大切なものとは?…映画「悪人」
映画 悪人を観る。
小説もかなりズシリと来る作品であったがこの映画も凄い。
しかも原作の良い部分を壊さずに映画らしくより明確なメッセージまで出ている。
人と人の繋がりはどんどんと薄まっているのに簡単に情報だけは手に入れる事が出来る。それによって巻き起こる混乱と孤独。
現代を浮き彫りにした状況の中で皮肉にも加害者は本当に人を愛する事で生きる事に目覚め被害者の親の考え方とリンクしてしまう。
大切なものを持ってない人間が多すぎる のセリフの重み。被害者の父と浮かれた大学生達の絡みは余りにも切ない。
この一言が全てを物語っている気がする。
役者陣も本当に素晴らしい。何より本当にリアルで画面から体温が伝わってくる様。
しかも見終わって気付いたが脚本に原作者自らが参加している。しかも映画には映画だけのエンディング。最後の主人公の何とも言えぬ表情……原作とも共通する想い…悪人とは本当に誰なんだろう?加害者のお婆さんを土足で踏みにじるマスコミも女の子を置き去りにした大学生もそれを笑いながら聞いている周りの人間も……そうかと思えばバスの運転手のお婆さんに対する優しさに涙したりして。
映画の中で日常のちょっとした淋しく物哀しい風景が随所にさしこまれる事によって余計に考えさせられる。
コレは本当に評判以上の映画でありました。
しかし監督の李 相日の素晴らしさ。フラガールも凄いのにまた悪人まで……次回作も大いに期待ですな。
現代版の砂の器の様にも感じる。ズシリときますが間違い無い名作。