非日常。
この言葉が連想させることと言えば、それまでのわたしの生活には旅行ぐらいしかありませんでしたが、今思えば4年前の2か月間こそがまさにそれでした。
旅行ではありません。メルカリです。
来る日も来る日も、日がな一日ケータイ片手に梱包と発送を繰り返した2か月。
健康上の理由から、兄が決めていた半年後の廃業(縫製業)を1か月後に早めた日からわたしの非日常が始まりました。
工場内を空にするというのです。
巨大な裁断台や機械類は同業者に引き取ってもらうことになりましたが、問題はその他の縫製に関わる様々な物です。
うちは婦人服専門に加工していましたが、スカート一枚作るに生地と糸があれば済むというわけではありません。他にファスナー、接着芯、ウェスト芯、ウェストゴム、フック、スナップ、デザインによっては手付けの飾りボタンなどが要ります。
そういった製作に関わる材料が大量に残っていました。
糸ひとつ取っても種類が多様で、様々な用途に適するそれぞれの糸があります。多種類の色も揃っています。それも、パッケージを外してない新品も少なくなかったのです。
それら全てを兄は産業廃棄物として処分するというのです。
モノに執着しないわたしですが、これはもったいないと思いました。
もったいない。
欲しい人は手芸店でお金を出して買っています。
「処分はわたしに任せて。」 わたしが言うと、「期限は一か月」と念を押す兄。
そこでまず、友人知人に声をかけ工場まで来てもらい譲ることにしました。もちろん無料です。
「ご自由にお持ちください」
皆、レジ袋や箱を持参し持っていってくれました。中には見知った顔以外もありましたが、喜んでもらえてよかったです。
それでもまだ大量に残っています。
そこでアカウントを持っていたメルカリに出品することにしました。
メルカリは本やCDの購入に時々利用する程度でしたが、出品は初めてでした。

早朝家を出て工場に向かい、「商品」を車に詰め込むと自宅に帰り荷を下ろします。何度工場と自宅を往復したか分かりません。全てを移動させながら、同時に出品。
家中がモノで溢れ、縫製工場の匂いがしました。
メルカリへの投稿で時間のかかることは出品物の撮影と説明文を付けることです。
説明文はある程度テンプレートを作ることで手間を省けますが、撮影には気を遣いました。
実物と画像とでは色合いが変わるからです。
即買いしてくれる人が多かったのですが(迷っていると売れてしまう)、コメント欄に寄せられる質問やリクエストに応じることに割く時間も少なくありませんでした。
もったいないからと出品したはいいが、買い手が現れなかったら今や汚部屋と化したわたしの家をどうすればいいのかと不安でしたが、そんな心配は要りませんでした。
出品するそばから「SOLD」がつきます。
そりゃそうです。ひとつひとつ出品なぞしていられません。糸なら30本以上、ファスナーは箱単位でまとめて売り、オマケで10本つけて利益は1000円程度。
「縫製工場の廃業につき大量にあります。この後も出品します。」との文言に引かれて、趣味で手芸をする人以外の裁縫教室を営む人もわたしのページをチェックしていたようです。
メルカリへの手数料と送料を引くと利益がワンコインということもありましたが、とにかく捌けていけばいいのです。
わたし自身も2か月後に引っ越しを控えていたので自宅がゴミ屋敷化することだけは避けなければなりませんでした。
新品も混じった激安ショップ。薄利多売でドンドン売りました。
家事なんぞしていられません。期限付きですからおろそかになってもかまいません。こんな時、ひとり暮らしは迷惑をかける家族もなくていいです。
買い物に行ったスーパーでは段ボール箱をもらってくることも必須でした。発送に要りますからね。
発送のため日参した運送会社の人とは顔なじみになり、メルカリの達人と呼ばれもしました。
そんな日々を送ること二か月弱。、とうとう最後のひと箱が家から消えて、かすかに縫製工場の匂いが残るだけとなりました。
塵も積もればなんとやら。掃除を後回しにしてきた部屋の隅には綿埃・・・、も、そりゃ積りましたが、薄い利益も積もったのです・・・ウフフフフ♪
もったいない精神を発揮し頑張ったわたし、偉い。
兄一家、娘夫婦を誘って食事に出かけたわたし、リッパ、リッパ。

最初はこの程度でしたが売れることが分かって次第に一度の出品量が増え、この5倍を出すこともありました。

針は当然ですが全て新品です。1パッケージ500円ほどですからかなりお得です。
実は廃業品を売る傍ら・・・こんなものや

こんなものも売っていました。
