「そういえば、リマお姉ちゃん」
私がキャラにもなく贅沢だなーっと大人ぶっていると真清ちゃんが何かを思い出したのか、話しかけてきた。
「ん? どうしたの」
「今日、ケーキがあるって言ってたから食べる?」
「うん! あ、でもあとでね」
「わかった」
涼真のお母さんが買ってきてくれたのかな。
冷蔵庫にケーキがあるらしい。
「えー、私もたべたいー」
「喜咲。今日はもうお昼に食べたでしょ」
「あれだけじゃ、私の糖分吸収親方は許しちゃくれないよ」
「なに、その親方」
「うっわー」
真清ちゃんと喜咲ちゃんが面白い会話をしていると、スマホを見ていた袴影ちゃんが急に叫びだした。
「ど、どうしたの? 急に」
「いやさ、真清は関係ないんだけど、喜咲、大丈夫?」
「え? なにが」
「コレ」
袴影ちゃんがスマホ画面を見せてくれた。
すると、そこには『【速報】検見ヶ谷線人身事故発生。被害人数は過去最大、死亡者も』と書かれた見出しがみれた。
たしか、検見ヶ谷線(けみがやせん)って、喜咲ちゃんの使ってる電車じゃなかったっけ?
「うそー。私、モロ影響受けるじゃん」
袴影ちゃんのスマホ画面を見て、喜咲ちゃんはあからさまにテンションが下がった。
「ま、喜咲。ケーキ食べてく?」
「…え? いいの」
「いいって。遠慮するなよ」
「はは~、真清さま~」
真清ちゃんのたった一言でその場が少し和んだ。
「じゃ、私ケーキ取ってくる」
そのまま真清ちゃんはケーキを取りに下へ。
「あー、電車が止まったのは最悪だけど、ケーキが食べれるならいっかなー」
「相変わらずだな。その性格」
「もしかして、喜咲ちゃんっていつもこんな感じなの?」
「そうなんすよ。こいつは」
「ちょっ、いつもじゃないでしょ。大体は、でしょ」
「そんな変わんないだろ」
「かわるよ! 劇的ビフォーアフターなみに変わるよ」
その必死な訴えはどうなんだろうか、喜咲ちゃん。
「でも、匠の姿が見当たらないけど? まさか、自分のことを自分で改造とかサイコパスなことしてない?」
「…しないよ! てか、例えだから」
「え? たとえだったの」
「ちょっ、リマ姉まで」
「これで、2対1だな」
「いつのまに、そんな構図が!?」
喜咲ちゃんと袴影ちゃんとこうやって話していると本当に生きているような感じがする。
そんな、幸せな思いは、廊下を駆け足でくる焦り合混じったようなそんな足音でかき消された。
「喜咲!」
「…え? そんな焦ってどうしたの? てか、ケーキは」
真清ちゃんが、顔を青ざめながら喜咲ちゃんの質問に答えずに近づく。
そして、そのまま喜咲ちゃんに手を伸ばして、喜咲ちゃんに触れ……。
「……あ」
「え? な、なにコレ」
「おい、真清。ちょっ、まって」
「真清ちゃん。もしかして」
喜咲ちゃんに触れようとしたその真清ちゃんの手は、綺麗に喜咲ちゃんの体を抜けた。
特に、喜咲ちゃんからは血も出ることなく。
その状況を見て、喜咲ちゃんも顔を一気に青ざめ、私と袴影ちゃんはそれを見て予想ができてしまい驚愕して焦る。
「今、下で涼真兄にあわてて言われて」
「でも、ずっと一緒に」
「え? なに、ねぇ!? ドッキリ? マジック? ねぇ、ねぇ!」
一気に緊迫する。
真清ちゃんは確信して現実を受け入れ始め、袴影ちゃんはその現実を否定しようと、そして喜咲ちゃんはただ恐怖を感じているせいか声を震わせながら叫んでいた。
そんな時、袴影ちゃんのスマホが落ちて、気付かないうちに触っていたのかさっきとは違うニュース画面が私の目に映ってしまった。
「ね、ねぇ。袴影ちゃん」
「なんすか? 今は」
「スマホ」
「スマホが如何したんすか!? なんでそんな」
「いいから、スマホを見て!」
私は、つい年下の袴影ちゃんに甲高くヒステリックに叫んでしまう。
そんなヒステリックに叫んだ私の意思が伝わったのか、その場が一気に静かになり袴影ちゃんがスマホを拾って画面を見る。
「……」
袴影ちゃんは、画面を見ると黙ったまま真清ちゃんと喜咲ちゃんにも見せる。
「……」
「……なんで。ねぇ。……なんで、そこに私の名前が書い、てるの」
スマホ画面を見て、真清ちゃんは黙り、喜咲ちゃんはただただ訴え続ける。
そんな袴影ちゃんのスマホ画面には『検見ヶ谷線人身事故。被害者の中に…』と見出し書いてあって、一番最初に『九重喜咲(16) 死亡』と、喜咲ちゃんの名前が書いてあった。