ちゃたらーのお昼休み

ちゃたらーのお昼休み

ちゃたらーのお昼休み
「オーデュボンの祈り」
原作:伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』(新潮文庫刊)
脚本:和田憲明
演出:ラサール石井
出演:吉沢 悠/河原雅彦、石井正則、小林 隆/武藤晃子、小泉深雪、寺地美穂、町田マリー/春海四方、玉置玲央、陰山 泰/筒井道隆

【あらすじ】

伊藤はコンビニ強盗に失敗し、気付くと見知らぬ島にいた。その島は仙台からそう遠くない、江戸時代以来外界から鎖国をしているという“荻島”。島には、妙な人間ばかりが住んでいた。反対のことしか言わない画家や、島の法律として殺人を許された男、そして、人語を操り未来が見える、案山子、優午・・・。
伊藤が来た翌日、案山子はバラバラにされ、頭を持ち去られて死んでいた。
「未来がわかる案山子はなぜ自分の死を阻止できなかったか?」
住民から聞いた「この島には、大切なものが最初から欠けている」という謎の言い伝え。
『優午(案山子)の死』と『言い伝えの真相』を追う伊藤の数日間のものがたり。
すべての真相が見え、欠けていたピースがはまったとき、“大切なもの”が島を満たす。



いつものくまにゃちゃんと見てきました。


かなり原作に忠実でした。
筒井道隆さんの透明感あるたたずまいや語り口は、優午のイメージによく合っていたと思います。
最後のシーンは、原作を読んでいる人でもけっこうジンとくるんではないでしょうか。

役者はチラシにある12人のみ。ほとんどの役者が一人二役をやっていてその違いも楽しめました。


以下、思いっきりネタばれなので、気にする人は回れ右でお願いします。







しかし、その一人二役で、城山と桜が同じ役者(玉置玲央)と気付いてからは「じゃあ、あの場面はどうなるの!」と、やたらとそればかりが気になってしまった私。

あの場面と言うのは、言わずと知れたあの場面で、私は「オーデュボンの祈り」で好きなシーンを一つだけ挙げよと言われたら、間違いなく「桜が城山を撃ち殺すところ」と答えます。(←あんたそれ変だよ)
それまでに城山の残虐非道さがこれでもかと描写され、私の中の正義がうち震えて悶えて、こいつはなんとかしなくちゃいかん!やってくれるよね桜!という期待が東京ドーム30個分くらいに膨れあがった時に、パンと鮮やかにやってくれるあの瞬間。桃太郎侍にも通じるカタルシスがあるのです。(←あんたホントに変だよ)
それが、同一役者じゃあどうなるの?と心配したんですが、あっと驚く解決方法が示されました。
うん。それちょっと反則じゃね?みたいな。
そして、その城山の悪行についても、時間の関係でしょうが、ちみっとしか紹介されなかったがために、カタルシスも半分くらいでした。
城山の死にガッツポーズをした伊藤に客席から笑いが起きたように、原作を読んでいなければ「なんで?」的な感想もあったかもしれません。


おおむね原作通りではありましたが、あの内容を2時間30分(内休憩10分)にまとめるのは、かなりの大ワザ。物足りないところがあるのは仕方ない。
優午のしかけた謎解きも、駆け足で説明されてしまった感じはあります。


原作を読んでから・・・とまでは言いませんが、観終わった後にでも原作を読んで補完した方がより楽しめると思います。


最後の場面は、原作にはなかった(というか原作はその直前に終わって想像の余地を残していた)丘の上での静香のアルトサックス演奏シーン。これはとてもよかったです。静香役の寺地美穂さん、本当にサックス奏者だったんですね。女優さんだと思っていたので、本当に演奏が始まったときにはビックリしました。
小林隆さんも石井正則さんも河原雅彦さんも良かったです。吉沢悠さんは、ちょっとカミ過ぎでした(笑)


しかしやっぱり、原作は良かった。

読み返したくなりました。

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