好きな昔話、童話 ブログネタ:好きな昔話、童話 参加中

幼い時から母の影響で「日本昔話」や「世界のおとぎ話」などの全集をたくさん読ませてもらっていたおかげで、読書好きの子どもに育ちました。好きな昔話も童話もたくさんあります。

その中で「鶴の恩返し」について語りたいと思います。
私の覚えているお話の内容は以下の通りです。

昔々、ある所におじいさんとおばあさんが住んでいました。
ある冬の雪の日、おじいさんは罠にかかった一羽の鶴を見つけました。
「かわいそうに、もうつかまるんじゃないぞ」
罠から助けてあげると、鶴は嬉しそうに一声鳴いて飛び立ちました。

その夜、美しい娘がおじいさんの家へやってきて言いました。
「道に迷ってしまったので、一晩泊めてください」
おじいさんとおばあさんは快く娘を家に迎えてあげました。
次の日も次の日も雪はやまず、娘はそのまま家にとどまり、かいがいしく働きました。
ある日、娘が「布を織りたいので糸を買ってきてください」と言うので、おじいさんは糸を買ってきました。
「絶対に覗かないで下さいね」と言い残し、娘は部屋に閉じこもりました。中からは機織りの音がします。


布を一反織り終えて
部屋から出て来た娘はいささかやつれた様子で、
「これを売って、また糸を買ってきてください」と言いました。
娘が織った布は大変美しく不思議な光を放っていて、たちまち評判となりました。

機を織って部屋から出で来るたびに、娘の顔色は悪くなっています。
それでも娘は「絶対に、中を覗いてはいけませんよ」と言うのでした。
初めのうちは辛抱して約束を守っていたおじいさんとおばあさんが、我慢できずに覗いたところ、
機織り部屋の中では娘ではなく、一羽の鶴が機を織っています。
なんとその鶴は、くちばしで自分の羽根を引き抜いて、布に織り込んでいます。
美しい布の不思議な光はこのためでした。
機織を終え、娘の姿で部屋から出てきた鶴は、最後の一反をおじいさんに手渡すと、
「私はおじいさんに助けてもらったあの雪の日の鶴なのです」
そう言って、両手を広げ鶴の姿に戻り、空へと帰っていきました。


このお話ですが、おじいさんとおばあさんは、どうして部屋を覗いたのでしょう。
あとから読んだ話では、「おじいさんとおばあさんは好奇心に負けて」覗いたというのもありました。
けれども、私が子どものころ読んだ話ではそんな言葉は無かったと思います。
おじいさんとおばあさんは、ただ「がまんできずに」覗いた、とそれだけでした。
そして、これも皆さんの記憶に訪ねたいのですが、機を織って出てきた娘は「顔色が悪く」ありませんでしたか。
私の読んだ本ではそうだったのです。
そして、その後の種明かしで「鶴が自分の羽根を引きぬいていた」というのがあって、
「それじゃあ顔色が悪くなるのは当たり前だ」と子ども心に納得していたのです。

しかしながら、周りに聞いてみると「そんな表現は無かった」という人もいます。
「覗いてはダメですよと言って、その後部屋から出来て、きれいな布を渡した」だけだと。

娘の顔色が悪くなっていたかどうかは、私の中でとても重要なポイントです。

それがないと、おじいさんは「ただの約束を守れなかった人」ですが
それがあったら「娘を心配するあまり」の優しいおじいさんなのです。
そうなると、このおじいさんの「部屋を覗く」という行為は「鶴を苦しい作業から解放してあげた」行為でもあるのです。

私が読んだ本はたぶん後者でした、たぶん。・・・私が脳内変換していたらゴメンなさい。

皆さんの「鶴の恩返し」がどうだったか、このブログネタで聞いてみたいです。



話がいきなり仕事のことになりますが、「見て見ぬふり」という時に、このおじいさんの行為を思い浮かべます。

私は保険会社に勤務して長いですが、保険営業の世界には「自爆」というコワイ言葉があります。
成績が足りない時に、自分が保険に入る(これは今は成績にならなくなっています)、自分の身内を保険に入れる、そういう行為を言います。
知り合いに無理やりお願いして入ってもらう行為もそれに近いでしょう。
もちろんコンプライアンス上でも決して許されない行為ですが、営業職員は成績が欲しい。その上司も、知らない顔をしていれば部の成績になりますから、気づかないふりをするほうが楽です。
恥ずかしいことに、私自身も、そんな営業部長経験があります。

しかし娘の顔色が悪いことに気づくように、(布ならぬ)申込書を持ってきた職員に、
「おめでとう」と言った時、
その顔があまりうれしそうでなかったら、それはそういう「無理をした契約」なのだと気づくものです。

いつまでも高価な布(契約)を持ってきてほしくて、知らん顔をするおじいさんよりも、
「この契約は、本当に必要があって入るものなのか」
と、思い切ってとびらを開けられるおじいさんになるべきだなあと、思います。


ペタしてね