子どもの貧困対策PT視察レポート(足立区①) | 今井アツシオフィシャルブログボクラノミライPowered by Ameba

子どもの貧困対策PT視察レポート(足立区①)

さて、昨日の続きです。足立区にヒアリングに行ったまとめをします。

・経緯、概要
平成2741日に組織ができ、5名がスタッフとなっている。生活困窮者対策と兼務の職員が1名となっており、通常は4人で動いている組織。組織自体に予算があるわけではなく、調整機能を担っている。

計画策定当初は268月に国の大綱が出た段階で、子どもの貧困対策に取り組むに
あたってのプロジェクトチームを立ち上げた。その時は、福祉部を中心に関係書簡を巻き込んで動き出した。
今の区長は3期目だが、1期目当選時から「私は子育て支援がやりたいんじゃなくて、子ども支援がやりたい」という気持ちを持っていた。施策が子どもに届くことをやりたいという方針だと推測している。

2期目になったときに、足立区にはボトルネック的課題が浮き彫りになったと区長が言
っていた。それは、治安・学力・健康・貧困でこれを解決しないと足立区が正当に評価さ
れない。

 足立区は福祉需要が多く、民生費は50%を超えている。都営住宅も多く、生活保護率は
23区で2番目となっている。

健康については、23区で健康寿命が一番短い、学力についても23区で一番低い。治安に
ついては、自治体ごとの犯罪認知件数が23区で一番多いと言われている。悪い数字のイメ
ージでは正当な評価が得られない。優秀な子もいれば、裕福な家庭もある。犯罪件数も総
件数だけで人口比・面積比では1番ではない。

治安対策については、かなり減らしてきており、すでにワーストを脱却している。


区長がぽろっと言ったのは、「ようやく本丸が見えた。」ということ。一番底辺に流れているのは、子どもの貧困対策こと。だから、治安・学力・健康もそうだったのではないかという認識、きちんと取り組まないといけない。区長自ら本部に出るという意向だったので、途中から区長にも参加してもらった。


平成2612月になっても、議論がまとまらず計画が立たない状況だった。区長としては平成27年度予算に反映したいという意向だった。このままでは、予算が組めずに、計画も柱立てもない状態だったので、部長査定で計画を構築した。


子どもの貧困対策には特効薬はない。いち自治体でできるものでもない。行政体だけでもできない。地域・民間企業・NPOなども巻き込まないといけない。


 基礎自治体としてどこに力を入れないといけないのかと考えたときに、財源にも限りはある。基本的にはまずは、学齢期だと結論づけた。足立区内の子どもは区立小学校にほとんど入る。国も学校をプラットフォームと言っている。

 もう一つは、就学前のとろこに力をいれるべき。困っている人を救う、陥らないように予防する、連鎖を断つ3つの柱がある。「救う」基本は所得格差の是正であり、社会保障制度や税制の改革は基礎自治体ではできない。


 高校の中退が問題になっているが、職業間教育など高校カリキュラムは都道府県の役割。基本的には学齢期と就学前が基礎自治体として取り組むべき予防施策となる。

 当初計画がまとまらなかったのは、官庁の中での縦割りが問題だったことと子どもの貧困というワードがきついためだった。貧困施策とかぶせられると学力施策とならなくなってしまうのでは?貧困対策としてやるのかと役所の中でなってくる。サービスを受けている区民にとっても貧困対策なの?という話になりかねない。そういった懸念もあり、なかなかまとめきれなかった。

 区長指示で各所管に事務局をおいてもまとまらないので、政策経営部に所管を置きなさいという形になり、政策経営部子どもの貧困対策というポ
ジションを作った。

 27年度から足立区子どもの貧困対策本部の下に「健康・生活 作業部会」や「教育・学び作業部」を設置し、学識経験者も呼び会議を行っている。市町村には計画の策定義務はないが、計画を作って進めていきたいので、率直な意見が欲しいというこ
とで、学識経験者にお願いに行ったところ、足立区がそこまで頑張ってやるというならということで集まってくれた。


 職員には会議を公開し、事前に届け出が必要ということで、自分たちでボランティア的にやりたいという職員もいた。そういう人間は見にきてもいいという形。


・基本的な考え方

基本理念としては、自己責任論にしないこと。生き抜く力、非認知能力も含めて力をつけて欲しい。子どもの貧困対策を生育環境全般に渡る複合的な課題と捉え、広がりをもたらすために、理念の中に盛り込んだ。

貧乏と貧困は違うということ。貧乏は経済的に苦しいことで、貧困はそれ以外にも沢山ある。だから貧困といっている。そのような話をしていかないと見えない貧困に気がつかない。

