
千秋楽に観てきました。
團菊祭と銘打ってますが、昼の部に関して言えば、完全に菊祭でしたね。
成田屋は夜の部では活躍したのでしょうか。
今回の歌舞伎座も夜の部は見ていません。夜は外に出たくないんだもーん。
日生劇場でやってくれたみたいに、夜と昼の演目、日によって交替してくれたらいいのに。
一、摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)
合邦庵室の場
玉手御前 菊之助
俊徳丸 梅 枝
浅香姫 尾上右近
奴入平 巳之助
合邦道心 歌 六
母おとく 東 蔵
通し狂言
二、天一坊大岡政談(てんいちぼうおおおかせいだん)
序 幕 紀州平野村お三住居の場
紀州加太の浦の場
二幕目 美濃国長洞常楽院本堂の場
三幕目 奉行屋敷内広書院の場
四幕目 大岡邸奥の間の場
大 詰 大岡役宅奥殿の場
大岡越前守 菊五郎
池田大助 松 緑
山内伊賀亮 海老蔵
お三 萬次郎
赤川大膳 秀 調
平石治右衛門 権十郎
下男久助 亀三郎
嫡子忠右衛門 萬太郎
お霜 米 吉
伊賀亮女房おさみ 宗之助
吉田三五郎 市 蔵
藤井左京 右之助
名主甚右衛門 家 橘
僧天忠 團 蔵
天一坊 菊之助
大岡妻小沢 時 蔵
摂州合邦辻。何度見ても変な話(笑)
あらすじざっと書きます。
合邦道心(歌六)の娘玉手(菊之助)は奉公先の城主高安様(会話で名前が出るだけ)に見初められ、
後妻になったはいいものの、そこの息子俊徳丸(梅枝)に恋慕してしまう。
義理の母息子のフランス書房にあるような話。
しかし、フランス書房と違い真面目な俊徳丸、浅香姫(尾上右近)という可愛らしい許婚もいて、義母の激しい求愛はことごとく跳ねつけます。が、玉手は引き下がらない。
そのうち、俊徳丸は謎の病気で顔の左半分が爛れてファントム(オペラ座の)

「こんな姿の私ですから、もうあきらめて嫌いになってください」という俊徳丸に、玉手はなんと、
「オホ、オホ、オホホホホ!!」と高笑いして、衝撃の告白。
「その顔は私の仕業ですの。住吉神社に詣でたときに、私がアワビの杯にそそいだ毒酒。あれを飲ませて、あなたをらい病にしたのです」
えー!!お前かよ!!一同ドン引き。
その場にいた奴入平(巳之助)が「奥様、いいかげんにしてください」と説教するも知ったこっちゃ無い。玉手は俊徳丸にベッタリすがり付く。
浅香姫が「ひどい、ひどすぎるわー」と、泣いて食って掛かるけど、それも軽く振り払って、むしろ殴りつける勢いの玉手、どうみても、気が狂ってます。
そこに合邦道心が駆け寄って、娘の悪業を見ておられずに刺すわけです。
ぶっちゃけ、よくやった!と思わないでもない流れ。
そこから、瀕死の玉手の驚くべき告白!(第二弾!)
「実は、高安様にはもうひとり息子がいて、その次郎丸は家督を狙って俊徳丸を殺そうと計画している。それを知った自分は、わざと俊徳丸を家から遠ざけるために言い寄ったのです。
毒酒を飲ませたのも、病気になって跡継ぎになれなければ、命は助かると思ったから」
えー?それ、なんかこじらせすぎてない??
と、観客が思ったところで、その気持ちを汲んだか、お父さん合邦が、
「それなら高安様にそう言えばいいだろう」と突っ込んでくれます。ナイス。
しかしそれに対して玉手は、
「そうしたら高安様は厳しい人だから次郎丸を殺してしまう。自分にとってはどちらも同じく大事な義理の息子。どちらも殺すわけには行かないのです」
と、言うんですが、いや、どう聞いても次郎丸が悪いやつだろー。同じじゃないだろー。良い子の俊徳丸が貧乏くじ引きすぎだろー。
その衝撃の告白が続く間、玉手の思い込みでらい病にされたお気の毒俊徳丸は、おとなしく聞いているわけですが、最後に玉手の逆転ホームラン。

「俊徳丸の病気は、自分なら治せる。そのために後を追ってきたのです。肌身離さず持っていた、以前毒酒を飲ませたアワビの貝の杯、これに寅年寅月寅の刻に生まれた女、つまり自分の血を入れて飲ませれば、俊徳丸の病気は治るのです」
合邦もこれには感激して、歌舞伎のお約束「でかしゃった」連発ですが、
でもねー、もともとあなたが飲ませた毒だしねー。
そして、次郎丸、悪いやつなのにほっといて良いのかなー。
つか、そもそも俊徳丸に言い寄ってるときの玉手、ぜったい芝居じゃないから。
本気でムンムンしていたから。
ワタクシなりに解釈しますと、玉手は本気で俊徳丸を好きだったんじゃないかなー。
でも、いよいよとなったときに、嫌われたままで死にたくなかったんじゃ無いかなー。
と、ま、この説は間違ってるのだけれど、そうとでも思わないといろいろと納得いかない芝居です(笑)
もうひとつ、天一坊大岡政談。
こちらも長い話で、いろんな場面を省略したために、
「なんで久助が、お三ばあさんが『誰にも言ってない』って言ってた話を知っているの?」
とか、腑に落ちない展開があるのだけれど、まあ、その辺は歌舞伎では許される範囲。
2012年に勘九郎がコクーンでやった「天日坊」がこれを基ネタにしていて面白かった記憶があります。面白い話なんだよね。端折らなきゃね。
大岡越前守の菊五郎がむちゃくちゃかっこよかった。
菊五郎は、富樫とかこういう役が似合う。裃姿は天下一品よ。
二幕と三幕でようやく海老蔵の見せ場がありますが、菊之助とオヤジ様に押され気味だったわ。千秋楽でお疲れだったのかもしれないけど。
大詰めでも登場せず、どこかで捕まって自害したという説明だけ。
海老蔵ファンには物足りなかったんじゃないかしら。あくまで個人の感想です。
そんなこんなで、音羽屋さんはますます安泰と思った團菊祭でした。
