WCにはアロンソ。シューミーは伝説になった。
10月22日に行われた最終戦ブラジルグランプリ。
総合ドライバーズポイント134ポイントでフェルナンド・アロンゾがワールドチャンピオンになり2連覇を果した。
ミハエル・シューマッハはラスト2戦で不運にもマシントラブルに見舞われ121ポイントの2位に終わった。
しかし、最終戦のブラジルグランプリではシューミが皇帝の存在を見せ付けた歴史的な一戦であった事は間違いなかった。
前GPの鈴鹿では不運にもトップを快走していたミハエルにマシントラブルでリタイヤ。
ブラジル戦はほぼミハエルがワールドチャンピオンになれる可能性がない一戦だった。
しかしここでも、ミハエルの乗る赤い羽根馬はトラブル続きだった。
予選でファステストタイムを出していたのにマシントラブルにより予選敗退で10位スタート。
何かが、そう、何かおかしな空気が漂う2レースだった。
全てが天を仰ぎたくなる展開へと動いた。
ブラジル戦決勝。
ミハエルは後方ではあったがスタートで一気に8位に順位を上げる。さすがの走りで次々とオーバーテイク。順位を上げていく。10週を過ぎたあたりで6位のフィジケラに襲い掛かる。絶妙なコーナーリングを見せフィジケラをかわしたその時だった。急にミハエルは失速。抜き去ったマシンに次々と抜かれていく。原因はタイヤのバースト。フィジケラを抜く際に接触してしまったのだった。
ホームストレート直後の第一コーナーでのバーストの為、直ぐにはピットには戻れず、ミハエルは最下位の20位にまで落ちてしまう。ピットを出たときには、トップ快走中のマッサが直ぐ後ろにいて周回遅れになるかという状況だった。
全てが、ミハエルを邪魔するかのように動き、皆がもうだめかとため息をついた。
しかしミハエルだけは違った。
諦めないミハエルの走りはここからが素晴らしかった。
最下位に後退後、ミハエルは人間業とは思えないドライビングテクニックで順位という階段を駆け上がった。いや、最後に皇帝の走りをドライバー達に見せ付けていったのだ。
他のドライバーが下手なわけではない。皆素晴らしいテクニックを持ったドライバー達だ。好調なタイムも出し、このレースでは皆が速かった。けれどミハエルだけ、そうミハエルだけは、驚異的な、別次元の走りだった。
ファステストラップを連発し、怒涛の勢いで前方のマシンを次々と抜いていく。
今までに見たことがない程にアグレッシブに、まるでルーキーのドライバーの様ながむしゃらな攻めの走りを見せた。もうワールドチャンピオンにはなれないのはほぼ確定していたがミハエルは全く手を抜かなかった。まるでCGを見ているかのような完璧なコーナーリング。プロが分かってはいても簡単に出来ないはずのオーバーテイクの数々。このレースで見せたのはミハエルのドライバーとしての集大成だった。トップを快走しているはずのマッサより1秒近く早いタイム。他のドライバーより10km/hは速いスピードラップ。
今までのミハエルの走りではない。逆境から這い上がるミハエルの走りは想像以上だった。
そう、見たかったのはこの走り。シューミーにいつも期待していたのはこの走り。優勝することで夢を見させてもらっていたんじゃない。この走りに夢を見ていた。
これが皇帝。これがコンピューターといわれた正確な走り。これがミハエル。
今までの培った経験とルーキーの様なアグレッシブさが加わったミハエルは最強だった。
クピサも、フィジケラも、バリチェロも次々と抜いていく。抑える為にブレーキングを遅らせたフィジケラはコースアウト。インを閉めてもさらにインを突いてミハエルは抜いていく。もう誰もミハエルを止められない。
印象的だったのは次期フェラーリドライバーのミハエルの後継者ライコネンとの対決。4位のライコネンに追いついたミハエルは一気にその差を縮めた。ライコネンは本当に素晴らしいテクニックがある。他のドライバーよりも長くミハエルを抑えることが出来ていた。ホームストレートでも3週は抑えることができていた。しかしそこはミハエルだ。ホームストレート第1コーナーでオーバーテイク。インを閉めるライコネンのさらにインを突いた。ライコネンはミスをしたわけではない。手も抜いてはいなかった。ただ、ミハエルがそれを超えたテクニックを持っていた。
あっという間に最下位から4位に浮上したミハエルを唯一止めたのは時間だった。
ミハエル・シューマッハは優勝することは出来なかった。WCタイトルはフェルナンド・アロンソの手に。ブラジルGPの優勝はフェリペ・マッサの手に。ミハエルは勝利とタイトルは手に入れる事はできなかった。
けれど名誉だけはその手に取り戻した。
誰も抑えられなかったシューミーのオーバーテイクショー。驚愕のファステストラップ。
偉大な皇帝の存在の示すには十分な、鮮明に記憶に残る素晴らしい最後のレースだった。
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙による10点満点の採点では、M.シューマッハは異例の『11』となっていた。
タイトル争いの結末は、
アロンソがワールドチャンピオンに。
M・シューマッハは伝説になった。