・取り組み姿勢について

 子どもの貧困対策にまちづくり部は関係ないというかもしれないが、都営住宅・URの建て替え時に子どもの居場所作りができる。公園の整備だけでなく、ある公園を時間を時間を区切りキャッチボール大会をやった。野球連盟と区と学校のコラ
ボレーションをした。呼びかけの仕方を工夫すれば母子家庭の男の子はキャッチボールをほとんどやっていない状況がある。社会的に孤立していても、そういう場で出てくれば子ども同士や野球連盟の大人と知り合いになれる。まちづくり部隊も
色々と工夫ができるため、全庁体制で取り組みを行っている。

学校はプラットフォーム=人・物・情報が行き来している場で課題を見つけやすい場所である。学校がコントロールするというのは今の体制では無理がある。貧困施策として上からかぶせるのではなく、学力・教育施策でいいが、その横にちょっと貧困の予防になるという位置付けもつけさせて欲しいという形で貧困という言葉の強さがカバーできる。


・足立区の現状

足立区の現状は、人口構成がお神輿型から騎馬戦型、おんぶ型に変わってくる。おんぶしている方が倒れたらおんぶされる方も倒れる。おんぶする側に投資をしないと共倒れになる状況。全体状況を共通認識とするためにも数字を出している。


生活保護受給の18歳未満人口は増えており、就学援助は全国平均よりも多い。全国学力・学習状況調査は教育委員会がデータを出したがらない。京都府では所得階層を3段階で示しており、学力との相関関係が出ている。学者間でも議論をしていただき、これは必要という話になった。抑えるべき数字だということで、教育委員会にも納得いただいた。学者からは、平均点を挙げるなら優秀者を伸ばせばよく、格差が広がる結果となる。学力低位の割合と上位の割合をきちんと抑えろと言われた。

区内高校の7割が足立区民。高校は個人情報の壁があり、中退者名簿も出してくれない。名簿がないので、アウトリーチができないという状況。高校の中退は1年生の夏休みまでが勝負。学年末に出席日数が足りなくて中退ということもあるので、高1クライシスという考えを打ち出し連絡会を作った。情報のやりとりについてどうするかも検討している。

 高校側からは「不本意入学」という言葉があると言われた。進路指導の先生が偏差値重視になっていないかと反省をした。本人にも親にも普通科信仰・偏差値重視というのがなかったか。定時制に行くなら普通科にしろなどという価値観が親にも本人にもなかったか。課題を色々と考えないといけない。

 早産の割合も算出した。ゼロにはできないが少なくはできるとドクターに言われた。栄養摂取や喫煙について、妊娠時から働きかければ改善はできる。子どもの貧困対策で医療費の自己負担が多くて医者にかかれなかったというデータは出ているが、東京23区は医療費助成で自己負担がない。それなのに、虫歯の未処置の割合が多い。昨年虫歯だと指摘した子が同じところが1年たっても虫歯だった。

医師法の関係で検診はできても、治療はできない。「乳歯だったら抜けちゃうからいいでしょ。私もそうやって育ってきた。」という過程だった。学ぶべき知識や体験が抜け落ちている過程があり、まさしく貧困の連鎖が起こる。そいうった部分に
対してケアをしていくのが基礎自治体がやる予防策だと考えている。

・指標の選定

24項目の指標をピックアップした。目標数値はこれから立てる。京都府のように就学援助と学力データをくっつけて見える化したいが、くっつけるのは個人情報の目的外利用となり、手順を踏まないとダメ。今は持っているデータはくっつけられないので、表示ができない状況。就学援助の資料に統計処理するという項目を入れて、チェックをしてもらい、本人同意によるデータ活用をしたい。

・施策の分類

施策の分類として、経済的状況で対象を絞り込んだものと経済的状況以外で対象を絞り込んだものがある。子供たちにスティグマを与えかねない部分については配慮している。一般化すべきものと対象を絞り込むものをしっかりと切り分けないといけない。財政効果のみを追求すると大変なことになる。


・居場所作り

居場所作りについては、いろんなパターンが必要だと考えている。役所で全部をやると
いう発想ではない。役所でやると費用対効果を求められたり、ワンパターンの既製品にな
りがち。大きな施設に入っていける子もいれば、そうではない子もいる。食の支援が必要
な子もいれば、ふれあいが必要な子もいる。民間にお願いしているのは、ブームだからっ
て手を広げないでくれということ。信頼関係を作る事業なので、12年でやめたというこ
とではダメ。長くやる工夫をしてほしい。