君は俺に憑き合っている #7-1 | 春慈穏-ハルジオン-

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基本的にアニメに関心のない人やマンガを読んだことのない人にでも楽しんでいってもらえる自信はなし!!
けど、マンガ紹介とかしてるから見ていってね~


「お願いします!」

 それは俺にとって、意外も何も考えすらしていなかったこと。
 この上なく普通ではないけど俺なりの普通を送ってきたこの人生に、まさか女子高生幽霊で妹の友人の喜咲ちゃんに土下座をされお願いをされるとは。
 しかも俺の部屋で。

「いや、だから。な、なんで俺なの」
「……それは言えません」
「やめて!? その長すぎる間」
「ま、いいじゃないですか? ね?」
「いや、ね? じゃないからね。そんな単純明快な問題じゃないからね?」
「…ち」
「あ、今舌打ちした!」

 俺が何故か床に正座して、喜咲ちゃんが俺のベッドの上で土下座をしたと思ったらくつろいでいるっていう謎構成。
 しかも、袴影ちゃんに紗愛が来てるし。
 てか、紗愛って幽霊とかそんな類見えなかったんじゃなかったっけ?
 確か、あの時もそうだったはずなんだけど。

「私は賛成だよ! 喜咲ちゃんがそばに居てくれてら楽しいし」
「そう言えば、リマはなんかこう俺にお願いとかせずにいつの間にかって感じだよな? なんか、憑りつくって感じ」
「確かに。言われてみれば、ずっとリョウマのそばに居たよね」

 ふとしたそんな当たり前な疑問が今になって俺の頭の中に現れる。
 そんな問いに袴影ちゃんが答えてくれるのかと、当然思っていたのだが…。

「あー、それはね」
「え? 紗愛?」
「あ、どうも。紗愛です」

 クラスメイトで俺の通っている学校の生徒会長の観月紗愛。
 彼女は霊感なんて何一つなく、あの時だって死んだ喜咲ちゃんの事が見えていなかったしリマの事も当然見えていなかったはずだ。
 それなのに、そんな紗愛が知っている? 何を?
 俺は、ただただ疑問しか抱けないでいた。
 
「そんな紗愛が教えてあげちゃいましょう」

 俺のベッドの上に喜咲ちゃんと同じく当然のように座って堂々と熱弁を始める紗愛。

「そこに居る莉舞さんはと涼真ちんは、互いに想いあい強い気持ちで結ばれていた! だから、今回みたいな面倒くさい一つの儀式はいらないんだよ」

 そのなだらか過ぎる滑舌に聞き取りやすい声色。
 それらは明らかに俺の知っている紗愛なんだけど、今目の前に居る紗愛は少なくとも俺の知っている紗愛じゃない。
 紗愛じゃない紗愛。
 それに、自然に流しそうになったが目の前に居る紗愛はどうやらリマや喜咲ちゃんの事が見えているらしい。
 もう、その時点でおかしいだろ。

「そ、そうか。想い合ってな」

 あまりにもこの短時間での情報量の多さに曖昧な返事しかできないでいる自分がとても惨めだと実感してしまう。
 しかし、そんな俺の思いとは裏腹に紗愛の言葉を聞いてリマの奴が喜ばない訳がないわけでテンション爆あげよろしく状態もいい所といいたい気分だ。

「ねぇねぇ! 聞いた? 私とリョウマってやっぱり、ほらー!」
「あぁ、そんなことはわかってるんだ」
「あら、クール」
「はいはい」

 こんなテンションのリマを見るのはいつ以来かと少し考えてみると、昨日の夕飯がビーフストロガノフだったことに対して今と同じくらいのテンションだったことを思いだし、俺の気持ちはみるみると複雑怪奇に変化していく。
 それにしても、ビーフストロガノフと同等って、どんな立ち位置なんだ。

「なに? 涼真ちんは莉舞さんみたく喜ばないの?」
「喜びたい。けど、今は状況が状況だ」
「ま、それもそうか。なにせ、女子高生を専属奴隷にしようって言うんだからね」
「変な言いぐさはヤメロ。……な? テメェ、誰だ?」
「わおっ、いきなりどうしたんだい?」
「紗愛はそんなおどけた喋り方はしないし、そこまで気な性格のやつじゃない」

 俺の言葉を聞いて今まで黙っていた袴影ちゃんや真清、それにテンション爆あげよろしくしていたリマでさえ、やっと目の前に居る『紗愛』と言う存在に違和感を持ち始めたらしい。

「そういえば、私の知っている紗愛先輩はもっとこう、腹黒くて計算高いお淑やかな、悔しいが大和撫子って感じの人だったきがする」
「確かに私も、なんかイメージと違う」
「あー、確かに。てか、そもそも私や喜咲ちゃんの事が見えている時点でおかしいよね」
「…そう。まずそもそもだ。そこなんだよ」

 俺達の追及に紗愛は諦めたのか、一度喜咲ちゃんを見て苦笑いしながら言った。

「仕方ないね。…私はそこにいる安井真清と同族の存在。芳野紗愛だよ」
「同族? 人間だろ?」
「まぁ、彼女の場合はそれはそれで正解なんだけどね」
「……」

 紗愛の言葉に真清は驚きと焦りの表情を見せる。

「しょうがないなー。私が説明してあげよう」
「やめっ」

 真清が叫んだのも惜しく、紗愛の言葉は俺たち全員の耳に届けられてしまう。

「私とそこにいる安井真清はね、いわゆる神様って存在なんだよ」

 大胆不敵に笑いながらもその嘘偽りのない紗愛の表情は、袴影ちゃん、リマ、俺の三人を激しく動揺させるには簡単にも程があるほどの情報だった。
 けど、俺はそんなバカげたことが信じられなくて真清の方へ視線を向けると、そこにはただ黙って下にうつむいている真清の姿だけが目に焼き付いて残っていた。