ついつい読んでしまいます。
 
仕切りなおして、静かに動き始めたかに見えた物語は
ゆっくりとだけど、それだけに確実に、広がりを伴って展開していました。
 
恐ろしいほどの緊張感の中、物語が大きく「ごとり」と進む予感が最高潮に。
しかもそれはどちらかと言えば良くない予感。
 
後ろを振り返るとたくさんの暗示が。
きっとこれは説明されない、回収されない種類の物だと思います。
 
底を見通すことが出来ないほど深くて暗い穴を覗き込む時
私たちは自分自身の深いところから何かを引っ張り出して、
その穴の深さとか暗さに隠された意味を見出そうとします。
 
 
天吾は草の幻覚の中で「壁を抜けた」わけですが、これはあまりに受動的過ぎます。
これで物語は先に進み始めますが、それはいちど好ましくない方向に進むのだと思います。
後に主体的、意識的にそれを果たす事で救いがもたらされる、と予想するのですが。
 
ああ読むことをとめられない。