久しぶりの更新となります。(いつも遅筆で申し訳ありません。)

 

 

 

酷暑から少し秋めいた季節となりましたが、皆さんお変わりありませんでしょうか。

 

 

 

前回新しい培養方法であるタイムラプス培養(→新しい胚培養~タイムラプス培養~について)について記事をかかせていただきました。

 

 

体外受精ではこのような治療に直接かかわる部分も重要ですが、一方でサプリメントを中心とする栄養に関するサポートも治療成績の向上には重要となります。

 

今回当院でも取り扱いサプリメントがあり、卵巣機能改善効果を持つ4)5)とされる「レスベラトロール」という物質について記載させていただきます。

 

 

<※尚今回の記事は、当院取り扱いサプリの製造元の株式会社パートナーズ(ブランド名:BABY &ME)様からいただいた資料を参考にまとめております。>

 

 

 

 

レスベラトロールとは?

 

 

レスベラトロール(resveratrol)とはポリフェノールの一種であり,ビタミンCやEと同様に抗酸化作用があり、ピーナッツやアーモンドの皮、またブドウの果皮に含まれることが知られています。2)

赤ワインに多く含まれている物質であることでも有名です。

 

 

ちなみにポリフェノールにはいくつかの種類があり、フラノボイド類として分類されるのが、緑茶に多いカテキンや玉ねぎに含まれるケルセチン、ベリー類に多いアントシアニン類などです。その他には、コーヒーに含まれるカフェ酸、ゴマのセサミンなどにも含まれます。3)

 

 

レスベラトロールにはマウスなどの研究において、寿命延長作用のほか、抗炎症作用、抗酸化作用、強壮作用、抗糖尿病作用、肥満抑制作用、学習・記憶能力の改善効果などが報告されています。1)(図1)

 

 

一方不妊治療の領域では、レスベラトロールの卵巣機能低下に対する予防効果や4)

エイジング卵子への改善効果5)が注目されています。

 

 

 

 

レスベラトロールの卵巣機能改善効果について

 

 

レスベラトロールの卵巣機能低下を予防に関しては

 

若齢マウス(8~12週齢)にレスベラトロールを含む飲料水を12ヶ月投与したところ、卵胞数の増加や、加齢関連遺伝子が若齢マウスと同等に維持され、卵子の質や、体外での胚発育が改善した4)

 

という報告があります。

 

 

一方、エイジング卵子への改善効果については

 

 

加齢マウス(25週齢)を47週齢になるまで飼育し、その期間のうち1~22週間の範囲で3群に分けレスベラトロールを投与し体外受精をおこなったところ、着床率・生児獲得率が有意に改善し、流産率は有意に低下した(いずれも22週群)5)

 

とされており、レスベラトロールにより加齢状態からも妊娠率が上昇したという論文発表になっています。

 

 

 

 

レスベラトロールがもつ効果のメカニズム

 

 

レスベラトロールの卵巣機能改善について、この作用がどのようなメカニズムで起こるのかについては、完全に解明されているわけではありませんが、長寿化遺伝子、抗老化遺伝子といわれるサーチュイン遺伝子(SIRT)が活性化していることが一つの理由とされています。5)

 

 

サーチュイン遺伝子には7種類(SIRT1~7)ありますが6)、レスベラトロールはSIRT1を中心にこれらの遺伝子を活性化させる1)ことが知られています。

 

 

先ほど紹介したエイジング卵子の論文では、血液中のレスベラトロール濃度が高いと、卵巣内のSIRT1,3,4,5,7が上昇した(mRNA)5)としていて、レスベラトロールが卵巣内でこの遺伝子を活性化することが卵巣機能改善につながっている可能性が示されています。

 

この論文ではさらに、レスベラトロール投与で卵母細胞中のミトコンドリアの膜電位やATP産生が上昇している5)=ミトコンドリアが活性化しているとしています。

 

ミトコンドリアは細胞のエネルギー源であり、この機能低下が卵子加齢の一因とされますから、ミトコンドリア活性によりアンチエイジング効果が発生しているとも考えられます。

 

 

 

赤ワインを飲めば良い?

 

 

レスベラトロールを含む代表的な食品は赤ワインです。

では、赤ワインを毎日飲めばこのような卵子に良い効果が期待できるのでしょうか。

 

過去の研究から、レスベラトロールの効果が発揮される卵巣内濃度は0.001~1.0μMと考えられています。7)8)(難しい単位が出てきますが無視して数値だけ注目してください。)

さらに非肥満の健康な女性に75mg/日のレスベラトロールを12週間内経口投与した研
では血中濃度が0.48μMであったというデータなどを合わせて考えると、不妊治療女性に投与するレスベラトロールは1日50~150mgではないかと考えられています。

 

 

一方レスベラトロールは赤ワイン1杯に1mg程度しか含まれていないとされ9)、仮に1日50mg摂取しようとすると、赤ワインを1日50杯飲まなくてはならずとても現実的ではありません。

 

従ってレスベラトロール摂取という観点ではサプリメントの内服が現実的になります。

 

(レスベラトロールの1日摂取推奨量については、今回のデータとは異なるいくつかの報告があることも注釈として記載させていただきます。)

 

 

 

 

☆彡まとめ☆彡

 

 

レスベラトロールとはポリフェノールの一種で、赤ワインに多く含まれる物質として知られている

 

・レスベラトロールには卵巣機能改善効果があるとされている

 

・卵巣機能改善効果のメカニズムは

①抗老化遺伝子といわれるサーチュイン遺伝子(SIRT)が活性化

②ミトコンドリアが活性化

することであるとされる

 

1日50~150mgのレスベラトロール摂取するためには、赤ワインでは不可能でサプリメント内服が推奨される

 

 

となります。

 

 

当院でもレスベラトロールのサプリメント(→BABY&ME  レスベラトロール) 取り扱っており、お勧め出来る患者様にご案内させていただいております。

 

 

 

 

文献)

1)赤穂榮一 科学的根拠に基づくレスベラトロールの評価と展望 薬局 67(11): 3151-3158, 2016.

2)福井浩二 レスベラトロールの非抗酸化作用について ビタミン 90(5/6): 286-289, 2016.

3)岸本良美 ポリフェノール カレントテラピー 34(6): 599-599, 2016.

4)Liu M et.al Resveratrol protects against age-associated infertility in mice.
Hum Reprod. 2013 Mar;28(3):707-17. doi: 10.1093/humrep/des437. 

5)Naoki Okamoto et.al.Short-term resveratrol treatment restored the quality of oocytes in aging mice  AGING 2022, Vol. 14, No. 14

6)後藤隆洋 大阪河崎リハビリテーション大学紀要 16: 9-25, 2022

7)Mei-Ju Liu et.al Resveratrol improves in vitro maturation of oocytes in aged mice and humans Affiliations expand   DOI:10.1016/j.fertnstert.2018.01.020

8)Moreira-Pinto B, et al. Low Doses of Resveratrol Protect Human Granulosa Cells from Induced-Oxidative Stress.Antioxidants (Basel). 2021. PMID: 33916585 

9)日本薬学会 環境・衛生部会HP