不治の病を患う息子に最期のときが訪れつつあるとき、宮本拓実は妻に、二十年以上前に出会った少年との想い出を語りはじめる。どうしようもない若者だった拓実は、「トキオ」と名乗る少年と共に、謎を残して消えた恋人・千鶴の行方を追った―。過去、現在、未来が交錯するベストセラー作家の集大成作品。
にゃんぱらりのお勧めで読んだんだけどね。
正直、主人公宮本拓実がどうしようもなく情けない男で、ムカムカし続けて・・・本を床に叩きつけたい衝動、引き裂きたい衝動にかられ、あんまり楽しめませんでした。
時生はいい子です。17歳とは思えないほどしっかりしています。
だからよけいに23歳にもなって15歳(しかもかなり頭の悪い15歳)くらいの行動に走る主人公が許せません。
「あの人の若気の至りを見るのは辛い」とか言われてますが、若気の至りじゃ済まされない馬鹿っぷりです。
そのダメ男が最後、息子に吹き込まれた情報でちゃっかり将来性のある会社に就職するのも、大逆転というよりズルとしか思えません。そうやって就職したって、もとが馬鹿なんだから無理だろ?
そもそもこれだけの経験をして、「俺はあんたの息子なんだよ」などどいう衝撃的な言葉を聞いておきながら、妻が妊娠したと知るまでそのことを「ずいぶん長い間忘れていた」というのが、信じられません。
いいこと探しをするならば、時生くんが健気で良い子で良かったなというのと、「配られたカードで精一杯勝負するしかない」という竹美さんがいい感じでした。
にゃんぱらり~ゴメン、そんなわけだけれど、また何かあったら教えてね
- 東京島 (新潮文庫)/桐野 夏生
- ¥580
- Amazon.co.jp
清子は、暴風雨により、孤島に流れついた。夫との酔狂な世界一周クルーズの最中のこと。その後、日本の若者、謎めいた中国人が漂着する。三十一人、その全てが男だ。救出の見込みは依然なく、夫・隆も喪った。だが、たったひとりの女には違いない。求められ争われ、清子は女王の悦びに震える―。東京島と名づけられた小宇宙に産み落とされた、新たな創世紀。谷崎潤一郎賞受賞作。
ええっ「谷崎潤一郎賞受賞作」なの?!と、アマゾンの紹介文をコピペする時のけぞった。
谷崎の世界とは違う気がするんですが・・・面白かったです
紹介文を読んでもわかりませんが、清子は46歳のデブのおばさんです。強かで自分勝手で何かと汚い女性ですが、でも、わかる気がする。私でもこう生きる(笑)
ホンコンと呼ばれる中国人とトウキョウの日本人の対比が、今の日中の関係をよくあらわしています。中国人のサバイバル力はすごいね。色々な場面で風刺の効いた話です。ドロドロした人間関係や、シリアスな出来事も、クスッと笑わせるあたり。上手いなあ、桐野夏生。
最後とんでもないオチに「えー」と思っても、まるっとひっくるめて読む価値あり。
(ま、好みもあるとは思うけれどね)