学校の昼休み、ランチのために友人と繁華街へ向かっていた。交差点で信号が青に変わり、一斉に横断歩道を歩く。その中に一匹の三毛猫がいた。
「ね、ね、ねこ! 猫がいる!」
私のすぐ隣、足元を同じペースで歩いている。あまりに自然すぎて気づくの遅れた。細い猫で、赤いリボンのような首輪。
「首輪してるから、この辺の飼い猫かな?」
友人に声を掛けると、近くの男性が「散歩 散歩」と教えてくれた。猫はそのまま店の隙間に消えていった。
散歩にしては、車通りが多い道だった。男性が飼い主なのか、そういうことならご主人をおいてどこかに行ってしまっているし。それにしても体は細いし。冗談なのか。
「ここ危ないけど、信号わかるのかな?」
若い猫ではないから、、、わかるような気もする。
数日後のランチタイム、今度は怪しい韓国スナックの前を歩くこの猫を見た。店先、道路の脇を歩いている。また別の昼には月極駐車場を横切っているのを見た。
確かに散歩なのかもしれない。昼間に会うし。いつからか見かけると近づいて「にゃー」「にゃあニャア!」と言うようになった。私が。
だってもう知り合いじゃないですか。
「こんにちはー」「今日はどこ行くの? お天気いいね」いつも声を掛けても三毛猫さんは、軽く一瞥するが、私と友人がいないかのようにまっすぐ歩いてどこかへいってしまう。人間に構わられるのに慣れているのだろう。毎日散歩しているからって、ヒマなわけでもないらしい。
少し早く登校した雨の朝、どこかから視線を感じると韓国料理店の中から三毛さんがこちらを見ていた。閉じられた自動ドアのガラスの内側、ちょこんと座って外を見ている。このお店の子だったのか、、、雨だから外に出してもらえないらしい。「散歩」というのも本当なのかもしれない。
三毛猫さんの素性もわかり、街のどこかで遭遇するのがいつもの風景になっていた。それはよく晴れた日、三毛猫さんは二人の若い女性に声を掛けられていた。「かわいい! 猫ちゃ~ん どこかで飼われているの?」
それまで普通に歩いていた三毛さんが、ぱたりと道路に倒れた。大丈夫か? 次の瞬間、お腹を見せながらごろごろと転がりだした。にゃんにゃんーという甘えた鳴き声が聞こえる。
若い二人はわぁと歓声を上げ、夢中になっていた。
「え?」 わたしと友人は一瞬固まった。そして、そのまま通り過ぎた。
そんなことできる子だったのか、、、できたのか!キャラ変か?
あのふたりはオシャレで可愛らしいゆるふわ女子だった。それに比べると、私はシャツとズボンでノーメイク。
つれない猫ではなかったのだ。なんなら、デレデレしていた。デレ猫やないか。
やっぱり猫もかわいい子が好きですなのか。軽くショックである、、、
それから数か月たったよく晴れたお昼時、近場で用事があったため、懐かしさで学校近辺をまわる機会があった。
韓国雑貨店横の広い駐車場で猫を見かけた。まさかまさか、あの三毛猫ちゃんである。すっかり不意打ちだ。奇跡の再会にはしゃいだ私は、人目もはばからず三毛ちゃんに歩み寄った「三毛ちゃん、久しぶりだね! 今日も散歩してるの!? ここ遠いけどこんなところまで来るんだね!」
もちろん相手が覚えているわけないが、タイヤにすりすりしたり、地面にごろごろしたり、相変わらず、警戒したり逃げ出すそぶりでもない。友人に報告しようと、その様子をスマホで写真を撮った。(猫ですからね)
きれいに撮らせてくれたので、「じゃあね、また元気でね~」とその場を離れると、なんと三毛ちゃんがついてくる。そんなことする子じゃなかったのに、、、
嬉しい。
「一緒に来る? 今日は散歩は終わり?」
立ち去るのを辞めて、しばらく一緒に歩いたり、話しかけているうちに、「ミクちゃんだよ、ミクちゃん」と後ろから声が聞こえた。
男性が韓国雑貨店に車から、ダンボールを納品しているところだった。三毛ちゃんに初めて会った日に日、「散歩 散歩」と教えてくれた方だった本当に飼い主さんだったのだ。しかもこの店に納品中、、、そんな偶然、奇跡ってあるのか!?
「ミクちゃんっていうんですね。名前が知れて良かったです。ごめんなさい、話しかけちゃって」
「そんなことないよ、どんどん話しかけて。嬉しいね?ミクちゃん」
飼い主公認、しかも名前もゲット。こんな幸せがあるのか。
その時、ミクちゃんは歩道にぱたっと転がり、ごろごろとお腹を見せてくれた。あの時みたあれである。
もしかして、私はわずか数か月の間に、オシャレでかわいい美人に進化したのだろうか。
自分でも気づかないうちに。
ありえなくない。