【2026年最新】在留資格の手数料引き上げと受入れ厳格化の深層|制度悪用のツケと問われる企業の「財務体力」
コンビニや飲食店、建設現場、介護施設、製造業など、街のいたるところで外国人材が日本の社会や産業を支える姿はすっかり日常になりました。
しかし今、その裏側で「在留資格の手続きや雇用をめぐるルール」がかつてないほど厳格化しています。
2026年10月1日からは、ビザの更新・変更手数料が大幅に引き上げられます。
一見すると単なる行政手続きの変更に思えますが、その背景には「一部の悪質ブローカーによる制度の悪用」と、それによって私たちの税金・社会保障や生活環境が脅かされてきた実態があります。
なぜ今、審査や費用が厳しくなっているのか。
そして外国人材を雇用する日本の企業や、地域社会に暮らす私たちにどう影響するのかを分かりやすく解説します。
1. そもそも「経営管理ビザ」とは?なぜ悪用されてしまったのか
今回の制度厳格化の要因となったのが、在留資格のひとつである「経営・管理(通称:経営管理ビザ)」をめぐる問題です。
経営管理ビザ=「日本で社長・役員になるためのビザ」
外国人が日本で暮らすためには、目的に合った「在留資格(ビザ)」が必要です。
- 会社で会社員として働くためのビザ(技術・人文知識・国際業務など)
- 技能を学ぶためのビザ(技能実習など)
- 自ら会社を立ち上げて社長になったり、役員として事業を動かしたりするためのビザ=「経営管理ビザ」
現場での単純作業や従業員としての労働ではなく、「ビジネスの舵取りを行う経営者」にのみ認められる特別な資格です。
なぜ悪質な業者に狙われたのか?
以前の制度の『資本金500万円の用意』という基準は、学歴や職歴の制限が少なかったため、悪質なブローカーにとっては”見せ金”さえ用意すれば抜け道を作りやすい仕組みになっていました。
ここに目をつけた悪質なブローカー(仲介業者)が、「500万円さえ一時的に工面できれば、誰でも日本に住む権利が手に入る裏ワザ」として悪用を始めたのです。
- 「見せ金」とペーパーカンパニー
ブローカーが一時的にお金を外国人の口座に入れて「資本金500万円」があるように見せかけ、法人の登記が完了した瞬間に全額引き揚げます。
実際には元手のない空っぽの会社(ペーパーカンパニー)が、同一の雑居ビルやワンルームマンションに何十社も登記されました。
- ビザの売買と「偽装社長」による不法就労
ブローカーは海外で「日本に移住できる」と謳い、一式数百万円でこの仕組みを販売。
来日した本人は社長業など一切行わず、資格外である工場や建設現場などの肉体労働に従事する(不法就労)ケースが多発しました。
2. 私たちの生活や税金に及んだ「3つの実害」
「外国人のビザの不正」と聞くと、自分たちの生活には直接関係のないニュースのように思えるかもしれません。
しかし実際には、一般市民の税金や社会保障、日々の生活環境を直接脅かす深刻な問題に発展していました。
- 医療保険・社会保障のただ乗り(フリーライド)
形式上は「社長」であるため、役員報酬を極めて低く設定することで、月額わずか数千円の安い保険料で日本の健康保険に加入できます。
これを利用し、重い病気の高額な治療を受ける目的で入国し、国民が納めた保険料で賄われる「高額療養費制度」を利用した後に帰国してしまう悪用事例が国会でも問題視されました。
厚労省側は『全体の利用割合として外国人が突出して高いわけではない』と答弁したものの、こうした”制度の抜け道”が存在すること自体が不公平感を生み、厳格化への後押しとなりました。
- 税金や社会保険料の未納・逃げ得
実態のないペーパー法人が、法人税、消費税、厚生年金保険料を一切納めずに滞納したまま放置・雲隠れし、行政の徴収コストや公的財政に大きなツケを残しました。
- 地域を乱す生活トラブル
「事業をやっている証拠」を作るため、住宅街のマンションの一室でずさんな民泊を運営するケースが頻発。
深夜の騒音、ゴミ出しルールの無視、見知らぬ人の出入りなど、近隣住民との間で生活トラブルが相次ぎました。
こうした事態を受け、国は悪質なブローカーを排除するため、経営管理ビザの要件を「資本金3,000万円以上」「常勤職員1名雇用」へと跳ね上げるなど抜本的な厳格化に踏み切りました。
そしてこの「厳格化」の流れは、外国人材を受け入れる一般企業や他のビザ全体へと波及しています。
3. 2026年10月施行:在留手続き手数料の大幅引き上げ
不正を防ぐための審査体制の強化や、入管システムの維持・運用の財源を確保するため、2026年10月1日より在留資格の申請手数料が大幅に改定されます。
従来は一律6,000円(オンライン5,500円)でしたが、「許可される在留期間が長いほど高額になる段階制」へと変わります。
| 付与される在留期間 |
窓口申請 |
オンライン申請 |
| 1年 |
33,000円 |
27,000円 |
| 3年以上5年未満 |
64,000円 |
56,000円 |
| 5年以上 |
75,000円 |
65,000円 |
| 永住許可 |
一律 200,000円(旧 10,000円) |
- |
企業が外国人スタッフを雇用する場合、更新手数料を会社側が負担するケースが一般的です。
入社初期や会社の財務内容によって「1年更新」にとどまるスタッフが多い企業では、毎年1人あたり約3万円の費用が継続的に発生することになり、会社の固定コストを大きく押し上げます。
4. 外人材の雇い入れハードルはどこまで上がっているのか?
