
パーンと広がる青い空。
片隅には小さなポッカリ雲。
海岸道路、オープンカー。
スレンダーなベトナムモデル、鮮やかドレスとアクセサリー。
ビーチは人影少ない、オフシ-ズン。
オシャレな海岸シーンを演出しての撮影は、快適なシチュエーションが揃った。
ホーチミン市(サイゴン)から車で2時間、
サイゴン川を下る高速船ならもっと速く、1時間半で着く海沿いの町、ブンタウ。
海はその川が流れ込み、惜しい事に透明度は低い。
しかし、強烈なバイクの喧噪と排気のホーチミンからやって来ると、
吹き抜ける海風と開放感で、何とも心地良いパラダイス感。
ここはホーチミン市民にとって身近で貴重な海水浴場。
ポジション的には、東京にとっての湘南のような場所だろう。
当然、シーズンには海水浴客で大賑わい。
海の家やウワーッと並ぶビーチパラソル、カゴと天秤棒のカニ売り女や各種物売りで、
雑然とした独特の海水浴場感が盛り上がる。
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数日間のロケもすべてのカットを撮り終え、予定より早めに終了。
出来たオフタイムを、漁村の浜で地元民のウォッチングで費やした。
網を繕う、道具を運ぶ、小屋でたむろ。
海風で涼む、眺め続ける海、木陰の昼寝。
赤児をあやす、犬と戯れる、渚の食材採り。
服のまま海へ入る。
シャワー代わりに体を洗う。
泳ぐ、遊ぶ、体を冷やす。
船溜まりで黙々と補修作業の、壮年漁師。
締まった赤銅色で小柄な体、怖そうな顔。
ジュースを差し入れ、話かけてみた。
取っ付き難さとシャイなのは、想像した通り。
徐々に打ち解け話してくれた、昔ほど魚が獲れなくなった事。
そして、嵐の海での遭難、子供の話・・・。
それらからは漁一筋の実直さ、目からは優しさが充分に伝わって来た。
浜辺にズラーッと並んだ木造船。
すべてに鮮烈な赤ペンキの縁取り。
守り神や勇敢さのイメージ。
そこに描かれた、シャーク風の鋭い目。
空は、撮影終了を待っていたかのようにビッシリと厚い雲。
何だか名残惜しかった、壮年漁師との別れ際。
