孤高のメス
2010年 日本映画
監督 成島出(なるしまいずる)
脚本 加藤正人
原作 高山路燗「メスよ輝け‼︎」
出演 堤真一
夏川結衣
⚫︎あらすじ
1989年、地方都市の“さざなみ市民病院”に、外科医の当麻鉄彦(堤真一)が赴任してくる
そこは大学病院への依存やリスク回避の姿勢が強く、難しい手術は避けられ、患者がたらい回しにされるのが常態化していた
当麻は「出世よりも患者を救いたい」と淡々と信念を貫き、緊急手術を的確にこなしていく
その姿勢は、病院内に閉塞感を生んでいた関係者に少しずつ衝撃を与えていく
看護師の中村浪子(夏川結衣)は、当麻の真摯な姿を目の当たりにし、それまで抱えていた焦燥や無力感から解放され、自らの看護師としての誇りと意欲を取り戻していく
そんなある日、市長が末期の肝硬変を患い搬送されてくる
通常の生体肝移植では適合せず、家族も葛藤する中、当麻は脳死肝移植という国内ではまだ違法の選択肢に踏み切る決断をする
脳死の判断、遺族の苦悩、医療倫理の問題と向き合いながら、当麻は患者と向き合い、移植手術に挑む
⚫︎感想
医者も人間だから色々な人がいるんだろうなぁ……って思いましたね。
市民病院にいるヒドい医師の野本(生瀬勝久)は、まだ転移して無いガンを、転移して手遅れだったと家族に説明します。
こんな酷い医師なんているの?
いるんでしょうねぇ。どんな職業にも良い人、悪い人は必ずいるんです。ただ、教員、警察官、医師、弁護士、宗教家などに、そんな人はいるはずはない!という思い込みがあるだけなんだと思います。
もちろん、ちゃんとした医師や教員などがほとんどだと思いたいですが、そうでもないようなニュースもよく耳にします。
看護師の中村(夏川結衣)は、そんな病院で長年にわたりイヤイヤ働いていました。それまでの中村は手術器具の扱いも乱雑で汚い感じでしたが、誠実な当麻(堤真一)が来てからは仕事に誇りを持つようになっていきます。
孤高の医師、当麻は本当に患者のことを考えて、ご家族の話もよく聞いて、何とかして患者を救えないかと考える医師でした。
そのために、まだ法律が定まらない脳死患者からの肝臓移植に踏み切るのです。
なぜなら当麻自身が幼い頃、虫垂炎の母親を地方病院での“たらい回し”で亡くすという過去の経験がありました。ですから当麻は何としても救える患者を救いたいと思っているのです。
これらの内容は看護師の中村の日記に綴られていて、中村の息子は後に医師となり、当麻のいる地方病院に赴任して行くんです。
きっと看護師の中村は当麻先生が好きだったんでしょうねぇ…
⚫︎孤高とは
俗世間から離れて自分の信念や理想を追求し、他者と群れることを好まず、自分の道を歩む人のことを指します。
一見孤独で寂しい印象を持つかもしれませんが、魅力的な部分も多く、尊敬や憧れの対象となることもあります。
そして多くの人が求める成功や名誉、物質的な豊かさなどに執着せず、自分の内面的な価値観を重視するのです。
孤独は、寂しさや孤立感を伴う心の状態を指しますが、孤高は、自立した強さや誇りを持ち、自分の信念を貫くことを意味します。
⚫︎生体肝移植と脳死肝移植
生体肝移植は健康な生きている人からの肝臓移植で、脳死肝移植は脳死判定された(死者)からの肝臓全体の移植です。
日本では2010年から家族の同意があれば脳死肝移植が可能になりました。1989年の当麻先生の脳死肝移植は違法行為だったんですねぇ。
⚫︎地方病院でのたらい回し
当時は医師不足・設備不足・リスク回避・大学医局制度などが背景にあって、過去には地方病院で患者のたらい回しが頻繁に起きていました。現在でも一部地域では課題が残っています。
⚫︎大学病院の支配下とは
大学病院の医局は、教育・研究だけでなく、医師の人事や派遣先(関連病院)を管理する実質的な医師派遣センターのような役割を果たしていました。
医局(いきょく)とは、大学医学部の中にある診療科ごとの組織です。たとえば、外科医局、内科医局、産婦人科医局などがあります。
地方の中小病院は、自前で医師を確保するのが難しいため、大学の医局から医師を派遣してもらっていました。
そのため医局内の人事異動やトラブル、あるいは教授の交代により、地方病院から一斉に医師が引き上げられる「医局引き上げ」という事態が発生したりしていました。
そういう時代の医療ドラマだったんですね。全てが改善されてはいないのでしょうが、今後よくなることを願っております。
私は医師や看護師を聖職だと思っています。毎日のように病気の人と接するのは、肉体的にも精神的にも辛い仕事だと思います。ですから報酬が高いのは当たり前、待遇が改善されるのも当たり前だと思います。
ですので、どうか野本先生(生瀬勝久)のような酷い医師が減ることを祈っております。
当麻先生は現代の赤ひげでした…
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