赤塚不二夫さんと最初の出会いは、彼の飼い猫「菊千代」を撮る打合せで自宅に伺った時である。それは J RのTVコマーシャルで菊千代が突然旅に出る、という粗筋だった。
のびのびと手足をのばし仰向けに寝る特技と、凛としたルックス、撮影時に人見知りをしない、そして何よりも赤塚不二夫家の愛猫である事から数々の取材をこなし、菊千代名義の通帳にはギャラがかなり貯まっていたのだ。
その菊千代に、我々CMチームが出演依頼とギャラの贈呈式。
その光景の宣材写真撮りと、後日に菊千代を撮影するアトリエ前のロケハン、そして赤塚さんとの打合せ。当日はそれらの予定もあっと言う間に終った。
初対面の時からグラス片手にニコニコして話しかけてくれる赤塚さん。
すぐ側の冷蔵庫にはビールがギッシリ!
また、階段の通路には予備のビール箱が積み重なっている。
我々も車座になってビールを飲み出すと、その後は楽しくも創造性豊かな話が膨らみ、昼の飲み会は続いていった。
もちろん後日の菊千代の本番も問題なく済み、作品の上がりも充分のものであった。
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次に赤塚さんとの仕事は都内の撮影スタジオだった。
当時、僕はタレントの作品も多く、タモリさんでも、 J R、週刊TVガイド、カード会社、公共広告…等々、かなりの数のCMを撮っていた。
そんな関係で、赤塚さんとタモリさんツーショットの新しいテレビCMの依頼であった。
赤塚さんはタモリさんを見いだし世話をした人でもある。
仲の良い二人は現場の息もピッタリ、撮影は盛り上がりテンポ良く進展した。
あえての酒場チックな空気感。
飛び出す赤塚さんの突飛なギャグとアイディア。
そこにタモリさんの絶妙なセリフと間。
才能有る二人のアドリブで何とも云えない世界が創り上がった。
今でも僕は、それを撮影しその場のフンイキに浸れた事に喜びを感じている。
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最初に出会った時に、すでに前からの知り合いのような感覚にさせる赤塚不二夫さん。
誰にでも同じ態度で接し、自分の普段の言葉で話し、人を引きつける個性と人間的魅力たっぷり。
頭が下がる思いをした、サービス精神の豊富さ。
素晴らしい天真爛漫の笑顔!
作品にもご自身にも魅力溢れた赤塚不二夫さんが逝去された・・・
2008年8月2日、72才
こころより、お疲れさまでした!
ZenRo~