秘蔵ワイン1万8000本競売/仏トゥール・ダルジャン | 金谷全朗の印象光景・ハッピーがそこにある!
【12月6日 AFP】歴史上の人物や富豪らが愛でたビンテージ・ワインに、フランス革命以前に瓶詰めされたコニャック--16世紀に創業した世界で最も古く有名なパリの名門料理店「トゥール・ダルジャン(Tour d'Argent)」が7、8日、秘蔵の最高級ワインやコニャックなど計1万8000本を競売にかける。

 若き3代目オーナー、アンドレ・テライユ(Andre Terrail)氏(29)は「わたしも自分で買って飲むことができなさそうなワインがある」と語る。

 ワインセラーに新たに購入するワインのための場所を空けるため、競売を決めた。セーヌ(Seine)川を見下ろすノートルダム(Notre Dame)寺院の横に1582年の創業から4世紀。世界最大級にして史上有数といわれる地下2階分の巨大ワインセラーには、古くは200年ものから、ワインやスピリッツ類43万本がぎっしり貯蔵されている。

 シェフ・ソムリエのデビッド・リッジウェイ(David Ridgway)氏は、英国出身ながら完ぺきなフランス語で、この膨大な高級ワイン・コレクションの歴史のページをくくることができる。1981年以来、セラーの管理を任されてきたリッジウェイ氏は、秘蔵の品々と別れるのは正直、つらいことだと惜しむ。

 トゥール・ダルジャンはその歴史や料理はさることながら、ワインリスト自体も必見の価値がある。重さ8キロ、400ページのリストには計1万5000本が記載されている。テライユ氏は「父が尽力して残した遺産。わたしも次の世代に引き渡さねばならない。このコレクションを生かし続け、このうえに新たなものを築いていかなければ」と決意する。

 最先端のフランス料理からは遠いが、映画監督のウディ・アレン(Woody Allen)氏やペドロ・アルモドバル(Pedro Almodovar)氏、作家パウロ・コエーリョ(Paulo Coelho)といった現代のパリ通セレブたちに、トゥール・ダルジャンは熱愛されている。

 今回の競売を手がける競売商ピアザ(Piasa)によると、ワインなどの落札予想価格は1本につき10~5000ユーロ(約1300円~67万円)で、落札総額は100万ユーロ(約1億3000万円)に上るとみられている。いずれも醸造業者から直接買い付けたもので、これまで市場に出回ったことは一度もない。

 競売にかけられる中で最古の酒は、フランス革命前の1788年のコニャック「クロ・デュ・グリフィエ(Clos du Griffier)」で、このコニャックの売り上げは慈善事業に寄付される。