母と電話していたときのこと。
何気ない会話の途中で、母がふと思い出したように言った。
「そういえば、今度ドイツで辻井伸行さんがコンサートするらしいよ」
え?ドイツで?辻井さんが?
しかもその日が、私の誕生日だという。
そんな偶然あるんだろうか?
一瞬、鳥肌が立った。これはもう、運命としか思えなかった。
そもそも、初めて辻井さんの音楽を聴いたとき、私は驚いた。
なんて一音一音、濁りのない澄んだ音なんだろう。
まるで教会で音を聴いているような、静かで厳かな空気。
気づけば、自分の心の中まで、すっと洗われていくような感覚を覚えるような。
電話を切ってすぐ、私は夫にメッセージを送った。
「お願い、この日に絶対に行きたいコンサートがある」
翌日、チケットは無事に購入できて、あっという間に誕生日の予定が決まった。
こんなふうに、大事なことはいつも突然決まる。
特別な日に、特別な音楽を聴けること。
こんなに誕生日が待ち遠しいと思ったのは、初めてかもしれない。
誕生日まで、毎日ワクワクできるなんて。
それだけで、あーもう幸せだ。