幻獣の守人ep2 | 長編物語ブログ

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 うんざりするほど長い物語です。
 でも不思議と中毒性があるかもしれません。
 
 
<チームイミタン>
イラスト担当:t2 文章担当:イミタン

 塊があった。
 それは朱く濡れそぼり、ごぼりと泡が吹いていた。
 タイルを伝う液体を辿るとおかっぱ頭の女児が立っていた。
 橙色の着物は女児の純真さを表し、波の入った帯は時代を感じさせた。
 女児は無表情である。瞳孔が開いているのは何かの快感を表す。
 ゆっくりと振り返り、その塊が浮き彫りになった。
 それは人であったが、性別も年齢も判別できない。
 なぜなら、細切れにされていたからだ。
 女児は塊から葡萄の房でもつまむように人肉を喰らった。
 貪るように食すのが飽きたのか租借するようになると、少女の瞳は金色に明滅した。
「もう飽きたわ、ちょうどよい魂の質が格別なのがきよる」
 そう独白すると片手に持っていた。天狗の面を被った。
 女児は一瞬だけ考えた。
 この人である捕食物を便器の中に投げ入るべきかと、しかし塊を一瞥し歩き出した。
 カランコロン、少女の履く下駄の音が地下鉄のトイレに響いた。

 女は焦っていた。
 携帯電話を片手に、息は荒い。
 走るように歩く、ブラウンヘアにスパイラルカット、ときどき揺れ動く髪の合間から化粧映えした。綺麗な容姿が見え隠れした。
 リクルートスーツを着ているが、
 女が今、携帯電話で話している内容はとても社会人だとは思えない非常識さだった。
「まこちゃんどうなってんの! 鶴佐駅じゃなかったのわたし悪くないわよね、あやまりなさい、駅出てもいなかったから、一駅違いだと思ったの、やっぱり高校があるほうでしょう、秋口さん家の風子ちゃんに何かあったら、貴方殺すわよ」
 ハイヒールのかかとが折れた。
 女は唇を噛んで、駅のトイレに近くに設けてあるゴミ箱にそれを投げ入れた。
「ほらヒールが、まこっちゃんのせい焼き殺す」
 女は髪を掻き上げ引っ張ると、裸足になって歩き出して違和感を憶えた。
「まこっちゃん急いで私逃げ切れる保証ないから……」
 そういうと、トイレの入り口に顔を向けた。
 右の掌を少し広げる。
「守人か、ほぉ属性は強いが主は幻獣にはでおうてないのか」
「うるさい黙れ鬼子」
 女と女児は向かい合った。
 距離は五メートルといった所か、
 女は、女児の動きを窺いながら、意識を集中した。
「燃えてなくれ!」
 そう唱えると、女の掌は炎で蠢いた。
 炎は女児に向かって言った。
 ここに二合目が始まった。
 女児は軽く横にステップを踏んで炎を避ける。
 女は炎を放った瞬間に走っていた。
 できるだけ遠くへと、
「無駄じゃな」
 女児は軽くため息をついて人差し指を動かした。すると風船のようにそれは膨らみ、水膜が出来上がった。
「――なっ水属性で力場もなく」
 女は心の中で悲鳴をあげた、あまりにも次元が違いすぎる。
 右の掌、左の掌から炎を、それを女児に向かって、ボールのように投げつける。
 それは速度を増し向かってゆくが、女児が指を少し動かすだけで、消滅した。
 女は走った。
 駅の出口へと、階段を登ろうと足をかけると、
「そうはさせぬよ」
 女児の下駄が地を叩く、
 階段は土の壁で覆われた。
「こんなこと聞いてない、テンタクルじゃない」
 女はどうしようもなく土でふさがれた階段を叩いた。
「ではいくぞ、指と片足でよいわ」
 カラコロン、女児は指で円を描き、下駄を鳴らした。
 それらは逃げる女を追いかける。
 まるで隔壁が閉まるように土の壁が襲い、女の攻撃を水膜が阻んだ。
 気づくと女は袋小路に追い込まれていた。
「昔からさ私って逆境に強いの、妹はこんな駄目人間残して死んじゃうしね」
 そう独白すると、瞳を閉じて深く息を吸い込んだ。
 肺にはち切れんばかりに空気を取り込むと、
「う゛ああああ!」
 女は背を丸め、一気に吐いた。
 口からは溶岩のような灼熱の炎が大量に放出された。
 それを見て、女児はにやりと笑った。
「これがあがきというやつよな」
 下駄は数度地を蹴って、女児は両手を胸の前に三角形に広げた。
 土は岩に、その遥か上から風が吹き、ハリケーンに無人の駅は荒れ狂った。
 女は思った。
 これで妹の元へといけると、
 今にもハリケーンは女を飲み込もうとしている。
 ちょうど女が、土の壁に階段の土の壁に背をあずけ諦めようとしていると、
 後方で轟音が鳴り、ぽっかりと穴があいた。
 朱いスポーツカーは地下鉄にどうやってか、入り込んでいた。
 車には、二名乗車していた。
「蘭ちゃんごめんよ遅くなった、岩城さんに穴掘ってもらった」
 運転手である青年は眼鏡すくいあげてそういった。
 助手席にいる老人は髭を蓄え、ニヒルに笑った。
「もう遅い!」
 女はそういうと車に乗り込んだ。
 老人は車から足を出すと地面を蹴った。
 すると土の壁にハリケーンは押さえられた、しかし少しずつ壁は削られてゆく、
 女児は左の掌を掲げると、炎が膨れあがる。
 眼鏡をかけた青年は、ドリンクホルダーにあったペットボトルの水を窓からまいた。
 すると大きな水膜が炎を滅した。
「さあいこう、ちょっと飛ばすね」
 青年がそういうと女はじろりと睨んだ。