無口で厳しい父。

昔から、勉強やスポーツが

何でも一番だった父


子供の頃から物知り博士と

言われて有名だった父。



『こんな事も知らないのか!』
『そんな事も出来ないのか!』
『お前に出来るわけない!
やめてしまえ!』

と言って、よく怒鳴られた。



誉められた事はなかった。
とても怖い存在だった。



そんな父が… 
 若い頃に、スポーツでの事故で、障害を負っていた。

しかし、

障害者手帳はいらないと言い、普通に会社勤めをして、
普通に車も運転していた。

利き腕が使えないのに…。

私は物心がつくまで
気付かなかった。

弱音ひとつ吐かないから
分からなかった。

どれだけの努力と苦労をしてきたか、考えることもなかった。


子供だった私は、
「どうして手が悪いの?」と
聞いてしまった事がある。

すると父は
『悪くない。不自由なだけだ。』と言った。


子供ながらに
父を傷付けてしまったと思い、その時はすごく反省した。

そう。

不自由なだけ…。


いつも朝早く会社へ行き、
夜中12時を過ぎてから
帰って来る父。

顔を合わせる事は、なかった。



でも、本当の父は
誰よりも優しかった。

家族を養うために
人の何十倍も努力と苦労を重ねて私たちを育ててくれた。

父にとっては、
お金を稼ぐこと=1番の愛情
だったのだ。

私の求めてる愛情とは、
少し違っていた。

でも、今はわかる。

愛情を表現する方法が、
私とは違うだけだったと。

無口で気難しく見えたのは、
辛いのを我慢して
一生懸命働いてくれてたから。

でも、そう気付いたのは
随分と後になってからだった。


そして、今はたくさんの病気を抱え寝たきりになっている。

もう長い間、会っていない。


元気になって、
実家に帰らなきゃ!!

毎日そう思う。