以前のブログで、「葉酸胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低下することができるため、葉酸サプリメント妊娠1ヶ月以上前から服用することがお勧めです。」と書かせていただきました。(→妊活・妊娠に必要な栄養素は?【葉酸 ビタミン編】

 

 

 

実際この点に関しては、大分認知度が高まっていて、以前も紹介致しましたがあるアンケート調査では約88%の方が葉酸摂取の重要性を理解されていました。1)

 

 

 

 

一方葉酸が妊娠成立にどのような影響を与えるのかという点についてはあまり知られておらず、このブログでもこれについては述べていませんでした。最近、この点について記載した論文を見る機会がありましたので、この論文からの引用を中心に葉酸の妊娠成立に対する影響について今回は書かせていただきます。

 

 

 

 

 

論文の紹介からのスタートなので、いつもより硬い文章で申し訳ありません。最後のまとめで簡潔にかかせていただきます。

 

 

 

まず紹介する論文は以下です。

 

 

【タイトル】葉酸サプリメント摂取と妊娠率の関係:デンマークにおける前向きコホート試験 (Cueto HT et al. Folic acid supplementation and fecundability: a Danish prospective cohort study. Eur J Clin Nutr. 2016 Jan;70(1):66-71. ) 2)

 

 

 

 

【方法】

・2007~2011年の間に、妊娠を考えいてる3895人のデンマーク居住女性(18~45歳)を対象にインターネットで調査した前向きコホート試験をおこなった。(前向きコホート試験とは現在から未来に向かって、ある状態の要因を調べる方法で、比較的エビデンスレベルの高い(=信頼度の高い)結果を得ることができます。)

 

 

調査内容葉酸単独や葉酸含有のマルチビタミンサプリメント(MVサプリメント)の内服妊娠率の関係。

 

 

・調査期間は12カ月間または妊娠が成立するまでの期間

 

 

 

 

 

 

【結果】

3895人中2560人(65.7%)葉酸または葉酸含有のMVサプリメント内服していた。

 

・このうち2667人(68.4%)が12カ月の調査期間中に妊娠した。

 

葉酸サプリメント摂取群は非摂取群に比べて妊娠率1.15倍高かった。摂取サプリメントの内容は、葉酸およびMVサプリメント、MVサプリメントのみ、葉酸サプリメントのみの何れでも妊娠率が非摂取に比べて高いことは変わらなかった。(それぞれ1.12倍、1.20倍、1.15倍)

 

 

葉酸サプリメント使用群の中で、月経周期が不順な場合と安定している場合とで比較すると、不順な場合には妊娠率1.35倍であり、安定している場合の1.11倍より高かった。同様の比較で月経周期が27日未満、30日以上の場合の方が、月経周期が27~29日の場合に比べて妊娠率が高かった(1.36倍、1.24倍 vs 1.10倍

 

 

 

つまりこの論文からは葉酸サプリメント摂取している方が妊娠率が上が、かつ月経不順や月経周期が27日未満・30日以上の場合によりその傾向が強かったことを示しています。

 

 

 

調査対象者数も多いコホート研究ですので、この結果はある程度信頼できるのではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

その他の論文での報告について

 

葉酸の妊娠成立に対する影響については、その他にもいくつか報告があります。

 

 

 

 

①葉酸摂取により血中プロゲステロン(黄体ホルモン)が上昇し、また無排卵のリスクを低下させる。3)

 

 

 

・・・ニューヨーク西部地域で2005~2007年の間に259名の女性(18~44才)について、葉酸サプリメントの種類および摂取量と血中エストラジオール(卵胞ホルモン)、プロゲステロン(黄体ホルモン)、LH(黄体化ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)との関係について調べた結果、葉酸摂取が多い方がプロゲステロン値が有意に高く、内服している葉酸の種類では合成葉酸この傾向がより顕著だった。また合成葉酸摂取群を分析した結果、摂取量によって3群に分けた場合もっとも摂取が少ない群に比べてもっとも多い群黄体ホルモン値16%高値で、逆に無排卵のリスク64%低かった

 

 

 

(解説) 葉酸には合成葉酸天然葉酸といった種類があります。合成葉酸の方が体内での吸収率が高いことが知られていますが、この

報告でも合成葉酸の摂取量が多い方が黄体ホルモン値が高く、排卵障害のリスクが低かったとしていて、サプリメントでの合成葉酸の摂取を勧めています。かつ摂取量が多い方がこういった効果が期待できるとしていて、合成葉酸の摂取がもっとも少ない群葉酸100.9㎍/日中央値)、多い群270.6㎍/日であったとしています。この摂取量は多い群でも厚労省が推奨している400㎍/日を下回っていますが、

