地下室。
カッターの刃が
キチキチ鳴った。
…先端は錆びている。安いカッター。
『アタシの安さといい勝負ね…』自嘲気味に眺める。
『アタシ』は徐にその刃を
…右手で握り締めた安物のカッターを
左腕の手首に突き立てた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ココハドコダ ソシテコノオレハダレダ
ニゲロニゲロ ドアヲアケロ
ナゼニワラウ ソンナアワレムヨウニミルナヨ
コワセコワセ キミガワルイ
マヒルニコゴエナガラ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
カッターの刃は
予想通り『アタシ』の腕の肉には勝てずに
白い肌にはじかれてしまった。
手首には赤い跡がうっすらと残るだけで、
それも数時間で消え失せるだろう。
【カッターなんかで手首を切っても、死ねません】
とマニュアル本にも書いてあったっけ…
しょせんは狂言、お芝居なんだ。
夢の中へ逃避することは、そのままそれが
『幼稚な死への憧れ』
であることを嫌でも示していた。
『アタシ』は立ち上がって事務机の引き出しを探った。
作業場には、ナイロンテープを断ち切る釜もあったけれど、いつもお昼をご馳走してくれるおじさんに悪いからやめた。
数日前に購入した新しいハサミは、
安全対策で刃先が丸みを帯びており、突き立ててもあまり意味が無いように思えた。
『アタシ』はハサミを広げて手首の一番柔らかいところを挟んだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
オシエテクレ イッタイナニヲスレバイイ
ニゲロニゲロ ナニガデキル?
ワルイユメサ ダレモカレモキズダラケデ
コワセコワセ サケンデクレ
ハキケニフルエナガラ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
パチンッ。
ハサミの刃先は皮膚の表面を悪戯に挟んで
擦り傷程度の赤い線からは一滴の血もしたたり落ちては来なかった。
床が濡れた。
ポタン、ポタンではなく、
ぼたぼたぼたぼた…と。
情けない痛みが伝わって来た瞬間、
自分の情けなさに
泣けた?
こんなんじゃダメだ、
やっぱりカッターでないと。
カタンッ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
サアカエロウ ツメタイチカシツ
アアユメノヨウ ヤサシイクラヤミ
サアカエロウ ツメタイチカシツ
チヘドヲハク モットキズヲフカクフカク
ニゲロニゲロ ナミダナガセ
コドウヲキケ ハハニダカレテシヌガイイ
コワセコワセ スベテカワル
ネムリタイ オマエノナカデ
オレヲコワセ スベテコワセ スベテカワル
スベテオワル
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
店長が出社してきた。
その日からしばらく、事務所から刃物が隠された。
作業場には
『アタシ』がいる時間には常に誰かがいるようになった。
『アタシ』は、
事務所の奥で
床を眺めて過ごした。
【幼稚な戯れ】は
『アタシ』の根性無しの表れで、
『アタシ』はそれを認めたくはないけれど
手首に立派な傷痕が遺る人をたまに見かけると
自分ひとりじゃないんだなと思うし、
終わるための準備はまだ何もしていないんだなと気付く。
ずっと地下室にいられたら、
楽になれるんだろうかなれたんだろうか?
それはいまだに
わからない、けど…
キチキチ鳴った。
…先端は錆びている。安いカッター。
『アタシの安さといい勝負ね…』自嘲気味に眺める。
『アタシ』は徐にその刃を
…右手で握り締めた安物のカッターを
左腕の手首に突き立てた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ココハドコダ ソシテコノオレハダレダ
ニゲロニゲロ ドアヲアケロ
ナゼニワラウ ソンナアワレムヨウニミルナヨ
コワセコワセ キミガワルイ
マヒルニコゴエナガラ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
カッターの刃は
予想通り『アタシ』の腕の肉には勝てずに
白い肌にはじかれてしまった。
手首には赤い跡がうっすらと残るだけで、
それも数時間で消え失せるだろう。
【カッターなんかで手首を切っても、死ねません】
とマニュアル本にも書いてあったっけ…
しょせんは狂言、お芝居なんだ。
夢の中へ逃避することは、そのままそれが
『幼稚な死への憧れ』
であることを嫌でも示していた。
『アタシ』は立ち上がって事務机の引き出しを探った。
作業場には、ナイロンテープを断ち切る釜もあったけれど、いつもお昼をご馳走してくれるおじさんに悪いからやめた。
数日前に購入した新しいハサミは、
安全対策で刃先が丸みを帯びており、突き立ててもあまり意味が無いように思えた。
『アタシ』はハサミを広げて手首の一番柔らかいところを挟んだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
オシエテクレ イッタイナニヲスレバイイ
ニゲロニゲロ ナニガデキル?
ワルイユメサ ダレモカレモキズダラケデ
コワセコワセ サケンデクレ
ハキケニフルエナガラ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
パチンッ。
ハサミの刃先は皮膚の表面を悪戯に挟んで
擦り傷程度の赤い線からは一滴の血もしたたり落ちては来なかった。
床が濡れた。
ポタン、ポタンではなく、
ぼたぼたぼたぼた…と。
情けない痛みが伝わって来た瞬間、
自分の情けなさに
泣けた?
こんなんじゃダメだ、
やっぱりカッターでないと。
カタンッ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
サアカエロウ ツメタイチカシツ
アアユメノヨウ ヤサシイクラヤミ
サアカエロウ ツメタイチカシツ
チヘドヲハク モットキズヲフカクフカク
ニゲロニゲロ ナミダナガセ
コドウヲキケ ハハニダカレテシヌガイイ
コワセコワセ スベテカワル
ネムリタイ オマエノナカデ
オレヲコワセ スベテコワセ スベテカワル
スベテオワル
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
店長が出社してきた。
その日からしばらく、事務所から刃物が隠された。
作業場には
『アタシ』がいる時間には常に誰かがいるようになった。
『アタシ』は、
事務所の奥で
床を眺めて過ごした。
【幼稚な戯れ】は
『アタシ』の根性無しの表れで、
『アタシ』はそれを認めたくはないけれど
手首に立派な傷痕が遺る人をたまに見かけると
自分ひとりじゃないんだなと思うし、
終わるための準備はまだ何もしていないんだなと気付く。
ずっと地下室にいられたら、
楽になれるんだろうかなれたんだろうか?
それはいまだに
わからない、けど…