空模様は残念ながら未だ曇り。僕の気持ちと同調している。
朝のあのすがすがしい気持ちのままここにこれたなら、きっと今頃、雲もとれて澄んだ青色の空を眺めていただろうに。そう、電車を降りてからの「うまくいかなさ」が僕のテンションを下げたままでいる。
きっと空も僕の感情を読みとったのだろう。どんよりと、中途半端な厚さの雲で全体が覆われている。中途半端な灰色で。

町を歩き始める。人の気配はあまりしない。さて困った。
特に面白みのない町並み。住宅街。よくあるパターン。歩いていて面白いなと感じる町というのは、なかなかお目にかかれないモノなのだ。そんな時は町並みに気を配るでもなく、ひたすら歩く。
頭の中を真っ白にして、ただ前へ進むために歩く。これがなかなかいい。
脳味噌を停止させた状態で運動能力のみに神経を注ぐ。歩く-
あらゆる思考や過去、自分という者は何なのか、そんなモノは宇宙空間の歪みの中に葬り去られる。つかの間だが、全てをリセット出来る。無の世界。
僕の中の全てが「無」となったとき、今までにない新しい僕が体内に注入される。新しい思考、未来。
現実に戻るまで、好きなだけ、あらゆる思考を飛び交わす。柄に合わない哲学や、くだらない妄想まで。
ある種のトリップ状態に陥るため、時間の流れは感じなくなる。家に帰れる時間までに「目覚め」られればいいのだが、たまに「旅先」で寝泊まりする羽目になることもある。しょうがない。

ただ、今日の僕はそんな気分ではない。何かに悩んでいたり、壁にぶち当たっていたり、恋に落ちている(最近は無いなぁ)とか言うのなら何も考えない散歩は有益なのだが。今は割に普通の精神状態だし、出来れば気分良くいろんな景色を楽しみながら散歩をしたい…

僕はやっぱり暗いヤツなのかな?自分に対して自分であれこれ問いかけているじゃないか。家を出てから今までの間に、コミュニケーションゼロ。まあいいや。

少し市街地から離れれば僕の求めるような景色が見つかるかも知れないし、という楽観的観測のもと、散歩を続ける。南へ、南へ。 雨。

駅からは結構離れていた。時間にすると30分は歩いただろうか。予想に反して雨が降ってくる(僕以外のほとんどの人の予想は正解だった)。傘を差しての散歩は好きじゃない。
どこかでレインコートでも買おうかな。
そんなことを考えながら歩いていると、一件の小さなお店を見つける。何故かは知らないがすごく心を惹かれる。
「雑貨店 POST」
どこかの地方にありそうな、中途半端におしゃれなデザインのロゴ。センスなし。しかしながら、そのお店全体に漂う雰囲気がものすごく心地良い。なんというか、とにかく心地良い。波長が合っている感じがする。

雨が一時的に激しく降ってくる。迷うことなく僕はそのお店に逃げ込むことにする。
これも大切な出会い。