大事なもの

 

 

 

 

 

デッサンなんて気にしちゃいけない

計算なんてせずに

ただ無心に手を動かす

子どもの頃した様に

絵を描く事に集中する

傑作をものにしようなんて

大それたことを考えちゃいけない

時を忘れ我を忘れ

ただ無心に手を動かす

結果として作品にはならないけれど

かけがえのない充足感を手に入れる

これって作品より大事じゃない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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わたしは普段詩を書いたときに雑感を付記したりしませんが、今回はちょっと制作の極意に触れた気がしますので、つらつらと記します。

 

この詩は絵を描く事について認めましたが、詩を書く事についても、あるいはその他の創作全般についても、同様の事が言えるかもしれません。

 

おとなになるとものを作る時になにがしかの計算が働いてしまいます。

それは完成度の高い作品を作ろうとするからでしょう。

しかしまったくもって無心に事に当たれば、己の精神の解放感は絶頂に達します。

 

『舞踏会の手帖』という古い古い映画がありました。

1930年代のものだったと思います。

フランス映画です。

 

お話はおとなになったある女性が、10代で舞踏会デビュー(社交界デビュー)した時の手帖をもとに、当時一緒に踊った男性たちを訪ねてあちこち旅をするというものです。

 

この映画の中でとても印象に残ったエピソードがあります。

女性はかつて詩人だった男性をアルプスに訪ねます。

男性は山小屋の主人になっていました。

彼女は男性に聞きます。

「あなたは今でも詩人なの?」

男性が答えます。

「本当の詩人になれた。

一行も詩を書かなくなったから」

 

凡人はなかなかここまでの境地には達せませんので、わたしはこれからもしょぼい絵や詩を沢山こさえていく事になるでしょう。

皆さん、我慢して見て、読んでくださいね。