ミラノ・コルティナ冬季オリンピックのスノーボード男子ハーフパイプ予選は、日本勢の躍進という結果以上に、ある「象徴的な光景」で注目を集めました。中継画面に何度も映し出されたボードのロゴ――YONEX。その存在感は偶然とは思えないほど強烈でした。
これまでスノーボード業界は、BURTONをはじめとする米国ブランドが中心というイメージが根強くあります。長年にわたり、トップライダーの使用率や市場シェアにおいても米国勢が主導権を握ってきました。しかし今回の五輪では、日本人選手だけでなく、米国籍選手までもがYONEXのボードを使用している姿が確認されました。
これは単なるブランド露出ではありません。五輪という世界最高峰の舞台において、選手が最優先するのは「勝てるかどうか」です。スポンサー契約やイメージも重要ですが、最終的に自分のパフォーマンスを最大化できるギアを選ぶのがトップアスリートの常識です。その意味で、YONEXが選択された事実は、性能・安定性・信頼性が世界基準に到達している証拠と言えるでしょう。
特にハーフパイプ競技は、ボードの反発力、エッジの安定感、空中での操作性が勝敗を分けます。わずかな違いが得点に直結する繊細な競技です。そこで日本メーカーのボードが支持されているという事実は、日本のスポーツ製造技術の進化を象徴しています。
さらに注目すべきは、この動きが今後の市場シェアに与える影響です。五輪は単なるスポーツイベントではなく、巨大なグローバルマーケティングの舞台です。中継で繰り返し映るブランドロゴは、世界中の視聴者に強烈な印象を残します。実際、トップ選手が使用するギアは、翌シーズンの販売動向に大きな影響を与える傾向があります。
つまり今回のYONEXの存在感は、一時的な話題ではなく、スノーボード業界の勢力図変化の前兆である可能性があります。長年続いた「米国ブランド中心」の構図に、小さくも確実な変化が生まれているのかもしれません。
日本企業はこれまで、品質や技術力では高い評価を得ながらも、ブランドイメージやマーケティング面で欧米勢に後れを取る場面もありました。しかし今回の五輪は、「実力で選ばれる」段階に入ったことを示唆しています。
静かですが、確かなメッセージです。
五輪という世界最高峰の舞台で、日本ブランドが選ばれたという事実。
それは、日本のものづくりがグローバル競争の中心に近づいている証と言えるのではないでしょうか。
今後のワールドカップ、次世代ライダーの契約動向、市場シェアの推移。
この流れが一過性のものか、本格的な転換点となるのか。
スノーボード業界の動向から目が離せません。