災の時、
小さなロウソクの炎に
温もりや温かさ、希望のようなものを
感じていたような感覚。


パンドラの箱ではありませんが、
1つ1つ開けていって
やっと辿り着いた小さな光、希望。


牛田さんは、
どこまでも優しい音を出されているのですが、
それが音量によるもなのか。
何なのか。
私には完全に
喜びに浸れない感覚で聴いていました。


寂しさや、悲しさも
私はこんなに悲しみを感じています
という表現ではなく、
耐えているというか
抑制した感情。

前半が終わり、
お隣に座っていらしたピアノの先生と
ここまでやるんだ…
怖くて出来ないという話をしました。

弱音のコントロールは、
本当に難しいのです。
それを、曲の全体に渡って
コントロールし尽くすこと。
まして、
ホールという広さがある場で
離れた相手も伝わる弱音。

考えただけでも怖いです。



もう1人の先生とも
これ練習してたら病む…と。


ピアノに携わる者として
聴き手であっても
弾き手の側に立って
いろいろ感じてしまいますね。


感情が無いわけではなく、
自分の奥底にある
深い深い感情やエネルギーを感じ取り
自分と向き合い続け、
感情を爆発させるわけではなく、
自分の内の
言葉にならない想いを
やっと音にしている。

そんな感じに聴こえてきて、
聴いていて辛くなるような
迫る演奏でした。


後半のブラームスは、
逆に爆発させるものがあったり、
やはり内なる幸せを噛み締めたり。


なんというプログラム。
なんという演奏なんだろう。


そう思っていたら、
アンコール前のお話で
謎が解けました。


この日の演奏会は3月12日。
前日の3月11日は 
福島でのリサイタルだったそう。


そうです。
3.11  東日本大震災の日。



牛田さんは
福島県いわき市のご出身。




毎年、
この時期にある演奏会は
やはり特別な想いで
弾かせていただいています。

ありふれた日常や、
小さな幸福が
ある日突然、
欠如することがある。

3曲に共通するのは
運命への抵抗と受容。

そのようなお話をされました。


何故、
あんなにやっと見つけた喜び
みたいな表現をされるのか。

苦悩と隣合わせの
小さな幸福。

私たちのあの時を
表現してくださっていたのだと
感じました。



文字通り
声にならない心の叫び
皆が抱え、
同時に普段感じられなかった
ロウソクの炎の温かさ
人の優しさなど、
突然、
欠落したからこそ感じられた
小さな小さな幸福。


あの時は
皆が平気なフリをしていました。
そうしないと、
自分で居られなかったのだと思います。


一見、
平気なフリをしているけれど、
心のひだの奥底にあった感情
牛田さんは
表現されていたのですね。



たくさん若手の人気ピアニストがいます。

素晴らしい才能に
驚かされますね。

皆さん、個性的で
私も好きなピアニストがたくさんいます。


牛田さんのピアノは、
その中でもクラシックの王道と言いますか、
本当に正統派のピアノで、
作品と作曲家の想いを
掘り下げていらっしゃる方
という印象が私にはあります。


コンサートの中のお話では、
丁度、前日に
野球のWBCで
岩手県陸前高田市出身

佐々木朗希さんが
先発した試合があり、

ああいう方が投げることで
人の希望になることができている。

と言ったようなお話もされていました。

(佐々木朗希選手は、
津波でお父様と実家を
亡くされていらっしゃいます)



そして
この日の調律師さんは、
岩手出身の佐々木さんとの
お話もお聞かせくださいました。




最も信頼している
調律師さんとのことで、
そんな素晴らしい技術者が
岩手出身だなんて
嬉しくなりますね。



3月12日
という特別な日に
素晴らしい調律師さんにより
調整されたピアノで
特別な想いのこもった
演奏を聴かせて頂くことが出来ました。

ありがとうございました。





 










 YouTube










HP








 🎼..•*¨盛岡市のピアノ教室¨*•.¸¸🎶
     レッスンのお問い合わせは
     こちらからお気軽にどうぞ
              ↓         ↓         ↓