年明け最初の更新が4月となってしまいました。

 

 

前回の更新後に一都三県で再度緊急事態宣言が発令され、一方でコロナワクチン接種が開始となるなど新型コロナウイルス感染に関する大きな動きがありました。

 

 

実際に現在外来での患者様より多数質問いただくのは、コロナワクチン接種と妊娠や不妊治療との関係についてです。

 

 

そこで今回は短めではありますが、コロナワクチンと妊娠や不妊治療との関連について産婦人科医の立場から書かせていただきます。

 

 

 

 

 

コロナワクチンはRNAワクチン

 

 

ワクチンには生ワクチン(風疹麻疹ワクチン、水痘ワクチンなど)、不活化ワクチン(インフルエンザワクチンなど)、タンパクサブユニットワクチン(肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチン)などいくつかの種類に分類されます1)。

 

 

この中でコロナワクチンはRNAワクチンに分類され1)、投与するとコロナウイルス(SARS-COV2)のスパイク蛋白という部分に対する抗体が体内で産生され、コロナウイルス感染を防ぎます。

 

 

RNAワクチン自体は新型コロナ発生以前から、一部のがん(悪性黒色腫、腎臓がん、肺がんなど)で臨床研究が進んでいました2)。

ですからコロナワクチンに対して初めて導入された技術ではありません

 

 

今回新型コロナウイルスに対してRNAワクチンが選択された経緯は、RNAワクチンではウイルスの遺伝子配列が判明すればワクチンの設計が比較的容易で、そのワクチンを迅速に多量生産できるという特徴をもっているため2)だとされています。

 

 

 

 

 

コロナワクチンは数日で細胞質外に排出される

 

 

RNAワクチンは細胞質内に取り込まれ、先ほど書かせていただいたようにスパイク蛋白に対する抗体を作成しますが、取り込まれてから通常数日で細胞質外に排出されるとされます3)。

 

 

少し専門的な話になりますが、取り込まれたRNAは細胞の中の核といわれる部分には入りません。核には遺伝情報であるDNAが詰まっていますが、RNAワクチンはこの部分に作用しませんので、遺伝情報に対して影響も及ぼさないと考えられています3)。

 

 

 

 

 

妊娠中のワクチン投与は不可とはされていない

 

 

現時点で妊娠中または不妊治療中の患者さんへのワクチン投与についての安全性や有効性について評価は定まっていません

 

 

しかし、海外では実際に妊婦さんにコロナワクチンを投与したデータが集まってきています。

 

 

例えばアメリカの疾病対策予防センター(CDC)によるV-safeというワクチン投与後の追跡調査システムによると、アメリカでは2021年3月22日時点で60,442人の妊婦さんにワクチンが投与されており、うち3,612人がこのシステムで追跡調査されています。

 

 

 

このCDCの報告では2021年3月1日時点でワクチン投与した1,815人の妊婦さんが追加調査されていて、妊娠の経過は死産、妊娠高血圧症候群、子宮内胎児発育遅延、早産や胎児奇形率など全ての調査項目でワクチンを投与していない患者さんと差がなかったとしています4)5)。

 

 

 

日本ではそもそもワクチン普及率がかなり低い状況ですので、妊婦さんに対するワクチン報告は現時点でありません

 

 

 

日本では2021年1月27日に日本産科婦人科学会と日本産婦人科感染症学会が、「COVID-19 ワクチン接種を考慮する妊婦さんならびに妊娠を希望する方へ」という声明を発表しています。

 

 

 

この声明を要約すると

 

・ COVID-19 ワクチンは、現時点で妊婦に対する安全性、胎児および出⽣児への安全性は確⽴していない

 

・流⾏拡⼤の現状を踏まえて、妊婦をワクチン接種対象から除外することはしない

 

・器官形成期(妊娠 12 週まで)は、ワクチン接種を避ける。

 

・妊婦のパートナーは、家庭での感染を防ぐために、ワクチン接種を考慮する。


妊娠を希望される女性は、可能であれば妊娠する前に接種を受けるようにする。(生ワクチンではないので、接種後⻑期の避妊は必要ない。) 

 

 

となります。

 

 

 

これらの報告や声明から、妊婦さんへのワクチン投与に対する妊娠への影響は確立していないものの、必ずしも妊娠中の投与を不可とはしていないことが分かります。

 

 

 

 

 

妊娠中の投与はとりあえず避け、不妊治療中の投与は非妊娠時におこなう(私見)

 

 

 

 

今までお示ししたデータからはコロナワクチンは妊娠に対して影響を及ぼさない可能性が高いように思われますが、まだ確立したデータではありません。このため現時点では妊娠中の投与は見合わせた方が良いのではと考えています。

 

 

一方産科婦人科学会の声明にもあるように、不妊治療中であっても投与後長期の避妊は必要ないと考えます。

 

 

コロナワクチンが数日で細胞質外に排出されることも、長期避妊が不要なことの根拠になると思います。

 

 

 

 

このため当院でのコロナワクチン接種に関しての方針

 

 

・コロナワクチン初回接種時には妊娠していないことを確認する。

 

・初回および2回目の接種からその後の月経までは避妊をする。

 

・不妊治療は2回目の接種後の初回月経より開始する。

 

 

 

としています。

 

 

ただしこれは2021年4月11日時点の情報をもとに決定した方針であり、自分の私見ですので、今後方針を変更することもあり得ます。

 

 

また仮に接種後に妊娠が判明した場合にも、それほど大きな心配は不要であろうと個人的には考えています。

 

 

 

 

 

 

☆彡まとめ☆彡

 

 

 

 

・コロナワクチンはワクチンの中でRNAワクチンという種類に分類される

 

 

・ワクチンは接種数日で細胞質外に排出され、遺伝情報をもつDNAには影響しないとされる

 

 

・妊娠に対する影響は確立していないものの、妊娠中のワクチン投与は不可とはされていない

 

 

・妊娠中の投与はとりあえず避け、不妊治療は接種後初回月経以後に開始する(私見)

 

 

 

 

1)Lurie N et al. Developing Covid-19 Vaccines at Pandemic Speed., Saville M, Hatchett R, Halton J. N Engl J Med. 2020 May 21;382(21):1969-1973. 

2)医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス,PMDRS,50(5),242 ~ 249(2019)

3) Moderna. mRNA-1273. Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee

4)内田舞 先生 ワクチン徹底解説!『妊娠中の接種・米国での経験を基に解説』

5)Tom Shimabukuro, MD, MPH, MBA CDC COVID-19 Vaccine Task Force Vaccine Safety TeamCOVID-19 vaccine safety update Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) March 1, 2021