朝ごはん抜きでお腹が空いたので山崎屋食堂。
前回の「かつカレー」には驚いたので今回は「かつ定食」。
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ご飯の量が多い...。
普通の茶碗の何杯分になるのだろうか?
聳え立つ姿はエヴェレストのような大迫力。
 
そして、それに対しておかずの量が決して多くない。
 
定食の喜びと厳しさは
「めしとおかずのバランス」にある。
おかずとご飯を絶妙なバランスで食べ進み、
最後の一口に感動的なフィナーレを演出する。
その厳しくも心躍る旅路こそが定食のすべてである、と思う。
 
定食は
飯とおかずのせめぎ合いだ!
 
 
普通の大きさのロースかつに市販のしば漬け、味噌汁。
ドレッシングの類は無いのでキャベツはおかず側には計算できない。
ソースも普通の中濃ソース。
味噌汁を一口、麹の香りがする。自家製味噌かもしれない。塩分は薄め。
健康にはいいけれどおかず的要素は薄い。
 
そして全体の量も完食が楽観できるものではない。
 
かなり難易度は高い。
充分ではない装備でエベレストに挑む登山家の気分。
 
早速取り掛かる事にしよう。
 
カツを一口。
揚げたてでさくさく、肉も柔らかい。
このとき大事なのは
 
「両端の2切れから食べる」
 
こと。
端は肉の熱収縮で衣の中が「空っぽ」のことがあるし、
筋がちな場合もある。
片方の端から食べてフィナーレにそういう「ハズレ」が来ては泣くに泣き切れない。
端は衣多めで「アタリ」の場合の破壊力は絶大だが、
不確定要素は極力排するべきだと思う。
「冒険」と「危険を弄ぶ事」は同じではない。
 
半分までは 飯/おかず の割合を飯寄りにして白米自体の味と「のど越し」を楽しむ。
多くの白米がのどを「ぐいぐい」通り過ぎる快感は「白米好き」にとっては至高。
 
その後徐々におかず割合を高めて濃い目の味わいで締めくくる方針で行こう。
もちろん、飯とおかずの最後がぴったり合わなくてはならない。
しば漬けはオマケ程度にしか使えないだろう。
飯の炊き方は固めで好み。
 
しかし両端の2切れ食べ,
残り真ん中の3切れというところで
飯の山があまり低くなってないことに愕然とする。
山盛りにするために中心部が詰めてあることもその一因だが、
予想以上に飯が多い。
 
これは厳しくなってきた。
 
急遽 味噌汁の具の油揚げとしば漬けをおかず主要要素に昇格、
中盤を立て直す事にする。
この時点での厳しい局面は輝かしい最終局面のための「雌伏の時」ともいえる。
ここはあせらず、しかし着実に進むべき場面だ。
 
こういう場合でもソースや食卓塩を飯にかける事は「白米好き」にとっては敗北を意味する。
あくまでも白米とおかずの、純粋な出会いを目指すべきなのだと思う。
 
そしてもうひとつ、高所登山との類似性が顕れる。
8000m以上の高所では、そこに留まること自体が体力を奪う。
だから速攻が成功の道。
最近では少人数、軽装、速攻のアルパインスタイルが主流。
 
これほどの量の食物は、ゆっくり食べていると血糖値が上昇し、
満腹中枢が刺激されてそれ以上食べられなくなってしまう。
だから不用意に時間をかけることは登山同様危険なのだ。
 
幸い、危険な中盤をうまく乗り切り、多少の余裕が持てたので
キャベツで味覚をすっきりさせ、味噌汁も飲み干した。
 
最後に真ん中部分のカツ一切れ、軽く一口の飯。
今日、いちばん「おかずがち」の一口。
 
ああ、
このために、
この時のために。
 
ごくん。
ごちそうさま!
 
 
※参考文献「夜行」(かっこいいスキヤキ 泉昌之)