from 今田 唯仁

 

これは、英国に拠点をおくヴァージン・グループの創設者であるリチャード・ブランソンのおはなしです。

彼は、子ども時代、学習障害の一種である失読症を抱えていましたが、障害に臆することなく、なんと15歳でビジネスをスタートしました。セキセイインコの飼育、クリスマスツリーの育成、「スチューデント」という名の雑誌発行。レコード会社、航空会社、携帯電話会社・・・。ありとあらゆる立ち上げたビジネスは400を超え、築いたブランソン帝国の総資産50億ドルともいわれています。

もちろん、彼の歩んだ道は、順風満帆ではなく、たくさんの失敗と共に歩んだ波乱万丈にあふれています。
彼は、アメリカの雑誌「アントレプレナー」の中で、チームをマンネリに陥らせることなく常に戦い続け、勝利に導けたことができた秘密は、たった2つのマインドだったと、語っていました。

今回は、ブランソンの「知略」と「胆力」の源泉と言えるシンプルなマインドを2つ紹介します。
ぜひ、参考にしてみてくださいね。

 

飽くなき挑戦を支えた、2つのマインド

では、飽くなき挑戦を支える2つのマインドをご紹介していきます。
2つとも抑えてもらうのがベストですが、これまであまり意識をしていなかったなら、1つ実践するだけでも大きな変化が見込めます。

まず1つ目は、、、

① リスクを取ること

リスクを取るのが怖いのは、根拠のない思い込みが大きな要因と言われています。

リスクを取ることは、自分自身と自分のグループを試し、みんなで楽しみながらこれまでの限界を超える、素晴らしい方法です。

ブランソンは、インタビューでこのように語っています。楽しむということが、ポイントですね。ワンピースのような冒険心のようにも感じます。彼は、人々が「うまくいくもんか」という商品を作り出し、「無理だ」と言われても挑戦を続け、巨万の富を築きました。

そして、彼は、こう付け加えます。

私が取るリスクは、無謀なギャンブルではなく、『戦略的判断』です。

成功は、転がり込んでくるものではなく、自分で追い求めるものです。リスクを計算した上で、未知の世界に一歩踏み出すことの先に、夢の実現、目標の達成があるということです。

リスクの計算、いわゆるリスクマネジメントは、訓練により身につきます。リスクを取る前、取っている最中、取ったあと、自分がどんな感情を抱くかにまず注意を払ってみましょう。
そして、自分に問いかけてみましょう。
「何を学んだのか」そして、「その知識を今後の決断にどう活かすことができるのか」

そして、二つ目は、、、

② 記録を更新すること

ブランソンは、リスクを取り、なおかつ、記録の更新にこだわることが重要だと述べています。
彼は、ビジネス以外でも数々の記録更新を実際に打ち出しています。
航海による大西洋横断記録をバージン・アトランチック・チャレンジャーという小艇を用いて更新したり、
熱気球で大西洋を初めて横断に成功したり、、、。

スタンフォード大学のウィリアム・ワード博士の研究によると、正確な記録をとることで判断のゆがみを矯正することができ、さらに記録更新へのモチベーションが高まるといわれています。数値化することの重要度は、今更述べる必要はありません。自分の成果と成長が数値化されることで、現象が具体化され、それ自体を楽しめるようになるという理由があるからです。

記録を更新するために、コントロールすべき「心理の壁」

話は、少しそれますが、桐生選手の先日の快挙ネタに合わせ、記録を更新するために、コントロールすべき「心理の壁」についても、解説します。

桐生選手が記録したタイムは、9秒98というタイムでした。これは、1998年に伊藤選手が記録した10秒00というタイムから19年ぶりの更新だそうです。

「0秒02というタイムを縮めるのに、これだけの時間を要したのは、なぜなんでしょう?」

これは、いわゆる「10秒の壁」というものでしょうか。
ご存知のように、壁といっても物質的な壁はありません。わずか、0秒01すら19年間縮めることもできなかった事実。この見えない壁は、日本人がいつしか作り上げた心理の壁だったと言うことです。いつしか縮めることができない事実に「超え難い壁」というラベリングを貼ってしまったということです。海外に目をうつすと、9秒台は当たり前の世界に拘らず・・・。ちなみに現在の世界記録は、ウサイン・ボルト選手の9秒58というタイム。すごい差ですよね。

結果というのは、ゴール後にしか分からないとは理解しているものの、自分が経験しているよりも高い記録でのレースや戦いは、「未知の世界」という認識から、恐怖心との戦いともいえます。要するに、その「未知の世界」を前にして、いかにぶれずに自分のやるべきことに集中でき、恐怖心を乗り越え、パフォーマンスを発揮することができるかがポイントとなるわけなんです。

「感情」が正しい選択の邪魔をする

ある研究によると、仕事でストレスを抱えている時に、新居の購入を考えると、ストレスがない時よりも、購入のリスクを大きく感じやすいというように、実際のリスクとはなんら関係のないことへの恐れが、決断に影響を及ぼすこともあることが実証されています。

これは、ストレスがネガティブの感情を引き起こし、思い込みへと置き換えられた例です。

意思決定のプロセスにおいては、自分の感情を把握しておくことが大切です。そして、その感情は、どの事実に対して芽生えた感情なのか。事実と感情の相関関係を把握してみましょう。そうすることで、認知の歪みを矯正することができます。

 

まとめ

以上、リチャード・ブランソンの挑戦を支えた
2つのマインドは・・・

① リスクを取ること

② 記録を更新すること

の2つです。

 

そして、今、自分がどんなリスクを取っているか、そのリスクにどんな感情を抱いているかを観察すること。次に、どんなチャンスを見送っているかに目を向ける。そうすれば、多少の不安を感じても、一番メリットの大きいリスクを取れるようになります。

リスクの計算は、リスクを取るたびに学び、その繰り返しの中に身につけることができます。

 

挑戦を恐れずに、過程を楽しむ中に、勝利の種が眠っているものです。

 

今田 唯仁