あなたの家に今、捨てられずにいる紙袋が、いくつありますか。

中身は、空き箱。もう使わない充電ケーブル。いつかのお菓子の缶。

一度手に取って、また棚に戻したもの。

「後で見よう」と思ってから、もう一年経っているもの。

世間はこれを、だらしなさと呼びます。

物が多い家は、心も乱れている、と。

でも、本当にそうでしょうか。

 

少しだけ、心あたりを並べてみますね。

「いつか使うかも」の袋が、押し入れに三つある。

いただき物を捨てようとすると、くれた人の顔が浮かんで、手が止まる。

服を捨てようとして、買ったときの値段を思い出して、また戻す。

そして、決められなかった物には、行き先があります。

とりあえず、そこの椅子の上。

とりあえず、あの部屋の隅。

名前をつけるなら、「後での山」です。

あの山は、物の山ではありません。

先送りにされた決断が、かたちになって積もっているのです。

家族に見えているのは、散らかった部屋だけ。

「なんでこんなに物があるの」

そう言われた日の、あの居心地の悪さを、覚えていますか。

 

ここで、いちばん伝えたいことを、先にお話しします。

あなたは、片づけられない人ではありません。

だらしないのでも、意志が弱いのでもありません。

物が手放せないのは、あなたの性格の問題ではなかったのです。

では、何が起きていたのでしょう。

 

以前、ある本で「余白」という言葉に出会いました。

大きなスーツケースに荷物を詰めるとき、わたしたちは何も考えません。

迷ったら入れる。両方入れる。

考えること自体が、そもそも起きない。

でも、小さなスーツケースだと、どうでしょう。

一つ入れるたびに、何かをあきらめることになります。

上着を入れるなら、靴を出す。

本を入れるなら、お土産の場所が消える。

荷物の一つひとつが、決断を要求してくるのです。

心に余白がない生活とは、この小さなスーツケースで毎日を詰めるようなもの。

これを選べば、あれをあきらめる。

今月これを払えば、来月あれが払えない。

一日じゅう、頭のなかでその計算が走っています。

そして、決めることには体力がいります。

夜、家に帰ったあなたの手元に、紙袋が一つ残っている。

これを捨てるか、決める。

その小さな決断に払う体力が、もう残っていない。

だから、決めない。

捨てないのではなく、決められないのです。

「後での山」は、こうして生まれます。

 

ここで、あなたと、あなたの家族を、両方そっと診てみますね。

山を前にして手が止まるあなたは、決める余白を、生活の別の場所で先に使い切っていました。

そして「なんで捨てないの」と言った家族は、見えている山だけを見て、性格の問題だと読んでいた。

誰も悪くないのです。

それなのに、余白のない人ほど物に埋もれて、その上、責められる。

そんな坂道だけが、静かにできあがっていく。

 

わたしにも、何を見ても、何ひとつ決められない時期がありました。

夫と死別して、幼い子ども二人を抱えて、シングルマザーになったころです。

心に余白なんて、ひとかけらもありませんでした。

目の前の一日を回すだけで、決める力を使い果たしていて。

小さな紙袋ひとつ、捨てるか捨てないかも、決められなかった。

だから、痛いほど分かるのです。

あれは、だらしなさではなかった。

生きることに、決断を使い果たしていた日々の記録だったのだと。

 

物が家にたまっていくのは、そこで巡りが止まっているサインです。

流れ込む方向にだけ、坂がゆるやかにできていて。

出ていく方向には、坂が急になっている。

だから、まず取り戻したいのは、片づける気力ではなくて、心の余白のほうです。

余白がもどれば、物も、気持ちも、また静かに巡りはじめます。

手放すというのは、失うことではなくて、巡らせること。

一つ手放すと、そのぶん余白が生まれて、次の流れが入ってくるのです。

 

では、今日からできる、小さな一歩を。

片づけなくて、いいのです。

今日は、何もしなくていい。

代わりに、山から一つだけ手に取って、こう聞いてみてください。

「これ、捨てる?」ではなく、「これ、いる?」と。

不思議なことに、聞き方が変わるだけで、物の重さが変わります。

「捨てる?」と聞くと、失うものを数えはじめてしまう。

でも「いる?」と聞くと、ただ選ぶだけでいい。

決めるのは、一日にひとつで十分です。

ひとつなら、夜の残りの体力でも、決められます。

そしてもし、あなたが誰かの家の山を見て、「なんで捨てないの」と言いたくなったら。

言葉をひとつだけ、変えてみてください。

「なんで捨てないの」ではなく、「この中で、いるものだけ教えて」と。

決断の向きを、手放すほうから、選ぶほうへ、回してあげる。

それだけで、相手のスーツケースに、余白が一つ生まれます。

 

ここで少しだけ、わたし自身のことをお話しさせてください。

わたしは渡邉有優美と申します。

十六年の海外生活を経て、いまは海外を拠点に、複数の事業や投資に関わりながら暮らしています。

ヨガスクールの運営、アパレル事業、衣食住に関わる実業、コンサルティング、SNS運用、AI活用。

肩書きはいろいろですが、根っこにあるのはいつも「巡り」という一つの考え方です。

ヨガ講師としては二十年以上、延べ一万人以上の方とレッスンを重ねてきました。

SNSの総フォロワーは二十八万人を超え、動画の再生は二億回を超えました。

著書に『PDCAを回して結果を出すX運用マニュアル』『体も心も整える1分体操』、

そして徳間書店から『1分で幸福に満たされる 巡りの法則』を出しています。

でも、最初からこうだったわけではありません。

ワンコインのヨガレッスンから始めました。

夫とは、突然、死別しました。娘が一歳、息子が五歳のときでした。

そこからシングルマザーとして子どもたちを育て、震災を経験し、海外移住を決めました。

何度も底を見て、そのたびに「巡り」に戻ってきた人間です。

 

最後に、ひとつだけ。

物の山は、あなたの失敗の記録ではありません。

あなたが、この家のために決断を使い果たしてきた、日々の記録です。

だから、自分を責めなくて大丈夫。

今日は、椅子に座り直すだけでいい。

「捨てる人」の椅子から、「選ぶ人」の椅子へ。

そして、一つだけ手に取って、聞いてみてください。

「この中で、いるものは、どれ?」

その一つが、あなたの巡りを、また動かしはじめます。

 

物との向き合い方は、動画のなかでもっとやわらかくお話ししています。

よかったら、ゆっくり聴いてみてくださいね。

🎥 動画はこちらから

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ここまで読んでくれたあなたは、もう「巡り」の入口に立っています。

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ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。

あなたの巡りのいい一日になりますように。

あゆみかん🍊

 

■ 著者プロフィール(渡邉有優美)

渡邉有優美日本のヨガ指導者、著述家、実業家であり、女性の自立と健康を支える事業家。愛称は「あゆみかん」。

ヨガ指導歴は20年以上にわたり、これまでの指導人数は延べ1万人を超える。「1分体操」を考案し、心と体を整える習慣を広く発信している。

2023年には、ヨガの開脚前屈の姿勢を1時間5分16秒保持し、ギネス世界記録を樹立した。

SNSを通じた健康発信や著述活動に加え、女性が自分の力で人生を選び、賢く軽やかに生きるための事業や教育活動にも取り組んでいる。