佐渡島エコジャーニーウルトラ遠足206改め208km完走報告 その10(18日-4)
ベンチで、ふて寝をしたのは、「Kさかさん」から、逃れるためでもあった。
「一緒に走りましょう。」などと、声をかけられたく無かったので、背中を向けて寝ていた。
しばらくすると、「じゃあ、ボクは先に行きますから、後から来て下さいね。」
と、言葉を残して、「Kさかさん」は出発していった。
もう、走らなくて良い。走らない。
と、思っているのだが、何処かで、それが、吹っ切れていない。
「まだ、時間は十分にあるんだから、歩いてだって、間に合いますよ。」
「リタイアしたって、つまらないですよ。ゴールした方がいいですよ。行きましょう。」
「Kさかさん」の言葉が、頭のをかすめる。
小木からここに至るまで、そして、この第4休憩所で休み、足の痛みはかなり解消されていた。
まだ走れるかもしれない。
時間はある。でも…、折れた心が言い訳をしていた。
第4エイドには、ボクが到着してからずっと、走らない女子ランナーがいた。
それこそ、何人もが出発していったというのにだ。
主催の菅原さんとの会話を聞いていると、どうもリタイア組らしい。
それも、もうここに来て何時間もたっている。
そして、リタイアをやめて、走り出そうか、悩んでいる様子だ。
おっと、これはまずい!
ここで、彼女が走ると言い出したら、ボクのリタイアの立場が無いじゃないか…。
「いや、無理しない方が良いよ。せっかくリタイアしたんだから。」
そう言って止めては見るが、油に火を注いでしまった。
「リタイアやめます!走ります。」
とうとう、いや、やはり、こういう運命だったようだ。
観念した…。と言うか、チャンスを得た。
「よし、オレも行こう!!」 ボクも、リタイアを返上し、走り出すことにした。
途中の分岐が分からないので、とのことで、
彼女ことKIさんが、そこまで、一緒に道案内をしてくれることになった。
16時41分
菅原さんに別れを告げて、家族にメールを送り、ジョグでスタートした。
足の腫れはかなり改善され、緩く履いた靴では、痛みはない。
時速7キロくらいのペースで走り始めることができた。
不思議なくらい快調だ。
ものの30分で、「Kさかさん」に追いつき、追い越した。
「先で待ってます。」とは言ったが、どうなるか分からなかった。
KIさんは、若いかわいらしいママだった。
出産をはさんで、これまでに2回、佐渡島を完走されているウルトラママ。
トレール大好き、ロング走大好きの、すごいランナーだ。
何がすごいって、意志の強さだ。
引き締まった目線から鼻筋にかけて、彼女の意志の強さを表している。
そのくせ、笑顔がすごいチャーミングだから、男はイチコロだ…。
彼女は、今回、リタイアするにあたり、人知れず、悔し涙を流していた。
そして、何よりもゴールにこだわり続ける人でもあったので、リタイアは、受け入れられなかったのだ。
(だいたい、彼女のブログのタイトルは「その一歩は、ゴールへと続く一歩」
これが彼女のポリシーなのだから。)
ボクは調子がいいとは言っても、KIさんの方が速いので、「先に行って下さい。」と、言って別れた。
残り50km、フルマラソン1本とちょっと。
走り始めたものの、その距離は大きなものだ。
このコースでは、どの区間も、30~35kmだ。
なのに、一番最後のこの区間が、一番長い区間で、約50kmなのだ。
しかし、これを走ればゴールだ。と思うと、
50kmは長いと感じないのは、もう、感覚がマヒしてしまっているとしか言いようがないですねえ。
実際、マヒしていなければ、午後4時からフルマラソン以上の距離を走ろうなどとは思いませんよ!!
コースは、日暮れの漁村をとおり、丘を越え、稲刈りの終わった田んぼをぬうように続いて行く。
佐渡島の自然を満喫できる良いコースだ。
気持ちよく走ったり、上り坂は歩いたりしていった。
野良仕事帰りのおばあさんに挨拶。
「こんにちは!おじゃましてます。」
「どこからきなはりましたか?」
「東京です。」
「まあ、遠くからようこそいらっしゃいました。」
とても、ゆったりとした、会話に、心安らぐ一時だ。
次第に、夕暮れが迫ってきた。
お花つみに行っていたKIさんに追いつくと、今度は併走した。
そしてボクに「ゴールまで一緒に走って下さい。お願いします。」と頼まれた。
「ええ!こちらこそ、すごく遅いんで、迷惑だったら置いていって下さい。」と言った。
暗い夜ラン、女子一人のランは、避けたい気持ちは、痛いほど分かった。
これで、ボクも一人ではなくなったので、とても安心した。
何しろ2回完走の経験者だ。心強い見方を得たもので、大感謝だった。
ずっと田舎道を走っていった。
距離は、45k…42k…39kと、目に見えて縮まって行く。
嬉しくて元気が出る。
夜の帳の降りる前に、ザックを下ろして、腹ごしらえと照明の準備をした。
この先、土砂崩れで通れにため、2㎞の大回りを強いられる。
えっちら、おっちら坂をのぼり、えっちらおっちら坂を下る。
自販機で休憩し、また出発。
KIさんは股関節を痛めているとのことであったが、私よりも強い。
正確には、「痛みに耐える身体を持っている。」と言える。
50男が足が「痛い」「痛い」。とほざいているのに、KIさんは、痛いとは、口にしない。
もっとも、女子の耐痛性能は、出産で鍛えられているから、
男なんぞヘッポコが、対抗できる相手ではありませーん。
坂を下りきると、今度はまた登り、そして、下り、そして登りまた下り…と、繰り返す。
暗闇の向こうから、波のざわめきが聞こえる。
東京ではありえない、不思議な感覚だ。
風が出てきた。
何度か自販機休憩を繰り返しながら、前進する。
女子2人組と、行きつ、行かれつしながら、進む。
海の向こうに、灯りの列が見える。
ゴールはあの左の端をぐるりと向こう側に回ったところだ。
それなのに、我々はこちら側を右方向へと向かっている。
距離は着実に縮まりつつある。すでに30kmを切っているのだ。
しかし、見えている対岸は長い。
本当に後30kmなのか?と疑いたくなるほどだ。
続く…。

