
モニュメントバレーの入口にあたる、小さな町カエンタ。
目立つのは数軒のホテルやハンバーガー店、ガソリンスタンド。
テレビCMやムービー撮影の時には、そのホテルでナバホ・インディアンのロケ地案内人やスタッフと合流するのだ。
その周囲に広がるアリゾナ・デザート地帯。
荒野には、レンガ色で印象的な岩山。
そして点在する巨大岩のアーチやドーム、不思議な形状の岩石、岩盤の壁画。
何度訪れても毎回、感動と大地からのエネルギーを貰える場所である。
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そのカエンタの町からは、かなり奥に入り込んだ場所で撮影が始まった。
大掛かりなアドベンチャー撮影で、機材やスタッフも相当に多い。
ロケ地は、ジープでの奥地観光ツアーさえも入って来ないエリアにしてある。
広い遠景シーンが必要であり、フレームに人や車が入り込むと、それが外れるまで延々と時間がかかるからなのだ。
そこで独りはぐれてしまったら、生還はそう簡単では無いだろう場所である。
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大きな撮影は、それなりにキツかったり大変だったりが当たり前。
でも、楽しさはそれ以上なのだ。
例えば、スムーズな撮影進行のための配慮。
四駆の大型ケータリングカー。
天幕を張った荒野の仮設レストランにテーブルセット。
そうそうは、このシチュエーションは味わえない。
毎回工夫された、料理人自慢のフルコース料理と豊富な果実や飲み物。
前菜からデザートまでのハリウッドスタッフとのコミュニケーションは、快適ランチのハッピーな時間。
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ランチの後、大きな奇岩の裏の砂地に足を踏み入れた。
普段、人はまず来ないであろう場所。
そこで目に留まった、砂地の小さな世界。
野花と枯れ小枝が創りだす美。
ここは通り抜ける爬虫類や野生動物の眼には、どう映るのだろう。
水のボトルを片手に、しゃがみ込んだ。
その俯瞰の角度と砂のレンガ色から、浮かび上がってきた少年時代の印象と光景。
初めてオリンピック競技場を訪れた日のワクワク感。
スタンド最上部から見た、陸上トラックの鮮烈なアンツーカー色。
風で国旗掲揚ポールにロープが当たり、ビーンビーンビーンと音が響いていた・・・。
