クライマーズ・ハイ


2008年 日本映画

監督 原田眞人

脚本 加藤正人

原作 横山秀夫

出演 堤真一

   堺雅人

   滝藤賢一

   尾野真千子

   高嶋政宏

   小澤征爾


⚫︎あらすじ


1985年8月12日、日本航空123便が群馬県の御巣鷹山に墜落し、524名の乗客乗員が犠牲になる未曾有の大事故が発生


北関東新聞社の悠木は、以前に群馬で起きた「大久保・連赤」依頼となる大事件の全権デスクを命じられる


その日、悠木は谷川岳の登頂を親友の安西と計画していたが、その予定は事故のために消え去る


悠木は事故現場や関係者に関する情報を集める中で、社内の権力争いや仲間の過労による入院、同僚との確執など、厳しい現実に直面していた


事故現場で取材を続ける県警キャップの佐山の報告が上司の妨害で揉み消されるなど、報道の現場も混乱と闘いの連続だった


悠木は興奮状態に陥るがゆえのミスを避けつつ、未確定情報やスクープ記事の扱いに慎重になり、事故の真実を伝える責任感に苦悩する


最終的に確実な裏付けができなかったスクープは掲載を見送りになってしまうが、翌日に他社が先に報じてしまう


事故から年月が経ち、悠木はかつて安西と登るはずだった谷川岳に安西の息子と登り、心の整理と家族との新たな関係を模索する



⚫︎感想


クライマーズ・ハイとは、登山者の興奮状態が極限まで達し、恐怖感が麻痺してしまう状態のことだそうです。


北関東新聞社に勤める悠木の趣味は登山で、友人の安西と山に登る約束をしていました。しかし登山当日に日航機の墜落事故が起きてしまい行けなくなってしまいます。


日航123便の墜落事故という、大きな事故が地元の群馬で起きたということで、慌ただしく動く新聞記者たちを描いています。


ただ、日航機墜落事故と北関東新聞社の葛藤を描いた題名が“クライマーズ・ハイ”なの?という感じもしました。


登山者の興奮状態と、大事件を前にした新聞記者たちの興奮状態をリンクさせたそうです。


当時の新聞記者たちの連絡手段はポケベルしか無く、電話の無い北関東新聞の記者たちは、夜中に人の家の電話を借りて連絡していました。ですが大きな新聞社は電話付きの車で現場に来ていました。


作中に「大久保連赤(おおくぼれんせき)」?という言葉が出てきます。大久保清と連合赤軍のことだそうです。


大久保清とは、1971年に群馬県で起きた女性8人の連続殺人事件の犯人です。

連合赤軍(共産主義者同盟赤軍派と京浜安保共闘革命左派の連合)とは、1971年に群馬県で12人もの大量リンチ殺人事件が起きました。生き残りのメンバーは後に浅間山荘事件を起こします。群馬県って、けっこう大きな事件が起きているんですね。


⚫︎日本航空123便機墜落事故

1985年(昭和60年)8月12日、520人の死者を出し、日本の民間航空史上最悪の事故であると共に、単独機としては世界最悪の航空事故です。

原因は、機体尾部修理不良と設計上の欠陥であり、特に機体修理中に使用されたリベットの留め方が不適切だったことが明らかとなりました。

この時代にニュースを見た人たちは皆、飛行機が危ない乗り物だと思ったことは間違いありません。

ですが、航空史上未曾有の犠牲者を出した日航機123便の事故原因には、諸説あります。

事故調は隔壁破壊と関連して事故機に急減圧があったとしています。しかし、運航関係者の間には急減圧はなかったという意見もあります。


映画「クライマーズハイ」の中でも

「長野、群馬どっちよ?」

「米軍と自衛隊が方位出してるでしょ?」

「県警の人が山に入んなって言ってんだよね!」

「自衛隊ヘリ、群馬でサーチライト3回点滅、もうわかってんだよ!」

「俺たちメディアを現場に行かせないつもりなのか!」

と、県警や自衛隊が記者たちを現場に行かせないようにしている感じがしました。


朝になって群馬県の御巣鷹山だと判明してからも、

「夜は危ないから山に入るなと地元消防団が言ったんじゃないんですか?」

と記者が言うと

「いや俺たちじゃねぇ、県警の機動隊だ。この辺は俺たちの仕事場だ!夜のうちに出発してれば、もう20人や30人は助けられた…」

と、現場をよく知る地元の消防団たちも県警に現場に行くのを阻止されたと悔やんでいるシーンがありました。


「雑観を載せるまでにはまだ時間がある」と言うことで現場を実際に見てきた記者たちは25時までに戻ろうとしていました。

しかし、上が許さず、今日はもう締め切りだと言うんです。

13年前の「連合赤軍事件」のスター記者たちの嫉妬で、今回の「日航機墜落事故」の雑観を載せないようにしたんです。(でも映画上の表向きはね…とも思いました。本当は上に違う厚力が掛かっていたんじゃない?と)


0:30に雑観が届きます。その内容は凄まじいものでした「ちぎれて焼けた手足や胴体…」しかし雑観は載りませんでした。


他社の記者たちは噂します。

「納得いかない、絶対に裏がある。隔壁なんて、そんなレベルじゃないでしょ、あの事故。事故調の言ってることは無茶苦茶だし、国家的な陰謀だね、これは!」


当日現場に登った記者は言います。「初日じゃなきゃ登ったことになりませんよ。県警や自衛隊が遺体をあっという間に片付けちまったんですから。とにかくあたり一面死体だらけで肉片が飛び散っていた」



確かに本筋は地方新聞社の社員同士の角質や、新聞社同士の戦いみたいな内容が描かれているんですけど、よくよく映画をもう一度見直してみると、飛行機事故自体に各新聞社の記者が、何かの違和感を感じているんです。


実は北関東新聞は、先に圧力隔壁のネタをスクープしていたんですが、何かがおかしい…出来すぎた話しだと言う気がする…ということで、一面に出せなかったんです。

翌日、毎日新聞が一面トップに圧力隔壁破損のネタを上げていました。

悠木が「すまなかった」と謝ると、ネタをスクープした記者は「いえ、悠木さんの判断は間違ってなかった」と言って、疲れ切って仰向けになるんです。


そして映画の最後にテロップが出ます。


航空史上未曾有の犠牲者を出した日航機123便の事故原因には、諸説がある。事故調は隔壁破壊と関連して事故機に急減圧があったとしている。しかし、運行関係者の間には急減圧はなかったという意見もある。

再調査を望む声は、いまだ止まない。


当時から何だか裏があるような事故だったんですね。