バンクーバーから東に向かった先に、モーションデニス・スタジオという謎めいた店があった。
そこは60年代のイタリアンなバイクが二台、扉付近にあって、まるで口を開けてご案内をしているようだった。
硝子張りのディスプレイは、多種多様な服や小物が見栄えよく飾られ、ハリウッドのセット顔負けである。
ミシェルはオープンの看板のチェーンを引っ張ってモジモジと店内を窺った。
金髪に碧眼、眼鏡は黒縁で、化粧っ気がなく、顔にめりはりがなかった。
今年の十二月で十九になるが、何かそう、じみでおばさんくさかった。
ピンクのワンピースは暗めで丈が長いし、靴のかかとはすり切れていた。
ミシェルは軽く深呼吸をして、扉を開けた。
「どなかたいらっしゃいますでしょうか」
間抜けは問いかけである。
彼女はやおら顔を上げ、赤面した。
店内は誰もいなかったのである。
奥まった場所にあるレコードプレイヤーが、しゃ――と音を立て、半拍置いてブルドッグが一声吠えた。
小型なのだが、ミシェルは怯え、踵を返した。
「やぁ悪かったね、君だろ電話をくれた、久しぶりのお客なもんでね、ようこそ当店へ、貴方の人間変えます」
店主は奥からやってきて、ハットをレジカウンターに置いて、言った。
ミシェルはゆっくりと歩いていった。
「君、電話のときと少しイメージが違うね、ここに来る前に帰ろうとしてたでしょ、いやなら帰ればいい撲は何も困らない。眉唾だからね信じない人も多いんだ、人を見た目から性格まで変えるっていうのは大変なことだから、さあ、その後ろにある扉が待ってるよ」