アメリカでは穀類100gあたり140㎍の葉酸を添加することが法律で義務付けられており、結果葉酸の総摂取量としては、平均505.5㎍/日となっていて十分摂取されていることが分かります。

 

 

 

 

 

 

 

②体外受精症例では、葉酸摂取した群は非摂取群に比べて卵胞液中のホモシステイン濃度が低下し、卵子の成熟度が上昇する傾向にあった。4)

 

 

・・・37人体外受精症例(平均年齢34.4歳)について、採卵当日に葉酸サプリメントを内服している群とそうでない群に分けて、卵胞液中の葉酸濃度ホモシステイン濃度および平均卵胞径を測定したところ、葉酸内服群では卵胞液中葉酸濃度高値で、ホモシステイン濃度低値であり、またホモシステイン濃度が高いと平均卵胞径が上昇することから、卵子の成熟度に葉酸摂取が貢献している可能性が分かった。

 

 

 

(解説)葉酸を摂取すると血中のホモシステインという物質の濃度を低下させます。このホモシステインが上昇すると動脈硬化、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを上げるとされています。この報告では葉酸内服により血中だけでなく卵胞液中ホモシステイン濃度が低下して、かつ卵子の成熟度が上がるとしています。(卵胞液中のホモシステイン濃度が高いと、卵胞径が大きいという関係にあり、この点から卵子の成熟度にも寄与しているとしていますが、その詳細は不明としています。)

 

 

 

 

 

 

③葉酸を含むマルチビタミンサプリメントの摂取は排卵障害による不妊のリスクを低下させる。5)

 

 

・・・438名の排卵障害の女性を8年間にわたり追跡調査したところ、葉酸を含むマルチビタミンの服用頻度が高いほど排卵障害が起こりにくいという関係にあった。この結果にはマルチビタミンの中に含まれる葉酸が影響している可能性がある。

 

 

(解説)①の論文に近い内容ですが、葉酸のみでなく葉酸含有のマルチサプリメントも妊娠率向上に有効な可能性があるとしていて、

内服するのであれば葉酸含有のマルチサプリメントがおすすめになります。

 

 

 

 

 

 

☆彡まとめ☆彡

 

・葉酸の妊娠前よりの摂取は胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低下するだけでなく、、

 

→・排卵障害や黄体機能不全の改善特に月経不順の方には有効な可能性がある。

  ・体外受精における卵子の成熟度を上げる可能性がある。

 

 

葉酸を含むマルチビタミンサプリメントがこういった効果をより高める可能性がある。

 

・摂取する葉酸の種類は合成葉酸がおすすめ。

 

 

 

 

 

 

葉酸の妊娠前からの内服が必要なことは良く知られていて、妊娠を考えている方には必須になります。一方でこの葉酸摂取が、排卵や黄体機能といった妊娠に重要な因子にも好影響を与える可能性があるため、この点からもより摂取がお勧めになることが分かります。

 

 

 

葉酸を含むマルチビタミンサプリメントはドラッグストアなどで手軽に入手可能ですし、当院でも取り扱いがあります(→エレビットHP)ので、妊娠をお考えの方や不妊治療中の方は是非はじめてみてください

 

 

追記:サプリメント製品の種類は問いませんが、含まれている葉酸の種類合成葉酸であることは確認していただいた方がよいと思います。

 

 

 

 

 

【文献】

1)[バイエル薬品] 「妊活・妊娠と夫婦に関する実態調査」 「葉酸摂取の重要性」認知88% "妊娠前" 正しく理解は半数強. DRUG topics (2431): 9-9, 2017

2)Cueto HT et al. Folic acid supplementation and fecundability: a Danish prospective cohort study. Eur J Clin Nutr. 2016 Jan;70(1):66-71. 

3)Gaskins AJ et al. The impact of dietary folate intake on reproductive function in premenopausal women: a prospective cohort study. PLoS One. 2012;7(9):e46276.  Epub 2012 Sep 26.

4) Boxmeer JC et al. Preconception folic acid treatment affects the microenvironment of the maturing oocyte in humans.  Fertil Steril. 2008 Jun;89(6):1766-70. 

5) Chavarro JE Use of multivitamins, intake of B vitamins, and risk of ovulatory infertility. Fertil Steril. 2008 Mar;89(3):668-76. Epub 2007 Jul 10.