前回からのつづき・・・。
荒れ狂う荒波にも負けず、見事手の平サイズの「ぬまちちぶ」、通称”だぼはぜ”を釣り上げる事に成功した我々一向。
さらなる大物を求め、果敢に竿を投げ続けること2時間。次から次と”だぼはぜ”ばかりが釣り上がり、
釣っては投げ釣っては投げを繰り返す作業に、私の体力も限界に近付いていた。
いい加減暑いしお腹も空いたので、帰ろうよと達人に交渉を始めていたその時。
「どん!!」と、とんでもない振動が私の竿から腕にかけて伝わってきた。
次の瞬間、もの凄い勢いで竿が撓った。
「きたぁ!!」
達人が振り返る。こちらの異常事態に気付いたのであろう。険しい岩場を駆け足で向かってくる。
おそらくは”近海の主”であろう、尋常ではない力でグイグイと竿が引っ張られていく。少しでも気を抜けば体ごと海にもっていかれる。
そうなれば”やつの”餌食になるのは間違いない。
体力は限界に達していた。あとは気力との勝負だった。私は持てる力を最大限に振り絞り竿を上げた。
「網いぃ!!」
「ねえよ!!」
すかさず達人が突っ込みをいれる。
私と”やつ”の全存在を懸けた壮絶な戦いは数分にも及んだ。
絶対に負ける事の許されない戦いだった。ここで不覚をとるようであれば私は料理人の名を返上せざるを得ない。料理人としてのPRIDEだけが私を突き動かした。
「ざぱぁん!!」
激しく悶えながら”やつ”が海面から姿を現す。
もう力も入らない。立っているのもやっとだった。
私は後方に尻もちをついた。
達人がすかさず”やつ”を押さえつける。
「勝った・・・」
立ち上がる事さえ出来ずにいる私の元へ達人が身悶える”やつ”を持ってやってきた。
「ほれ」
「・・・ん?」
つづく・・・。