大津祐樹 「いまはプレーがしたい。それだけです」 | Shining Star★+。*

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[連載インタビュー・海を渡った志士のいま第4回] 「いまはプレーがしたい。それだけです」(大津祐樹)
 
 かつてJリーグに所属し、現在は海外でプレーする選手たちがいる。自らの可能性を懸けた者。戦力外になった結果、海外を選んだ者。あるいは日本を海外として選び、母国に戻った者もいる。シリーズインタビュー「海を渡った志士のいま」。第4回はオランダ・エールステディビジ(2部)・VVVフェンロでプレーする元・柏の大津祐樹。11年夏に柏からドイツのボルシアMGに移籍して以来、3年が経とうとしている。海外で生活し、戦う中で成長を感じていた最中の昨年12月に大けがを負った。リハビリに励む日々の中であらためて噛み締めるサッカーへの真摯な思いとは。
 
聞き手:田中 直希
取材日:5月30日
 
 
順調に進む中、負った大けが
 
——現在プレーしている、オランダ2部リーグ、エールステディビジというのはどういうリーグですか?
 
「リーグとしてのレベルを、1部と比べるのは難しいところはありますよね。ただ、中にも良い選手はいる。個の部分が優れている選手が多いという印象です。荒削りというか、何かが突出している選手はいますね。それに、『上を目指したい!』という雰囲気が感じられます。昇格したい、もっと上のディビジョンでプレーしたいという思いを持ってプレーしている感じ。そうは言っても、自分のプレーを軸にサッカーを考えているので、あまり周りの環境とかは気にならないんですよね。2部だから、というのも考えたことがないですし」
 
 
——今季は、1部昇格を最大の目標として臨んだシーズンでした。結果として、チームは5位。プレーオフに進んだものの、勝ち切れませんでした。
 
「今シーズンは、(リンブルフセ・)ダービーでけがをしてしまうまで(※)比較的、試合に出ることができていました。中心選手として期待もされていたとも感じます。その中で、けがをしてしまったのは本当に残念でした」
 
※2013年12月15日、エールステディビジ・MVV戦で右足アキレス腱を断裂した
 
 
——VVVフェンロに移籍して2シーズン目、一番のニュースは?
 
「それはもう、けがしかないですね。自分の中ですごく順調に進んでいて、調子が良かったときに大きなけがをしてしまった。プレーができなくなった期間を長く過ごしたというのは、いま振り返ると良い経験だと思えますが、それが苦しかったのも事実です。でも、その後のトレーニングでパワーアップしたと思いますし、復帰したときにどんなプレーができるかいまから楽しみです」
 
 
——手術痕が残ったんじゃないですか?
 
「このけががあったから、成長できたと思えるようにしたい。まあいいんじゃないですか。キズが残ったほうがカッコいいですよ…。もうこれ、外に出して、見せていってやろうと思って(笑)。まあそれは、冗談ですけど…」
 
 
強く生きないといけない
 
——ドイツ・ブンデスリーガのボルシアMG時代を含めると欧州での生活は3年になります。さまざまな文化圏から集まった選手たちと接していて、感じることは?
 
「今まで日本に住んで暮らしていたときと、まったく違う生活を送っています。大雑把な表現をすると、日本人って家では靴を脱ぎますよね。それは、海外では普通のことではない。真逆なわけです。これが当たり前だと思っていたことが、環境の変化によって非常識になる。それはサッカーだけではなく、生活している中でも感じること。そういう意味では、人として大らかになりますね。『これが正しい』と思っていたのが、『そういう意見もあるんだ。ああ、こんなやり方もあるのね』と、理解してあげられるようになりますから。一つの意見だけが正しいのではないと思えたんです。世界に出るということは、人間的にも成長できるきっかけになると感じます」
 
 
——具体的に、どんな状況で違いを感じましたか?
 
「なんだか、そういうエピソードがパッと浮かぶ感じではないんですよ。周りと接しているときの感覚が違うっていうんですかね…」
 
 
——海外に行くと、人間としての器が大きくなる、とはよく言われる言葉です。
 
「その一面はあると思います。いろいろな角度から物事を見られるようになるし、さまざまなことを知ることができたと思うので。日本人って、内気じゃないですか。海外の選手たちと話したあとに日本人の選手と話すと、『内気だな』って感じるんです。向こうの人たちって、強気だから。『俺だ、俺だ!』っていう感じでグイグイくる。その中にいると、自分も強気でいないといけない。もちろん、人の話は聞いた上で、ですが。日本と違うなって思うのは、そういう性格のところ。日本はやっぱり島国だなあと感じました」
 
 
——オランダは多国籍文化ですし、サッカークラブには全世界から選手が集まりますもんね。
 
「内気な日本人が悪いということではないですよ。(日本人と海外の人を)比べたときに、勝ち気な人が多いなって思うし、人間的に強くなっていかないといけない。今まではあまり気にしなかったことですが、『強く生きないといけない』と感じながら生活しています」
 
 
——それは、サッカーにおいても…。
 
「確実に必要ですね。強いメンタリティーを持っていないといけない。いろいろな国の選手が集まってきていて、そのぶん、いろいろな考えがある中で自分を出していくためには」
 
 
——対日本人、対外国人で使い分けをしているのですか?
 
