こどもに読み聞かせた本ではないですが、自分が子供の頃から算数、数学に対して苦手意識をずっと持ってきて、数学の面白さを知りたいなと手に取った本です。 国家の品格の藤原正彦さん、博士の愛した数式の小川洋子さんの対談形式の本から。少し紹介させてもらいます。
世にも美しい数学入門
藤原正彦/小川洋子
世にも美しい数学入門 (ちくまプリマー新書) [ 藤原正彦 ]
小川さん:
数学的な発見をするためには何が大事なんですか?
藤原さん:
数を発見するためには、数を転がして、ころころと手のひらでもてあそぶことが1番重要なんです。
足したり、引いたり、ひっくり返したり、想像したりね。そうすると、もしかしたらこうかなという、ちょっとしたきっかけが見つかり、そこから大胆にいろいろ実験してみて本当にそうだったらいよいよ証明にかかる。
証明になったらたいていの場合、もう赤子の手をひねるようなものです。
そこまでいろいろ弄ぶんですね。
弄ぶというのは独創に非常に良い影響を与えます。
例えば美しい文章を読んで理解していても、その人の宝石にならない。暗唱して、思い出して口ずさんだり、言葉を弄ぶというのが重要だと思いますね。
だから図形で発見したければ、図形を弄ぶことです。
ああでもないこうでもないと、いろいろ図形を描いて考えながら遊ぶことですね。
数学の天才なんかみると、わりあい弄ぶことをやっているんですね。算数とか数学とは限りません。漢文の素読をしたりとかね、物語をお母さんに読み語りしてもらうとか。たとえば、大正時代に世界の最先端に一気に追いついた、高木貞治という岐阜県生まれのものすごい数学の天才がいるんです。
このあいだ、ちょっと岐阜に高木貞治を調べに行ったら、幼少の頃は算数なんて何にもしていないんですね。3歳、4歳、5歳、6歳とか漢文の素読とか物語ばかり読んでるんです。
それで全部暗記しちゃったと。
お母さんによくお寺に連れて行かれて、お寺のお坊さんのとなえる親鸞上人のなんとかというお経まで暗記しちゃったり。あれが独創性に繋がったんだなって思っていました。
暗唱というのは非常に独創性にかかわることと思います。さっきいったラマヌジャンも似ています。お母さんが何千ページにも及ぶ叙事詩、ラーマーヤナとかマハーバーラタの大部分を暗記していて、幼いラマヌジャンにしょっちゅう聞かせていた。インドではあれは口から口へと伝わっていったものらしい。それで彼も暗唱しちゃったわけです。母親のように、いつもそれを口づさんでいたのではないかと思います。
小川
最近はゆとり教育などと言われて暗記することが否定的に扱われていますけれど、違うんですね。
暗記することで人は言葉や数を宝石に変えられる。それは人間にとって絶対に必要な教育です。