改札を出ると、まず目に飛び込んだのは工事中の駅ビル。完成予想図の描かれたポスターによると、来年の春に完成予定とのこと。ということは、ほぼ2年後か。今まではただの何にもない駅だったらしい。何も知らない町でも、知らないところでどんどん何かが変わって行ってるんだな。そう思うと、なんだか急に自分が小さくなった気がした。世の中には圧倒的に知らないことの方が多い。景色も観光スポットも、世の中のことも人の考えることも。

さて、今僕は2つの選択しに悩んでいる。大したことではないかも知れないが、その先のことを考えると案外重要なところだ。
南に出るか、北に出るか。
基本的に僕は起点である駅からはどんどん離れるように歩く。無意識に「迷いたい」気持ちが出てしまうせいかもしれない。だから、歩き出す方角によって、全く違った物語が生まれるのだ。「物語」はちょっと大袈裟かな。
今回は人の流れの少ない方に決めた。ちょっと静かに何か思いに耽りながら散歩を楽しみたい気分だったのだ。
電車が到着して、人の波が改札に押し寄せる。そんな光景をじっと観察する。圧倒的に南口へ行く人の方が多い。北口に向かう人は本当にごくまれだ。若干、「何もない」不安に駆られたが、僕は北口の方へ向かった。
失敗。
出ていきなり壁。壁しかない。まっすぐ進めない。僕の前にはいきなり日本の中の外国が立ちはだかった。性格上、引き返すことはしない僕は仕方なく米軍補給地(後で知ったことなのだが)の壁沿いに進むことにした。
また失敗。
すぐに行き止まり。なにか病院らしい建物の入り口と南口へ抜ける踏切。まさか病院に入るわけにもいかず、結局南口の方角に軌道修正する羽目になった。おかしい。今日は朝から調子よかったはずなのに。
世の中には引き返すとか、振り返るとかいうことが「勇気ある決断」に変わることもあるのかも知れない。

思わぬロスタイムはなるべく気にしないようにして、不本意ながら予定外の方角へ「散歩」を開始する。
質素な町並み。申し訳程度の商店とコンビニ、ATMだけの銀行。なかなか僕好みのスタート地点である。首都圏の駅前に必ずと言っていいほどある、客のいないパチンコ屋がないのが少し残念だった。

さて、特に意気込みとか言うモノはないのだが、散歩を始めるか。
なんとなく、適当に、のんびり、な感じで。