その日は、新しい会社に就職して、確か3日目だったと思います。
気がつけば、僕は、オフィスの近所の公園のベンチに座り、温かい春の日差しに囲まれながら、朝から缶チューハイを何本も調子よく空けていました
その会社に入るまで、約半年ほど別の企業に勤務していました。
前の会社ではマーケティングの仕事を担当していましたが、毎日まいにち痛飲する生活がたたって、約半年の在籍期間の中ほどに1カ月ほどの入院を経験していました。
慢性膵炎をこじらせての、急性重篤膵炎。
もちろん原因は過度の飲酒。
それも常習的な飲酒過多ですね。
「急性重篤膵炎」
東京都指定の難病。
・・・その状態になれば、3人のうち1人は死ぬ、と、いう、そんな容態に陥り、自ら電話して救急車で病院に運ばれることとなりました。
入院翌日から5日間の意識不明・危篤状態。
奇跡的に回復し、1カ月の治療を経て、僕はその会社に復帰しました。
復帰後1カ月くらいは、流石に?お酒に手は出していなかったのですが・・・。
その頃、僕はまだ、この病気、そう、
「アルコール依存症」
に関する知識がなかったものだから、一か月も禁酒した頃には、
「もうそろそろ飲んでいいかな?今度は大丈夫。うまい具合にコントロールして無茶な飲み方はしないから」
など眠たいこと言いながら、そう、そんな言い訳を自分に対してする、ということは、相当に病気が進行しているということであることなど、まったく想像もつかないまま、また、お酒を飲み始めていました。
最初は一杯だけ。
それも、一日飲んだら翌日は飲まずに済ませることができました。
「ええやん。ええ感じやん。いけるやん俺。コントロールできてるやん!」
とかなんとか思いつつ、そんな状態、そんなちょい飲みを、3日、5日と続けて、1週間、10日。
あっという間に、毎日お酒に手を出す状態に戻っていました。
もう10日を過ぎる頃には、急性重篤膵炎で緊急入院して危篤になったその前の時期と同様に、朝からお酒を飲んで通勤するようになっていました。
朝から飲んで出勤。
オフィスに着いて1時間、いや30分もしなうちに、身体がぶるぶる震えるような妙な悪寒を感じます。
今から思い返すと、それは「退液症状」。「離脱症」。いわゆる「禁断症状」というやつですね。
急いで外に出て、ガソリン補給。
自動販売機の前に走って、チューハイの缶を購入して一気飲み。
あっというまに身体が平穏を取り戻します。
一日、3度、4度もそれを繰り返しているうちに、夕方には泥酔状態。
そのままふらふらと帰宅して、家で泥のように眠ります。
お酒を飲んでの睡眠は、とても質の悪い睡眠なので、翌日は午前4時頃にはもう目覚めてしまいます。
そのまま起きだして、先ずは、ガソリン補給。
夜中というか早朝というか、まだ暗いうちにコンビニに走ってお酒を買って一気飲み。
一杯目はなかなか喉を通りません。
口に含むのですが、げほげほうげー、っとなって大半は吐き出してしまいます。
2本目をぷしゅっ!
ようやく喉を通ります。
ごくごくごく。
一気に身体が楽になるのを感じます。
朝、出勤する8時前には、もう、5~6本飲んでしまって、出来上がり気味で電車に。
オフィスに着いたら、また、頃合いを見計らって自走販売機に。
入院以前の生活に完全に戻っていました。
そんな生活を続けるうちに、オフィスに出勤するのも苦痛になって、自ら辞表を出してその会社辞めることとなってしまいました。
自宅に籠って飲み続ける日々。
あっという間に、また膵臓を悪くし入院生活を送ります。
慢性膵炎で数週間の入院。
膵炎の治療は絶飲食状態で点滴を受けるだけ。
当然病院ではお酒が飲めませんので、一気に身体からお酒が抜けて行きます。
入院生活中に新聞広告で見つけた求人に応募。
入院中禁酒しているものだから、退院後しばらくは「しらふの生活」が続きます。
素面でいるときは、人格も崩壊しておらず(当たり前。笑)、普通の受け答えもできるので、なんとかかんとか、その応募した新しい会社に潜り込むことができました。
東京でもその名前を出せば、誰でも知っている有名な企業に、なんとか席を見つけて、今後はここでコツコツ真面目にやっていこう、と、そう決心します。
何度か面接を受けて、内定通知をもらって一安心。
手続きなどの関係で、2週間ほどのしばしのモラトリアム。
もちろん、「もうお酒で失敗なんかしない」と決めているので、しらふで楽しく過ごします。
「そうだ!こんな時にしかできないし、ホームページでも作ってやるか!?」
とかなんとか考えて、原稿を作ったり、ページをデザインしたり。
なんやかんやと凝って作ると、我ながら面白いサイトができてきたりします。
「あ。そうそう。このエピソードは、飲酒時代に、お酒にまつわる失敗話やね。面白いけど、もう、僕はこういう失敗はせえへんで」
「う~ん。ここにはイメージ画像として缶ビールがあったら面白いね」
・・・そう思いつくと、久々に近所の酒屋さんに足を向けます。
ビール買うなんて、一か月以上のブランクや。久しぶりやな。
とそう考えつつ、デザインの綺麗なビールを2、3本。
あくまでサイトのデザインの精度を上げるため、と、買って帰って写真を撮影して、画像加工してページにアップロード。
「おお。なかなかええ感じやん。やるな。おれ」
とかなんとか思いつつ、
「この缶ビール、折角買うてきてんし、最後の最後として、ちょっとだけ飲んでおこうかな。なあに、これで最後。ここ一カ月はまったく飲まずに過ごせてんから、これを最後にもうこれからは、仕事の付き合いとか、そういう必要な時以外は飲まずに過ごすしな」
とかなんとか考えて、ぷしゅっ!
それが最後のビールのはずが、1本が2本になり、2本が3本に。
3日に1回が、2日に1回になり、あっというまに毎日飲酒。朝から飲酒。昼も飲酒。夜も飲酒。
ようやく、入院中に応募した新しい会社の出勤日が決定した頃には、またまた連続飲酒の日々に戻ってしまいました。
新しい会社にも、朝から飲んで出社。
最初は少し大人しくしていたものの、入社三日目に上司が午前中留守にする予定を聞いた僕は、さっそく、オフィスの近所の公園のベンチに陣取って、買い込んだチューハイを何本も何本も空ける、そんな日常に戻っていました。