ビザ費用の引き上げと並行して、企業が外国人材を雇用・受け入れる際の「企業の財務体力」や「適格性」を問う審査のハードルも急激に上がっています。
① 赤字・債務超過企業に立ちはだかる「企業評価証明書」
技能実習生の受入れ現場では、企業が直近期で赤字や債務超過に陥っている場合、外国人技能実習機構(OTIT)から「企業評価証明書」の提出が義務付けられています。
これは、公認会計士や中小企業診断士といった外部の専門家が、
- なぜ赤字・債務超過に陥ったのか
- 資金繰りがショートする恐れはないか
- 実習生に適正な給与を支払い続けられる財務基盤があるか
を厳密に精査し、客観的に証明する書面です。
「受入れ企業の倒産や資金難で給与が払えなくなり、外国人労働者が失踪・困窮する」リスクを未然に防ぐための関門であり、財務が傷んでいる中小企業にとっては受入れそのものの大きな障壁となっています。
② 新制度「育成就労」への移行とコンプライアンス審査
従来の技能実習制度に代わり導入が進む「育成就労制度」でも、受入れ企業をふるいにかける基準はさらに高くなっています。
単に「人手不足だから雇う」ことは許されず、適正な労働環境、法令順守、そして不況下でも給与を支払い続けられる確固たる経営基盤を備えているかが、厳しくチェックされる時代になりました。
5. これから外国人材を雇用する事業者が備えるべきこと
ルールの厳格化は、悪質な業者やペーパーカンパニーを排除し、日本の社会や労働市場を守るために必要な措置です。
しかしその反面、真面目に人材不足に悩み、外国人材を採用したい中小企業にとっても雇用のハードルが上がったのが現実です。
企業側には、これまで以上に戦略的な備えが求められます。
- 財務体質の改善(黒字化と安定した資金繰り)
債務超過や赤字の放置は、更新期間が「1年」に据え置かれて毎年の手数料負担が増えるだけでなく、受入れ許可そのものが下りなくなるリスクに直結します。
- 「長期ビザ(3年・5年)」を獲得できる信用づくり
税金や社会保険料の期日内完納を徹底し、適正な労務管理を行うことで入管側からの高い信用を得ることが、結果として更新頻度とコストを抑える最大の防衛策になります。
- オンライン申請への完全移行
新料金体系では窓口とオンラインで数千円〜1万円の価格差があります。社内体制や提携する士業との連携を見直し、オンライン申請へ切り替えることが必須です。
まとめ:選別される時代へ
外国人材をめぐる日本の環境は、「人手不足なら誰でも・どこでも雇える」時代から、「法律を守り、健全な財務基盤と処遇体制を備えた企業だけが受け入れられる」時代へと移行しています。
一部の制度悪用がもたらしたツケは、入管行政全体の厳格化という形で跳ね返っています。
外国人雇用を検討している、あるいはすでに雇用している企業は、「採用の手続き」だけでなく「自社の財務状況とコンプライアンス体制が審査に耐えうるか」を今一度見つめ直し、早めの対策を講じることが不可欠です。
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参考資料
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD147MV0U5A710C2000000
https://www.moj.go.jp/isa/11_00107.html