夜の部
一、芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)
葛の葉(くずのは)
女房葛の葉/葛の葉姫 扇 雀
安倍保名 松 也
信田庄司 亀 蔵
二、積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)
関守関兵衛実は大伴黒主 勘太郎
傾城墨染実は小町桜の精 菊之助
小野小町姫 七之助
良峯少将宗貞 扇 雀
三、秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)
両国橋の場
松浦邸の場
同 玄関先の場
松浦鎮信 勘三郎
大高源吾 菊之助
お縫 七之助
宝井其角 彌十郎
「関の扉」が素晴らしかった。
勘太郎の関守と菊之助の小町桜の精。凄味が感じられました。
最後幕引きでは私も隣の女性も立ち上がらんばかりに(立ちませんよ)拍手を送り、終わったとたん同時に「良かったですねー!」と興奮して互いに呼びかけていました。それくらい良かった。
前半の七之助も可憐で美しくて、目の保養でしたが、菊之助を見た後だと、ちょっと線が細すぎかな。
体型じゃなくってね。
それにしても、菊之助はそのあとの「松浦の太鼓」での立役も決まっていましたし、かなり楽しみな役者になりましたね。
勘太郎の踊りは前から安定していますが、ここでも素晴らしかった。
このコンビこれからも観たいです。
「葛の葉」
この演目、最後に葛の葉が舞台いっぱいの障子に、
「恋しくば尋ねきてみよ和泉なる信田の森のうら美葛の葉」
と歌を曲書きするのが見所の一つ。
曲書きというのは、下から逆に文字を書いたり、筆を左手に持ち替えて表裏逆の裏字を書いたり、子どもを抱いて口にくわえて書いたりというもの。
そのたびに、前の席の人たちが「まあー」「うわー」と感嘆の声をあげていて、なんだか嬉しくなりました。
あれ、ちゃんと役者さんが書いているんですよ。
扇雀さんのお手は、まあ、なんというか・・・・・・この日の字は「うら美葛の葉」あたりで、かなりやっちゃった感が溢れていましたが(失敬・笑)、相当難しいですよね。
子どもだっこして口で書くんだもの。見てるだけなら何とでもいえる。
「松浦の太鼓」
これは、とにかく勘三郎が可愛かった。
勘三郎もわかってやってますね。きっと。おれ、ラブリーさが売り。
この役は(私が思うに)吉右衛門さんの方がニンで、吉右衛門さんだと可愛いだけじゃなくって大らかで懐の広いところも見せてくれるから、最後の「ほめてやれ」で、ジーンとするんです(なにしろ浪士達はこれから切腹だもの)。
しかし、この日のお殿さまはとにかく浮かれっぱなし
最後に「ここで出したか!」の平成中村座お約束の仕掛けもあり、とにかく万歳万歳で明るい幕切れ。
それもあっての、勘三郎の松浦様ですね。
おかげで帰り道も、浮かれ気分で歩けました。
平成中村座って、浅草からは10分ちょっとかかって、いつも行きはちょっと遠いなって思うんですが、帰りは舞台思い出しているうちにあっという間に駅についちゃうんですよね。
不思議と時間も10分かかってなかったり。(知らず走ってるのか?!)
「行きよりも帰りの方が近い道」←ちゃたらー心の句
今月夜の部、お勧めです。