ひさびさにふるさとへ帰省し、色々と世話を焼いてくれる親に甘え、都会にはない緩やかな時間に寝転がって。
「ああ、今年は何をどう頑張ろうかな。ま、明日考えよっと。」
なんて正月を過ごしていたと思ったら、あっという間に2月も終わりに近づいてしまいました。仕事や学業が始まっても、ここまで惰性で過ごしてしまった…なんて方は、私だけではないと信じております。
こんにちは。バーイリュージョンの木村です。
言い訳の許可を願います。どうにも私にとって、1月1日というものは1年の区切り、新たなスタート、というものには感じにくいのです。
家のこたつはいつまでも鎮座しているし、着ていく服は変わり映えのないコート。通りすぎて行く風も、12月と何ら変わらない、肌寒いものです。こんなメリハリのない環境で、“さぁ新しい1年が始まったぞ!”なんて考えられるでしょうか。
私にとっての新年は、3月、4月ぐらいに思えます。花が咲き始め、動物や虫が巣から這い出て、「今日は薄手でいいかも」とクローク前で呟く頃。つまりは春ですね。春夏秋冬。私らの国にはこんな素敵な4区切りがあるのですから、これに則らないのはもったいない…。
ピカピカのランドセルや折り目のついた制服、スーツを着て、期待と不安の入り混じった面持ちで歩く若人たちを見て、「ああ、新しい1年だな」とようやく思えるわけです。
酒場で働く身としましては、「今年からお酒が飲めるようになった新成人、来てくれたら嬉しいな。」なんてうっすら期待する訳ですね。
当たり前の話ですが、私含めバーに居る人間は、みんな成人です。入学や就職に相対する機会は、ほぼないでしょう。そんな時間を長く過ごしていると、1年、1年というものが、何ら変わりのない、面白みのないルーティーンに感じてくるものではないでしょうか。
”今年も同じことの繰り返しか。とりあえずはGWが待ち遠しい。今年の盆は帰省しようか? 今回の年末は一人じゃないといいな…“なんてなんて。
私も社会に身を放り出してから、しばらくはそんな循環に身を預けざるを得なかったのですが。バーという場で働き始めてからは、少し違った感覚も覚えてまいりました。
毎日同じ電車に乗って、同じベストを着て、同じ場に立ち、お酒を提供する。こう書いてみると、それこそ同じことの繰り返し。飽き飽きしてしまいそうですが、なにが違うのか。それは、お客様の顔ぶれではないでしょうか。
有難いことに、何度もご来店いただいている方々ももちろんいらっしゃいますが、その方々が全く同じ時間に、同じ席順でいらっしゃることは、はたしてあるでしょうか。全く同じお話をすることが、あるのでしょうか。
私が勤め始めて半年ほどですが、その間に初めてご来店いただいた方も、たくさんいらっしゃいます。その方々と、あの方々が出会えば、どんなお話をするのでしょうか。
時間とともに、その人その人の環境も、考え方も、変わっていきます。そんな方々が出会う場で、“同じ日”などありませんよね。
以前、新しい景色を求めて放浪していた私にとって、この気付きはなかなかに刺激的です。だって、同じ箱に毎日身を置いているのに、そこから見る景色は毎日毎日違うのですから。
時間と人間模様という複雑な要素が、同じ空間に千差万別の景色を映し出してくれるのです。
バーって、なんて面白い場なのでしょうか。
1年。365日。春夏秋冬。同じことの繰り返しに見える人生でも、目を凝らしてみれば、そこには確かにその日しかないものがあるのですね。
来年も2月28日があるんじゃない。今生きている2月28日は、歴史で今しかないのです。
そんなわけで。
今日、出逢えるお客様も、交わす会話も、飲むお酒も。一生に一度のことなのだと理解して。よく味わって。一期一会に想いを寄せながら生きることを、本年の抱負としてみます。
今日の皆さまのご来店を、お待ちしております。
