『love letter』158。導き | 『love letter』執筆中 φ(..)

『love letter』執筆中 φ(..)

今、2作目となる小説『love letter』を順次公開中です。

1作目は、アプリゲーム艶が~るの二次小説『艶夢噺』を書きました。全110話で完結しております(*^_^*)


今日から12月。
体調もだいぶ良くなったし、良い天気だったので、午後から私はお散歩をしに出かけた。キリッとした空気と明るく澄んだ青空が心地良い。

だけど、そんな空とは対照的に気持ちはぼんやりと沈んだままだった。多分、コウさんが女性アーティストさんと音楽について語り合っていた姿が頭から離れないせいだろうな。

私と一緒の時より楽しそうに見えたからってどうしてこんな気持ちになるの?コウさんの気遣いがあったからこそ2回も会えただけなのに、それで自分が一番親しくなったとでも思ってたんだろうか、、




昨日、コウさんから届いていたメッセージを寝ぼけ眼で読んだ私は、慌ててラインを返信した。
時計を見たらまだ朝の5時だったので、時間も確かめずにラインしたことを後悔していたら、画面を閉じる間もなく既読がついたかと思うと、1分も経たないうちにコウさんからお返事が届いた。
私のラインで起こしてしまったはずなのに、怒るどころか、急な打ち合わせですぐ返信ができなかったことのお詫びと、番組を観ていた私へのお礼が丁寧な文章で書かれていた。


コウさんが忙しい人だってことは分かってるのに、どうして私は昨日コウさんを怒らせたかも知れないなんて思ったんだろう。これまでコウさんが突然不機嫌になったことなんか一度もないし、何でもない私にだってこんなに誠実に対応してくれる人なのに。

そうだよ、いつだってコウさんは優しい。私にだけじゃなくみんなに。だからコウさんのことを好きな人はたくさんいるし、仲良しな人だってきっとたくさんたくさんいるはず。
有名人であっても決して偉ぶらず謙虚だし、相手が誰であろうと丁寧な言葉で話す。単に持って生まれた性格だとしても、それを普通に出来る人はなかなかいないんじゃないかと思う。そんな人だからつい身近に感じちゃうのかな。本来、憧れって多分自分が思うよりもっと遠くて手の届かないものだろうし。

だから、私がコウさんに対してどうこう思うのはお門違いなんだ。そもそも住んでる世界が違うんだから、いじけることなんて何もないんだよね。

そう思ってパッと顔を上げると、目の前に小さな楽器屋さんがあった。ショーウィンドウには、ピカピカのアコースティックギターが飾ってある。


今の家に長いこと住んでるのに、こんな近くに楽器屋さんがあったなんて知らなかった。そういえば、こっちの方面に来たことは一度も無かったかも。見たところ随分と年季の入ったお店だけどまだやってるのかな?
飾ってあるギターをガラス越しにジーッと見つめていたら、突然扉が開いておじいさんがひょっこりと顔を出した。


「なんねお嬢さん、ギターが好きとね?」

「えっ、あ…、すみません。勝手にじっと見ちゃって、、」

「なんも遠慮せんでよかよ。好きなら中に入ってよーとよく見てみらんね」

「いいんですか?」

「もちろん。いらっしゃいませ」


店主らしきおじいさんに促されてドキドキしながら私はお店の中に入る。だけど、思ってたより楽器の数が少ない。町の楽器屋さんってこんな感じが普通なのかな。


「なーんも無かでしょ。元々そがんそんなにたくさんは置いとらんかったとばってん、近いうちにここば閉めるけん片付けばしよったとよ」

「えっ、そうなんですか?それで…」


おじいさんは私に見せようと、飾ってあったギターを棚から持って来てくれた。


「ここにあった楽器は、知り合いに譲ったり小学校に寄贈したりあらかた行き先が決まったとばってん、このギターだけはなんとなく手放せんでねぇ」

「とっても大切にされてるんですね。すごくピカピカですもん」

「大切ていうか、私が初めて買ったギターだけん、なんか妙な思い入れがあるとよ」

「そうですか、………」


おじいさんが初めて出逢ったギターならそれは当然大事なものだよね。


「ばってん、一緒におった仲間たちがほとんど嫁入りしたけんコイツも寂しかろうなぁ。昔はここでギター教室ばしよったけん、他にもいっぱいあったとよ」

「へぇ、教室楽しそうですね。いいなぁ…。
お店はいつまでされるんですか?」

「今年いっぱいで閉めようと思っとるけん、ちょうどあとひと月になったかね。それまでにコイツも どぎゃんかせなんとだけど…」

おじいさんは、そう呟くと私をサッと見た。


「そうだ、お嬢さんが良かならこのギターばもらってくれんね?老いぼれが持っとるより若っか人の方がコイツも喜ぶと思うけん」

「えぇっ!?い、頂けませんよ!そんな大事なもの…、、それに私、弾けませんし…」

「なぁんね、弾けんとね?じーっと見よったけん弾くとだろうて思いよった」

「はは…、すみません、、弾けたらいいなぁとは思ってるんですけど…」

「そうね。なら、教えようか?店ば閉めるまでの間だけん短かかけど」

「えっ!教えて下さるんですか?あ…、でもお忙しい時に悪いです…」

「気にせんでよかよ。片付けて言うたっちゃもうほとんどすることは無かし」

「ホントですか?嬉しいです!あの…お月謝はおいくらお支払いすれば…」

「ははっ、月謝なんか要らんよ。教室も辞めてもうだいぶ経つけん、私にとっては遊びみたいなもんたい」

「……ありがとうございます、、」


ギターが習えるなんてすごく嬉しい…
こんなことってあるんだなぁ。



「簡単な曲ならひと月でも弾けるようになると思うけど、なんか好きな歌とかあるね?」

「好きな歌……」



好きな歌かぁ。
ターキッシュの曲なら好きなのいっぱいあるけど。というより、全部好きだから迷……


「!そうだ、私…。どうしても弾きたい曲があるんです」








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更新、大変お待たせしてしまいました。
その分、ちょっと長め?

楽器屋のおじいさんは、
『地元のおじいちゃん感』を出したくて
熊本弁強めに書いたつもりですが、
言い回しがおかしかったらすみません😣💦

店主のイメージは…

次回お伝えします。




♡画像お借りしました。