黒い服☆彡

…気付いたら、
ベッドに寝かされていました。
病院?
とても静かな。
見つめる先は、殺風景な天井ばかり。
私、ウゴケナイミタイ?
…
仲良しのT美から、
「ゎたしぃ、黒のワンピが欲しいの♪いっしょに見に行かない?」
と誘われた時、私は正直あんまり興味が無かったの。
(だってT美、黒似合わないぢゃん!)
T美はどちらかというと…つり目に垂れ眉、鼻は天井向いていて唇はめくれてて肌はニキビだらけで!
でも普段はPinkのお嬢様系…たまにオーガンジーのリボンしてたりしてるのに。
「うん、いいよ」
横浜のシァルやビブレじゃなくて川崎で、
というのも何か変だったの。
いつもは二人でPINKHOUSE見たりするのにね。
パタンッ!
病室のドアが開いた(ようだった、私には見えないので)
パタパタパタ…
看護婦さんだ。
顔が近付く。
!
視界が暗くなった。
目を閉じさせてくれたらしい。
浅いのか深いのかわからない暗闇の静寂で、
私は
「Pクンに会いたいなぁ」と思っていたの。
Pクンは朝、同じ電車に乗ってる他の男子校の生徒で、私は彼のちょっと短く改造してある短ランに一目惚れ…♪
そうそう、Pクンの名前とかはT美が調べてくれたんだよね。
知り合いがいるらしくってさ。
あぁ、
会いたいな………
なんとなく入院も慣れてきたみたい。
毎朝、看護婦さんが来てなんかしてって、たぶん
「おはよう」みたいなことを語りかけてくれてるんじゃないかな。
何も聞こえないけど。
ママは毎日来てくれる。
…毎回、泣いてる。。。
夜はパパが仕事帰りに寄ってくれる…けど…眉間の皺が深くなったね、パパ。
あと、
毎日来るヒト。
T美。
制服着てるから学校帰り?クラブはいいのかなー、
でもあんまり…
あなたの顔は見たくないわ?なんでかな。
去りぎわに
クスクス笑ってくの。
私には彼女の頬に浮かぶエクボしか見えないけど、必ず笑ってる!
親友ならたまにはPクンでも連れてきてくれればいいのに。(ムリだよねぇ、面識無いんだもん)
…あれから何日経ったのかな?
新聞もニュースも雑誌も見ないから聞こえないからわかんないや。
ねえ、
今日は何月何日?
楽しみにしていたPクンの学校の文化祭は終わっちゃったのかなぁ。
そうだ。
最近、T美が来ないの。
あの不気味な微笑みを見なくて済むようになったから、それはそれでいいんだけど。
なんで奴の笑みがムカつくんだろう?
私、なんか忘れてる…?
ガクッ!ガクガクガタン!
視界が動いた。
体が横になったみたい。
景色が見える。
天井以外の。
真剣な顔をしたいつも来る看護婦さん、
あ、お医者さんはこんなオヤジかぁー、残念(笑)
部屋を移ったみたいよ。
なんか、機械がたくさんある部屋…
音は聞こえないけど、
なんか振動は伝わってくる。
私、この振動イヤかも。
ドクン…ドクン…ドクン…
って。
久しぶりに「痛いな」って感じた。
久しぶりに…
真っ暗だった。
突然、
パァッと明るくなった。
また暗くなった。
思い出したの。
何があったのか。
あの日、
T美と川崎に行って黒のワンピ見て回ったけど、結局気に入るのが無くて。
で、
「海に行こうよ」
って、海じゃなくて運河なんだけどー(笑)
私鉄の支線の終点で私たちは降りて、
陸橋の上で後ろを向いたT美が
「…あのさー、Pクンのことなんだけどぉ。」
「これ…」
振り向きざまに何かを乗せた手のひらを私に向けてきたの。
ん、なぁに?
よく見ようとして顔を近付けたその時、
誰かが私の背中を押したの。
…落下する私に
T美が微笑んだ。
だからあの娘の笑顔はイヤなの。
また、視界が明るくなった。
誰かが私をのぞいている。
ハンカチでわざとらしく目頭を押さえた、
黒のワンピを着たオンナ。
ハンカチの下で、
あのイヤラシイ微笑みがのぞいてる。
T美だった。
横には…
会いたかったPクンがいた!
喜びも束の間、
つながれた二人の手の間の数珠が目に入った瞬間、
よくわからないけれど
わからないことはわからないままでいたほうが幸せよと、
誰かが囁いた。
私は閉じた。
目を?
心を?
真実を?
最期に目に焼き付いた、
T美の似合わない黒のワンピ姿を……………