会話表現とか、文中ではけっこうBecauseが抜けることがあります。

「ごめん、君を彼女と間違えちゃったんだ」
I'm very sorry because I mistook you for her.

I'm very sorry I mistook you for her.

その代わりに「;」等を置いたり、「.」を一回打って、理由の文章をあらためて書き始める方法もあります。

I'm very sorry;I mistook you for her.

I'm very sorry. I mistook you for her.

文の流れがはっきりわかる場合、こういう簡明な表現が好まれますね。


でも、このBecauseで始まる従節が主語になる文章が、たまに見られる時があります。

「私を彼女と間違えたからって、そう大した問題じゃないわ」
Because you mistook me for her doesn't matter so much.

ふつうならbecause節は主節を修飾する副詞節。

これに対して、上の文のように主語になってしまうと、結局このbecause節が主語の機能、品詞の機能で言えば名詞となります。

つまりbecause節が副詞節でなく名詞節となってしまうわけですね。
これはふつう、間違った文法とされているモノで、ジーニアス英和大辞典でもこの用法を『非標準』としています。

だが実際にはもちろん時折ですが、こうした文章が現れます。
私が初めてこの文章を見つけた時は、どういう考え方をしていけばよいのかわかりませんでした。


ジーニアス英和大辞典には、この文章の考え方を

Because you mistook me for her (, it[that]) doesn't matter so much.

と、()内を補足して説明しています。

なるほどこれならわかる。


注意すべきは、あくまでもこの構文の場合、(because節ではなく)主節の方は必ず否定文になることです。

そして
Aしたから(といって)Bということになるわけではない
という意味の流れを作りますね。


何でこんな意味になるかというと、この文は以下の説明のようなbecauseの使い方になるためです。

because節を従節に持ち、主節が否定文の構文の場合、意味の取り方はふたとおりあって、たとえば

I didin't come because it was reining yesterday.

という文章は、
「昨日雨が降っていたので来なかった」
という意味ですね。

そしてもうひとつありますが、これが重要。
雨が降ったからといって来たわけではない
という具合に、結果として和訳の2通りに取ることができます。

Not every~.とか、Not all~.という、部分否定の表現によく似ています。
なので私はこれを「because否定」などと呼びたいです 笑。
以下、そんなわけで一応これをbecause否定と呼んでハナシを続けます。


2番目の和訳、この一文ではいかにもこじつけ臭いですが、長文の中で前後関係に特殊な意味の流れがある場合には起こり得る解釈でしょう。

ここで上と下の解釈の違いの根源となるのは何かというと、主節にある否定語(ここではnot)です。

上の解釈は、notがかかる相手が、その直後の動詞comeだけになりますが、下の解釈だと、notのかかる相手はbecause節となり、notの直後のcomeを否定して「来なかった」ということにならないということ。

ちょっと難しいですね。


じゃあ、両者はどこで見分けるか?
ということになりますが、まず一つは上に説明したように、

・文章中の中で用いる場合には文脈から判断

するということ。

もうひとつは、

・because否定の時には、because節が文中から始まっても、becauseの前に「,」はつかない

ということです。
これは主節にあるnotが、because節を修飾することになるわけなので、「修飾する、されるもの同士をくっつけるべきだ!離しちゃまずい!」

という理由で覚えておくと良いと思います。

もちろんbecause節が先頭に立って、主節が後続する時には「,」がつきますし、主節が先行してbecause文が後ろに回る時でも、「because否定」ではなくふつうの「AなのでBしない(しなかった)」文になることもあります。


そして実はこれ、大学入試でもよく出てくる文構造です。

なので大学入試問題で、


『A文(=否定文)+(「,」無し)because文.』


が出てきたら、即刻because否定を考えていくとよいでしょう。



最後にBecause節が主語になる文章のハナシに戻りますが、確かにこの文章、一見ややこしくて出くわした時は当惑します。

だが、たとえばのハナシ、このbecauseをthatと入れ替え、that節が主節に回ったものと考えるとどうでしょうか?

that節は基本的にもともと名詞節「~ということ」だし、けっこうスッキリ考えが及ぶように感じます。

もちろんbecause節とthat節の意味的、機能的な違いはあるとしても、一つにはbecauseが名詞節として見立てられるように英語が変わってきている、そう考えられるのかも知れません。


日本語も英語も時代や年月の変遷と共に意味も単語や文法かわってくるし、言語というくくりの中ではよく見られること。


今のところbecause否定として、主節が否定文のみの場合に限られるbecause節の名詞節「的」な用法ですが、もしかしたら近い将来、because節がそうした束縛を離れて堂々と名詞節として君臨することになるのかも知れない、というのが私の妄想です 笑。
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