To Kill a Mockingbird
アラバマ物語
『アラバマ物語』は、アメリカの作家ハーパー・リーの小説です。1960 年 7 月に出版され、瞬く間に大ヒットしました。
アメリカでは、高校や中学校で広く読まれています。
『アラバマ物語』は現代アメリカ文学の古典となり、出版から 1 年後にはピューリッツァー賞を受賞しました。
ストーリーと登場人物は、リーが家族や近所の人たちを観察し、1936 年に 10 歳のときに故郷のアラバマ州モンロービルの近くで起きた出来事を基にしています。
レイプや人種的不平等という深刻な問題を扱っているにもかかわらず、この小説は温かさとユーモアで知られています。
語り手の父親であるアティカス・フィンチは、多くの読者にとって道徳的英雄であり、弁護士にとっては誠実さの模範となっています。
歴史家のジョセフ・クレスピノは、「20世紀において、『アラバマ物語』は、おそらくアメリカにおける人種問題を扱った最も広く読まれている本であり、その主人公であるアティカス・フィンチは、人種的英雄主義の最も永続的な架空のイメージである」と説明している。
南部ゴシック小説および教養小説として、『アラバマ物語』の主なテーマは、人種的不公正と純真さの破壊である。
学者は、リーがディープサウスにおける階級、勇気、思いやり、および性別の役割の問題にも取り組んでいると指摘している。
この本から得られる教訓は、寛容さを強調し、偏見を非難している。
そのテーマにもかかわらず、『アラバマ物語』は公立の教室から排除する運動の対象となっており、人種差別的な蔑称の使用がしばしば問題となっている。
2006年、英国の図書館員は、この本を「すべての大人が死ぬ前に読むべき」本として聖書よりも上位にランク付けした。
出版後のこの小説に対する反応は大きく異なっていた。販売部数が多く、教育の場でも広く使われているにもかかわらず、その文学的分析は乏しい。複数の作家や著名人による『アラバマ物語』の感想を集めた作家メアリー・マクドノー・マーフィーは、この本を「驚くべき現象」と呼んでいる。
この本は、1962年にロバート・マリガン監督、ホートン・フット脚本でアカデミー賞を受賞した映画に翻案された。1990年以降、この小説に基づく演劇がハーパー・リーの故郷で毎年上演されている。
『アラバマ物語』は、2015年7月14日に『アラバマ物語』の初期草稿『Go Set a Watchman』が出版されるまで、リーの唯一の出版された本だった。リーは、1964年以来、自分自身やこの小説の個人的な宣伝を拒否していたが、2016年2月に亡くなるまで、自分の作品の影響について反応し続けた。
アラバマ物語
1~10 Movie CLIP
一部転載
「To Kill A Mockingbird」アラバマ物語 あらすじ
※ネタバレ注意 気になる方は飛ばしてください
作品は、作者ハーパー・リーの幼少時代の実際の体験に基づいている。
作品の主人公はジーン・ルイーズ・フィンチ(通称スカウト)であり、兄のジェムと父のアティカスと共に暮らしている。毎年夏になると隣の家にやってくる少年ディル(ちなみに作者ハーパー・リーは『ティファニーで朝食を』の作者トルーマン・カポーティと幼馴染であり、ディルのモデルはカポーティであるといわれている)と遊んだりして暮らしている。
近くにあるラドリー家に閉じ込められているという噂の、ラドリー家の息子ブー・ラドリーに興味を持ったスカウト、ジェム、ディルは、ラドリーの家で肝試しをしたりして、夏を過ごす。(こちらも余談ですが、ご存じの方はご存じ、90年代イギリスのバンドブー・ラドリーズの元ネタです)
夏が終わると、6歳のスカウトは学校に通い始める。
スカウトは、弁護士である父アティカスの影響もあり、6歳にして新聞を読みこなすなど聡明な少女であるが、それゆえに若い女教師に疎まれるなどするが、こうした経験を通して世の中のことを学んでいく。貧しいクラスメイトであるカニンガムや、黒人の家政婦カルパーニアとの交流も通じて成長する。
そんな中で、スカウトは学校生活で危機に陥る。
父アティカスが、白人女性マイエラ・ユーウェルを強姦した嫌疑をかけられている黒人男性トム・ロビンソンを弁護することになったのである。
当時、白人が黒人を弁護することについては、大きな差別意識があった。
正々堂々とトム・ロビンソンを弁護しようとしたアティカスは白人から目の敵にされ、スカウトも白人のそのような視線を感じることになる。
裁判が始まる前、マイエラの父・ユーウェルは、白人の仲間を引き連れて留置所にいるトム・ロビンソンを襲撃し、リンチしようとする。ーーその中には、アティカスのことを普段は尊敬しているような人々も多く含まれていた。
アティカスはユーウェルの動きを予測し、白人の集団に立ち向かう。スカウトは、父の危険を感じて留置所に向かう。
スカウトは、白人の集団の中にクラスメイトであるカニンガムの父親がいるのを認める。そこでスカウトはカニンガムに息子の話をすると、カニンガムは集団から離脱することを決める。ロビンソンをリンチしようと息巻いてユーウェルに従っていた白人たちは、熱気を失っていつもの善良な農民に戻る。
裁判当日、アティカスは理論的にマイエラ・ユーウェルを追いつめてトム・ロビンソンの無罪を証明したかに思えたが、陪審員はトム・ロビンソンに有罪の判決を下す。
ーーだが、陪審員には一人だけトムの無罪を主張する者がいた。それは、先日トムへの襲撃に参加しようとしたカニンガムの一族の人間だった。
アティカスは、上告すれば勝てると言ってトム・ロビンソンを励ます。
ーーしかし、希望を失ったトム・ロビンソンは、刑務所の中で発狂して逃亡を企て、射殺されてしまう。
また夏が来て、秋になっていた。
アティカスは、いままでは恵まれた環境にいると思っていたディルが、複雑な家庭環境にあり、今までほらを吹いていたことなどを知るなど、多くのことを学んでいく。
トム・ロビンソンが死んでからも、ユーウェルはアティカスがトム・ロビンソンの弁護をして自分たちを追いつめたことが気に入らず、復讐の時を待っていた。
ハロウィンの日に、スカウトとジェムは、ユーウェルに襲撃される。ユーウェルは、刃物で兄妹を刺殺しようとした。
ーーだが、そこで何者かがスカウトとジェムを助ける。
兄妹が襲撃された現場では、ユーウェルが返り討ちにされて刃物で刺されて死んでいた。
スカウトは、狂人だと思われていたブー・ラドリーが自分のことを助けてくれたことを知る。そして、ブー・ラドリーは狂人ではなく、人づきあいが苦手なだけであることも知る。
ブーを英雄にすることもできたが、ブーがそのようにして注目を集めるのはブーにとって望ましくない、とアティカスは言う。
事件の真相はアティカスと兄妹、保安官、ブーだけの秘密となる。