「日本人に対してもガツガツした感じで接していたら、ちょっとやり過ぎな感じになっちゃいますからね(笑)。とにかく向こうの人たちは、意志が強い。人に流されないし、ブレない。『自分の選択したプレーは間違っていないんだ』という意見を強く持っているんだなと、一緒にプレーしていても感じます。そういう人たちに対して、自分の意志を示して、意見を伝えていかないと、『弱い人物』と見なされてしまう。だから、向こうでやっていく上で、個人の主張は本当に大事なんです。『俺はこう思うんだ』、『これが大津祐樹だ』というのを出していかないといけない。それはプレー中でも、オフ・ザ・ピッチでも。自分の存在を証明して、自分の立ち位置を決めていくことが必要になります。だからこそ自分に自信を持たないといけないし、『自分以外に、誰が自分のことを信じてあげられるんだ』という思いでいまはやっています。そういうのは、外国人のメンタリティーなのかなと感じますね」
 
 
——日本人は「成功か失敗か」と頭の中で考えて控え目になる。海外は「挑戦するかしないか」で考えて前向きになる、というのは聞いたことがあります。
 
「間違いなく、メンタリティーの強さは海外のほうが上だし、勉強になっています。その環境の中で生活していることで、今まで経験したことのない考えが頭の中に浮かぶんです。プレーでも、今までになかった(挑戦的な)選択肢が出てくる。日本にいたら、そういうことは感じられないじゃないですか。いつも景色が同じですし、変化がないですから、違う選択肢が生まれにくい」
 
 
——それによって、自分の性格に変化が出たというのはある?
 
「ここ何年か、という意味ではそこまでは感じないですね。一番は、主張する部分が変わったということ」
 
 
いろいろな経験がいまにつながる
 
——その充実感の最大値を感じるのは…。
 
「ゴールですね。得点に絡むことはチームにとってもプラスですから。点を決めると、やはり気持ちが盛り上がります。プレーが吹っ切れるきっかけになって、ノってくる感じ。ゴールには、それだけ力があると思うので。そのためにも、まずはピッチに立たないと始まらない。そこから自分の色を出していくためにも、試合に出ることがスタートです」
 
 
——では、オフ・ザ・ピッチでの充実を感じるのは?
 
「それはもう、寝ているときです。あれ、幸せなんですよねえ(笑)。二度寝も好きですし…。あ、最近、運転しているときが結構好きだと気付きました。リハビリなどのトレーニングで日本に何カ月かいて、この前、オランダに戻ったときに感じたんです。『あ、車の中の時間って結構良いな』って」
 
 
——すべてのことにポジティブな大津祐樹選手の性格というのは、いつ形成されたと思いますか?
 
「プロに入ってからいろいろな経験をさせてもらいました。その経験が、いまにつながっています。たくさんの人と接して、いろいろな場面を経験して、自分なりに感じることがありました。その中でも、良い部分だけを厳選していって、自分の中に取り入れていったという感じです。これから、また、何年かで少しずつ変わっていく部分もあると思います」
 
 
——けがから復帰したあとのことについては?
 
「とにかく、いまはプレーがしたい。それだけです。どこのチームになるかなどはまだ決まっていないのですが、自分がプレーする場所で全力を出すだけです」
 
 
——ではいま思う、「こういうプレーヤーになりたい」という考えはありますか?
 
「どんなプレーヤーになりたいんだろう、俺…。やっぱり、サッカーをうまくなりたい。まだまだ自分は成長できると思っています。常に、そのときの自分よりも成長していきたいですね。それが、うまいであるとか、強いということにつながっていくと思うので」
 
 
——大津選手が考える、サッカー選手にとっての一番の高みとは?
 
「それは、バロンドールが一番だと思います。バロンドールを獲るくらいの人だったら、W杯でも結果を残せると思いますしね。自分としては、まず自分を極めていく。そうしたら、ピッチでも結果を出せると思うし、そういうところ(バロンドール)にも近付けるのかなと思います」
 
 
——次のW杯は?
 
「それはもちろん、狙います。いまはそのための下準備の期間です!」
 
 
(プロフィール)
大津 祐樹(おおつ・ゆうき)
1990年3月24日生まれ、24歳。茨城県水戸市出身。180cm/73kg。鹿島ノルテJY→成立学園高を経て、2008年柏に加入。11年7月にドイツ・ブンデスリーガ・ボルシアMG、12年8月にオランダ・エールディビジ(当時)のVVVフェンロに移籍。12年にはロンドン五輪グループリーグでスペインを破る決勝点を挙げている。13年、日本代表に初招集。J1通算57試合出場6得点、J2通算9試合出場1得点。日本代表Aマッチ2試合出場。ブンデスリーガ1部3試合出場。エールディビジ22試合出場1得点、エールステディビジ20試合出場4得点。