僕は逃げている。世界の終わりから。

飛ぼうと思えば飛べるし、走り出したらものすごいスピードで走ることが出来る。
僕の逃げるすぐ後ろから順々に終わっていく。町並みはただれ落ち、草木は枯れ果てる。
僕は家々の隙間をかいくぐり、屋根を飛び移り、家から家へ、ビルからビルへ。野を駆け抜け、山も飛び越え。あてもなくどんどん逃げる。

飛べ。

都会の絡まり合った電線、ケーブルをうまくくぐり抜け、大空へ。灰色。
一定の方角へ向かってひたすら進む。町ごと崩れ去り、山ごと枯れ果て、世界の終わりが僕に向かって勢いを増す。
さらに前へさらに上へ飛ぶ。

雲の中へはいる。視界ゼロ。それでも世界の終わりは追ってくる。白色。
雲を抜ける。何もない。前にも眼下にも。僕の負け。灰色。

たぶん天国。大きな建物がある。中は真っ暗。パルテノン宮殿似。
中にはいると、吊り橋。落ちると底なしの地獄へ通じる。先を急ぐ。
かすかに人の気配。しかもかなり大勢。地面は土。通路のようなモノあり。
目が慣れてきた。建物の中に大勢の人。顔までは見えない。災害時の避難所の光景に似ている。誰も動かない、しゃべらない。

声をかける。「ここはなんなんですか?」
「…………………。」

予期せぬ方向から光が差す。逆光の中に人の影。

「時間だ。」

みな口を開く。暗闇がみるみる明るくなっていく。人の群。終わりが見えない。
飲み食いを始める人。うろうろする人。まだじっとして黙っている人。商売を始める人。

声をかける。「ここはなんなんですか?」
「…………………お前は帰れ。」