「ワシは将来はユーチューバーになりたい!」
という近所の小学生5年生。
最近の小学生はなかなかその世界に詳しい。下手な大人よりも。
「まあそれも良いけど、どうせなるならユーチューバーではなく、運営側のYouTubeに回ったら?」
「は?…意味分からんし」
「ユーチューバーってさ、結局なんだかんだ言ってYouTubeって会社がやってるフリーサイトの上であれこれやってるだけじゃん。おまえがどれだけ頑張っても、結局YouTubeっていう場所の中であれこれやってるだけよ。YouTubeていう名前の水槽の中で泳がされてる金魚と同じよ」
「ふーん…」
「だから金魚のおまえにとっちゃ、結局どんだけ頑張ってファンができても、その水槽持ってるオーナーが“神”よ。おまえの運命は全部その”神“次第。そいつがルール。そいつが気に入らんかったらエサもらえなくなるし、もっと気に入らんかったら水槽からつまんで外にポイされる。それもそいつの自由自在。おまえはそんな金魚でええの?」
「それはイヤ」
「もしテレビタレントなら、おまえさえ頑張って有名になればどのチャンネルのどの番組でも出れるし、なんなら芸能事務所だって独立したり変わったりできるけど、YouTuberはそうはいかない。YouTubeという“水槽”でしか泳げない金魚よ」
「じゃあTikTokは?」
「同じじゃの。TikTokという名前の水槽」
「え、そうなん?」
「両方とも基本的に登録も放送も観るのも無料じゃろ。その分、”神”の思うがまま。”神の意向に合わなかったらいつでも即刻出ていって貰うよ” “金取ってないんだから嫌なら出ていけ”が基本じゃん」
「たしかに」
「ワシなら金魚より神を選ぶな」
「でもヒカキンとか普通のテレビにも出てる有名人じゃん」
「あれは特別な例なんじゃない。でも、全世界で凄まじい数のユーチューバーがいる割には、テレビに出てるユーチューバーの数ってめっちゃ僅かだよね。テレビのタレントや俳優とはやっぱり異質の存在」
「どこが違うん?」
「テレビや映画の俳優やタレントは、川や海で自由に泳いでる魚。エンターテイメント業という広大な海や川。もちろん魚だから陸では生きれないけど、自分さえしっかりすれば幾らでも泳ぐ場所はある。
なぜなら海や川はもう誰のものでもないから。
その海がダメなら、その川がダメでも、他に幾らでも泳ぐ場所がある。
YouTubeは運営側の意向で出演者をどうにでもできる水槽。チャンネル凍結という手段である日突然水を抜かれる。おまえの”生殺与奪"は、見えないけど確実に居る”神”次第。
いつかは海や川みたいに自由泳ぎ回れる世界になるかもしれないけど、今はまだ水槽。
おまえが目指すなら、その水槽の外に居て水槽を操ってる神の方になるか、やっぱり厳しい自然でも海や川で最初はしっかり泳いで、広くて深い世界を知って、とても水槽では飼えないシロナガスクジラになった後で、水槽で飼われること考えても遅くないよ」
「ほーん…まあ考えとくわ」
そう言って何やら考え顔で帰っていった。
うむ。よしよし。
まあオジちゃんも時代遅かも知れないけど、でも水槽だらけの社会は選択肢が多いようで、実は窮屈な世界だ。
Facebookでフォロワーさん多くても、ちょっとでもアメリカ流の価値観や、ヨーロッパで流行の価値観を批判するとあっという間にアカウント凍結される。
何度もそんな目に遭って来た。
SNSなんざ、自由に見えてまだまだ実にくだらない「偽神」が君臨してる仮想世界でしかない。
まずはこの好き勝手やってる「偽神」どもを、正しく取り締まる仕組みの確立が先だと思う。
少年よ、大海を目指せ。